蝉しぐれ (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (1991年7月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784167192259

作品紹介・あらすじ

清流と木立にかこまれた城下組屋敷。淡い恋、友情、そして忍苦。苛烈な運命に翻弄されながら成長してゆく少年藩士の姿をゆたかな光の中に描いて、愛惜をさそう傑作長篇。(秋山駿)

みんなの感想まとめ

少年藩士の成長を描いた作品は、淡い恋や友情、そして厳しい運命の中での奮闘を通じて、主人公の成長を鮮やかに描写しています。物語は、父の切腹や貧しい生活を背景に、剣の腕前を上げていく主人公の姿を追い、終盤...

感想・レビュー・書評

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  • 少年藩士の成長を描いた時代小説。父が切腹させられ、母と二人貧しい生活を送りながら、剣の腕前を上げていく。終盤は藩の勢力争いに巻き込まれ、ハラハラドキドキ。そして勧善懲悪プラス恋愛モノ。面白かった。

  • 先日鶴岡を訪れ、地元の人から庄内藩の話を聞いた。武力的にも経済的にもかなり強い藩だったようで、歴史の授業では知り得なかった内容に興味を持ったら、鶴岡生まれの藤沢周平さんの著書をおすすめしてもらった。

    まっすぐな正義感を持ったヒーローが出てくる少年漫画のような時代小説。戦闘シーンが格好良かったり、政治に巻き込まれたり、地元の幼馴染との恋愛もあったりと、エンタメとして隙が無かった。

  • 人生初の時代もの、読友さんに何を読むべきか意見を伺い、たどり着いた蝉しぐれ。最高の本に出会えたことに感謝したい。文四郎とふくとの間の純朴な恋愛と剣の道を中心に描いているが、友情、派閥抗争、復讐、立身出世など、文四郎の波乱に満ちた成長物語だった。江戸時代の土の匂い、蝉の声、夏の暑さも風情に感じ、タイムトリップした感覚を味わえた。しかし、いつの時代にも悪い奴がいるもんだ。悪い奴が藩のトップにのさばっているから低身分の者が馬鹿をみる。その中で、文四郎がふくを連れて移動する場面は彼の正義と勇気に賛辞を贈った。

  • これはすごく素敵な作品だった!

    図書館で借りて読んだのだけど、これは自分の蔵書に加えたい!絶対に繰り返し読むに違いない、素晴らしく気持ちの良い物語でした!

  • 牧分四郎という少年の青春時代を描いた物語。藩内の派閥争いと父親の切腹、淡い恋、剣術、友人との交わりなど、様々な出来事の中で成長していく姿は、どことなく郷愁をさそる。切ない物語。

  • 傑作小説だと思う。時代小説を苦手としている人でも、するすると読める。そして、なんといっても清廉で勇敢な主人公が輝いていて、いきいきと生きている。時代背景がら権力争いに翻弄されるのだが、その理不尽ぶりが半端じゃない。この時代に生まれないでよかったと思うこと一回や二回に非ず。よく、武士の時代に生まれたかった、などという人がいるがこのような小説を読むと冗談じゃないと思う。しかし、その制限だらけの時代は人間の生きざまをよりドラマチックにするから不思議。主人公とおふくの違える人生なんていうのはとても切なかった。ほぼ初めて藤沢周平を読んだが、とても嵌った気がする。

  • 主人公の少年時代から大人になるまでを、
    恋と友情と剣と、没落・仕事・派閥争い・懲悪・復讐、
    それらをバランス良く配合して
    適切に散りばめて描いた良作だと思います。

    そしてそれらすべてが、行き過ぎた暑苦しすぎるものではなく、唯一激情と言える場面でさえも抑えた筆致で描かれ、日本的に淡々としていながらもほどよく胸に迫る絶妙なさじ加減。
    主人公の性格ともあいまって、清々しい読み心地を与えてくれました。

    全体的にはゆったり進行するのですが、クライマックスは息もつかせぬ面白さ。ラストは良かったし納得もするけれど、何か一抹のモヤモヤも残る。このモヤモヤ感は何だろうと考えてみたけれど、今のところその正体は分かりません。

  • 小禄の藩士の家に生まれた主人公の少年の成長を、城下町の強い日差しや暮色、四季折々の田圃や山川など、詩情豊かな情景の中に描く。友との友情、淡い恋、剣敵との闘い、お家騒動、と淡々とだがテンポよく印象に残る事件が語られていく。そしてラスト、その思い出深い場面の数々が強く襲ってくることを抑えられなかった。つましく清冽に生きた本作の登場人物たちの世界へ憧れるのは、自分の中の日本人としてのDNAのようなもの呼び覚まされるからなんだろう。解説読んで、最後にブックカバーを外して表紙のイラストを見たら、またまたキュンとしてしまったのだった。

  • 若い藩士の友情、武勇、そして恋。悲運に翻弄されながらも、己を見失わず一家の主人として、正義に従い運命を切り拓いていく様に、人間の本髄を感じた。最初から最後まで話の主題がブレることなく、伏線を少しずつ、最後は一気に回収してくれるのが良かった。
    自然描写が、日本の四季をありありと感じさせてくれ、脳裏に視覚だけでなく嗅覚までも浮かび上がらせてくれた。

  • 藤沢周平の時代小説。その昔NHKにてドラマ化。
     一人の少年藩士が非業の死を遂げた父の仇を打つため、降り掛かる試練や運命を克服していく。初恋の女性や仲間との友情を通して、主人公の成長を力強く、美しく描いた物語。

     いや、「王道って面白い!」ということを改めて教えてくれた小説。時代小説はほぼ全く読まないんだけど、文句無しに素晴らしいと思えた。特に最終章を読んじゃったらもう…だめよ。
     雑な言い方をすればジャンプ的というか、少年、成長、友情、初恋、運命、試練、打ち勝つ勇気!みたいなそれこそ王道も王道な物語。なんだけども、その要素一つ一つが圧倒的な筆力でとても丁寧に描かれている為に陳腐な感じを与えない。また元が新聞小説というのもあって、展開というか物語の運び方がとても上手い。要するに、小説としてどこまでも正統派で完成度の高い作りになっている。
     清く正しく生きる主人公や、タイプの違う二人の友人 もの静かで清廉な初恋の女性ふく、どれも人物としてとても好感が持てる。それぞれのキャラも非常に物語としてはよくあるタイプの人物像。しかし、繰り返し言うけれどもそれぞれの人物造形が本当に丁寧に描かれて、「あ~あ~こういうタイプのキャラね」とか「こういうやりとりね。あるある」みたいな印象は皆無。人物の息づかいまで感じられそうな描写の丁寧さ、緻密さ。要するに、手抜きが無いのですね。
     個人的には主人公とふくの恋愛模様をベタベタ描かずに、必要最低限に押さえたというか最低限にすら届いてないんじゃないかというくらいに絞って描いたことがこの物語全体を見た上でとても良かったんじゃないかと思う。
     てな感じで最終章を読むまでは、「めっちゃ完成度の高い時代小説だな~」などと感心しつつもそういう批評的な第三者的な視点が抜けきれなかったんだけど、最終章。
     この章の持つ哀愁というか悲哀というか哀切たるや尋常でないものがあり、情景描写の美しさも相まって息が止まりそうでした。
     この二人の言葉数の少ない、ほんのちょっとしたやりとり。
     胸を穿つでしょう。
     100点。

  • 日本の原風景。澄んだ小川で、顔を洗う。
    出だしの秀逸さは、目が洗われるような感じだ。
    自然とサムライが、一体になっていた。
    文四郎、逸平、与之助の三人が、それぞれ自分の道を模索し、
    大人になって行く。三人の友人としての距離感が、いい。

    文四郎の父親への尊敬。母親に対する接し方。
    そして、おふくへの芽生え。あぁ。これが青春なのである。
    嵐のようにやってくる理不尽さ。その中で、剣に打ち込む文四郎。
    確実に、腕をあげて行く過程。興津とのホンのわずかな差。
    犬飼兵馬とのしのぎ会い。
    藩の権力闘争に巻き込まれざるを得ない状況がありながらも、
    自分のポジションをじっと見つめ、守るべきものは何かを考え、行動する。
    理不尽に対する、怒り。どこにも、向けられない怒り。
    制約の中で、精一杯、清々しく生きる文四郎。

    蝉しぐれのなかで、お福との最後の出会い。
    その瞬間が、やってくるとは。自分の宿命を堂々と受け止める。
    いい作品でした。

  • 読み終えて、話すと驚きの声。 初めてだなんて、、、 そういう声が全くそのとおりだと思えた。 映画もドラマも見て読んだつもりになっていた。
    見ると聞くと読んでみるのとはこうも違う。染五郎が凛々しく木村佳乃は美しかった。

    しかし原作の味は文字の中にある。
    「蝉しぐれ」が降る海坂藩で 成長する若者たちの姿に胸が躍る。

    文章はまるでやわらかい淡い光を放つ絹糸のように風景を織りなしている。雨のあと頂に向かって上る山霧、霞のような朝霧。
    家の屋根を染めながら落ちていく夕日。青々となびく田をわたる風。
    織りあがる布は、詩情豊かな風景を浮かび上がらせ、移り変わる光の色が、忘れていた風景の中を歩いていく心地がする。

    勇気と忍辱のこころ、友情と信頼の豊かな土壌の上で、過酷な現実を乗り越える力を感じる。
    養子に入った貧しい家を守りながら、幼馴染の友人、隣の娘お福との交流が暖かい。
    藩内の跡目相続に名を借りた権力争い。お福の運命を見守りお思い続ける気持ち。
    藩内の抗争に巻き込まれたお福と子供を助けて、闇路を舟で下る緊張感。
    稽古場での対立。ご前試合。伝授された秘剣村雨の威力。


    上質のエンターテインメント作品に出会えて感激した。

  • この季節に読みたいと思い、読了後、やはり今読めて良かったと感じている。

    長篇を読んだことがあまりないのだが、本作は読み終えてしまうのが惜しいほど、その物語に惹かれた。
    江戸の世、身分社会に抗えない時代…目まぐるしく変わる状況に目が離せない。

    まだまだ時代小説を堪能するには知識が不足しているが、江戸時代の世界に入り込むことができ、特に斬り合う場面は緊張感なしでは読めなかった。


    この感情を言葉にできないのが悔しいが、本作を読んだことは今夏の思い出の一つであり、間違いなく私の心に残る一冊になった。

  • 少年時代の友情、淡い初恋、勧善懲悪の爽快感。
    ド定番の時代もの。
    物語はさくさく進み、続きがどうなるのかと気になって一気に読みました。

    田圃道に滲む夕陽や、松林でけたたましく鳴く蝉の声。
    実際に体験したことはないはずなのに、なぜか懐かしい郷愁におそわれる。

    「高い空に、銀盤を嵌めたような月が光り、人影もない屋敷町の幅ひろい道を照らしていた」

    文四郎に身の危険が迫っている夜の描写。銀盤のように冷たく感じる月の夜、という鋭く、どこか不穏な空気感が醸し出されている。

  • 藤沢作品ではなじみの深い海坂藩で、一人の少年藩士が成長していく姿を豊かな文章力で描き出した作品。牧文四郎とその友輩2人の友情話としても読めるし、隣家の幼馴染との淡い恋を描いた恋愛物としても読める。人によって様々な読み方ができる面白い時代小説である。詳細→
    http://takeshi3017.chu.jp/file8/naiyou10002.html

  • 初めての藤沢作品。
    なぜ今まで読まなかったのか。
    とても読みやすく、分厚さもなんのその。
    悲しんで、怒って、喜んで、切ない。久しぶりに読んで良かった一冊だった。

  • 高校の現代文の教科書に掲載されていた。それは冒頭の印象深い「朝の蛇」の章だったと思うが、それでその後おそらく高校生の間に一度読んだ。
    それ以来なので少なくとも10年は経ってからの再読だと思う。
    しかし、面白かった。この小説は、解説にもあったが、時代小説という括りを設けてしまうのがもったいないほどの面白さである。本書の優れていることは別に私一人が再発見したことでも何でもなく、周知の事実と思われるが、あえて、その内容を挙げると、次のようになる。
    ・恋愛の要素もあるし、友情の物語ともとれるし、剣術での闘いの物語ともとれる。もちろん、それらを総合して、江戸の時代も今も変わらない、ままならない人生の中でひたむきに生きるしかない人間の様を描いているということなのだけど、それぞれの要素が適度に盛り込まれている。人生にある様々の要素を、うまくこの一冊の中に含めている感じがある。時代小説で、短編がうまいなあと思う作家は、もちろん山本周五郎とか乙川優三郎とか他にもいると思うが、長編でここまで物語を読ませる作品は他にないと思う。
    ・恋愛と友情の物語、までは何となく他にもあるように感じるが、藤沢作品にはいつも(私は他に3、4冊程度しか読んでいないにわかファンだが)、「秘剣」が登場し、つまり、剣士同士の死闘の描写が面白いし、それなりに比重を占めているのである。だから、陳腐な表現かもしれないが、バトルもののようにも読むことができる。
    ・確かに時代小説は、以前別の感想でも書いたが、お約束や一定のパターンのようなものを感じることもあるし、現代に生きる我々とはそもそも社会の仕組み自体が違うのだから、登場人物たちの苦悩もある程度様式化されたようにお定まりの感動しか呼ばないのではないか、という向きもあるかもしれない。しかし本書で主人公たちに寄り添い、共に悲しんだり心が揺れ動いたりした後、不思議と現実世界での生きづらさにも立ち向かえるような心持ちに自然となれているように思う。
    それに現代社会で苦悩を感じる場面は、過去の時代と比べて、それほど複雑なのだろうか。私はむしろ、現実に感じているような人生の難しさは、まさに今体験しているものであって、わざわざ小説でそれをトレースするのも億劫に思う。
    ・閑話休題、他に本書について書き忘れてはならないのは、自然や町の風景の描写の力である。
     武家や町人が住む町の様子を描くときも、その町の周囲の鄙びた村々の描写の際にも、面白いなと思ったのは、「時」を効果的に盛り込んでいるところ。早朝なのか、今まさに日が暮れようとしているのか。さらに、季節は盛夏なのか、雪が降り出しそうな空模様なのか。舞台となっているのがおそらく山形の藩なので、私の故郷も雪国だからそうだが、四季の移り変わりがはっきりしている。四季と、1日における時間帯の区別、それに主人公文四郎の内面とを、絶妙に風景描写に取り込んでいて、しかも使い回しの印象もなく、どの場面も都度新鮮に読んだ。というより、筋書きだけを初読のとき以後覚えていたのが、再読してみると気がついた。
    ・そのように隔絶した描写力と、人物の登場のさせ方、物語の構成も隙がないし、全く飽きることがない。ぜひ、10年後、20年後にもまた読み返したい、自分にとっての名作中の名作と言える、他に替えがたい作品である。

  • 生まれた時から身分が決定しており、恋愛すら自分の意思で決められない時代。
    主人公は時代に流されながらも、自分が今できる努力を重ね成長をしていく。あらすじだけなら、想像の範囲内であるが時代背景やそれぞれが抱く感情を丁寧な描写し、読み応えのある一冊になっています。時代物が苦手な方もぜひ一度読んでみて下さい。

  • ドラマティックな展開が続き、久々に夢中になって読み進めた一冊。

    恋、謎、陰謀と事件、成功譚、秘蔵の奥義とか、様々なハマれるポイントが押さえられていて素直に面白かった!

    ブクログ内の感想を見ていると、妻の扱いに対してモヤつくという意見も散見されて、そこは私もやはり気にはなったものの、「家」を守ることを第一としている時代、それはそれ、これはこれとハッキリ分けているのも理解できなくはないかな、と思った。
    この小説の連載時期的にも、家父長制が優位の時代だったろうし。
    そこに着目しちゃうと思い切りこだわりそうだったので、敢えてのスルーを推奨します。

    ともあれ、そういったところに違和感を持つ人が多くなったのは、いい時代になったなぁと作品に関係のないところでそんな感想も持ったり。

  • すがすがしい気持ちになれる物語
    少年藩士の青春・成長の物語です。

    全体に、凛とした清らかさ、清廉さ、自然の美しさを感じ取れる物語となっています。
    その中で、主人公文四郎の成長が描かれています。
    この時代の理不尽さ、その価値観の中で友情、初恋、別離、悲運、忍苦、剣術、身分の差、権力抗争、そして大逆転!さらに哀愁といった、すばらしい展開です。

    権力抗争の末に、切腹させらた文四郎の父。
    その父の亡骸を一人引き取りに出かけ、周りから非難の目を受けながらも運ぶ文四郎。そしてその台車を一緒にひく幼馴染のふく。

    たがいになんとなくひかれあう、ふくと文四郎。そしてふくは江戸にいくことに..
    罪人の家族としての扱われ方に耐えながら生きる文四郎とそれを支える親友たちとの交流。さらには剣術に磨きをかけていく文四郎。
    ふくとの思いを持ちながら、その時代を成長していく文四郎のまさに青春、成長の物語です。

    しかし、一方で、ふくが殿の側室となり、その子供も含めて、こんどは文四郎が権力抗争に巻き込まれます。
    ここからは、勧善懲悪の展開へ!
    文四郎は、ふくと子供を守るため、命をかけて立ち向かいます。ここの展開は今まで打って変わってのスピード感と緊迫感!
    すっきりします

    そして、20年後のシーン。
    ふくとの最後の別れの場面

    「文四郎さんの御子が私の子で、私の子供が文四郎さんの御子であるような道はなかったのでしょうか」

    本当の気持ちを確かめ合ったのは最後の最後というのがまた切ない。

    これはお勧め!

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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