海鳴り (上) (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-18)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167192181

作品紹介・あらすじ

はじめて白髪を見つけたのは、いくつのときだったろう。骨身をけずり、果てにむかえた四十の坂。残された日々は、ただ老い朽ちてゆくばかりなのか。…家は闇のように冷えている。心通じぬ妻と、放蕩息子の跡取りと。紙商・小野屋新兵衛は、やがて、薄幸の人妻丸子屋のおかみおこうに、果せぬ想いをよせてゆく。世話物の名品。

感想・レビュー・書評

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  • 藤沢周平さんの本は初めて読んでいます。映画は見た事はあるのですが。老いを身にしみている主人公。妻との関係、息子の事、苦しい時に初めて心から愛しいと思える女と出会う。主人公の苦悩が痛い。サスペンスの要素もあり、ドキドキしながら読んでます。下巻が楽しみです

  •  藤沢周平 著「海鳴り(上)」、1987.10発行。紙商人小野屋新兵衛46歳と老舗の紙問屋丸子屋の美人おかみ・おこうとの逢瀬、それぞれ家庭のあるストイックな中年の男女の秘めた恋心を綴った上巻。しのび寄る老いを感じつつ、おこうへの思いが生きていく糧になるのか・・・、下巻にまいります。
     紙問屋、小野屋新兵衛、心通じぬ妻おたきと放蕩息子幸助19歳、その妹おいと14歳。しのび寄る老いを感じ始める46歳。ある晩、酒に悪酔いして路上で悪漢に絡まれてる老舗紙問屋、丸子屋のおかみおこうを近くの連れ込み宿で介抱。これを嗅ぎつけた塙屋彦助にどう対応するかの会合が、やがて二人の逢瀬にと。 藤沢周平「海鳴り(上)」、1987.10発行、再読。

  • もう「周」がつく作家さんはみんないい作品かくのではないか。

  • 2018.11.2(金)¥180(-15%引き)+税。
    2018.11.27(火)。

  • 裸一貫から、中規模の紙問屋を立ち上げた江戸時代の中小企業の社長が主人公。仕事に明け暮れ、そのため家の中はがたがた。放蕩息子に、気難しい妻、家の中に居場所はなく、乾いた日々を送る主人公に、奇跡的な出会いが。このようなシチュエーションの中、主人公はこの出会いにどこまでも溺れてゆく。人生の前半が終わってしまった私以上の世代の、胸の中にあるであろう葛藤を見事に描いた作品である。

  • ・10/10 読了.不倫や浮気で家庭が崩壊していくのを読むのは幾分辛い.ただでさえ家にいるのは辛いのに、これに商売が絡むとかなりしんどいだろうな.

  • 11月-2。3.5点。
    人情物。紙問屋の主人公。あるきっかけで同業の奥さん
    が気になりだし。日々の生活の中、いろんな悩み事が
    盛りだくさんに。
    江戸の市中の暮らしがよくわかる。

  • ★評価は読了後に。
    若くはないことを認識した男の、悲しくも苦々しい物語かな?何でこの作家に皆癒しを感じるのか正直分からんな、今のところ。
    結構リアルな暗さを本当に上手い文章で描き出していて、逆に悲しくなるような気もしなくはないんだが。ということでちょっと粘着的だなぁ、当方にとっては。もう少しストーリーを流してほしい感あり。

  • 2014年の42冊目です。
    老いを感じ始めた主人公 新兵衛が、ちょっとしたことから薄幸の人妻おこうに想いを寄せていく。主人公の日常は、ままならぬことに満たされている。それの一つ一つに向き合って生きていく。仕事を覚えようとしない放蕩息子、冷え切った夫婦関係、隙を見せず侮られないように振る舞う”商”。主人公は47歳だが、人生の老いに向かって進む入口が大きく開いていることを感じつつ日々を、現実を”諦観”の何も感じながら生きていた。そこに巡り合った人妻”おこう”と想いを通わせる仲になっていく。人生において、初めて出会い手にした”安息を与え”と”理解をしてくれる”同伴者だと確信するようになる。その二人の”愛”を物語の軸にして、様々な人間の心模様が、精緻な描写でありながら、現代人である我々の心にそっと寄り添うような言葉で描かれています。

    この本は、会社のセミナーでよく一緒になる顔見知りの参加者の方から「読んでみて」とお借りしたもので。その時、もっと早く読んでおけばよかったと言われていました。

    その言葉の意味を今読了後に考えているところです。
    主人公のように、老いの入り口にさしかかるところで、何とか踏みとどまり、自分にとっての”宝”と巡り合い、新しい人生を歩むには、遅すぎたということだろうか?そうであれば私も同様だろう。では、”老いも捨てたもんじゃない”ともっと早く気付けば、生きてきた意味がもっと深まったのにということか?主人公の新兵衛は、仕事人として親として父としての役割を思慮深く、あるいは功利主義的にこなしていきます。そういった日常を失う瞬前に、実はその問題のたくさんある日常が、それなりに価値があり愛おしいものだと気がつきます。それは、老いることでしか気付け得ないことなのかもしれません。

  • 世話物。といっても内容はなんてことない。妻子ある紙問屋の主人が、同じ問屋仲間の女将と道ならぬ恋に陥る…という江戸時代の不倫物語。
    ただ、書き方が上手いので読ませる力は半端ではない。逆に言えばありふれた内容なだけに時代物に馴染みがない人でも共感や想像はしやすいかも。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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