麦屋町昼下がり (文春文庫 ふ 1-26)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167192266

作品紹介・あらすじ

藩中一、二を競い合う剣の遣い手が、奇しき運命の縁に結ばれて対峙する。男の闘いを緊密な構成と乾いた抒情で描きだす表題名品の他三篇。この作家、円熟期えりぬきの秀作集である。

感想・レビュー・書評

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  • 砂原浩太朗さんの作品を読み終えたら、藤沢周平さんの世界をもう一度味わいたくて手に取りました。
    お二人の作品に通じる何かを感じてだと思います。

    短編4作のなかで最も印象的だったのが表題作『麦屋町昼下がり』。
    たまたま人助けのために人を斬ってしまった家禄の少ない御蔵役人 片桐敬助がその後、厄介な事件に巻き込まれていきます。

    その場で瞬時に取った選択肢が自分のそれからを大きく左右しうる場面は誰にでも心当たりがあると思います。

    後悔、迷い、孤立、不安等片桐の心の細やかな動きを藤沢さんが丁寧に掬い取り、抑えた日本語で呈されます。
    躍動や大どんでん返しとは異なる静かな展開が心に沁みます。

    他3作も藩内での権力闘争等により不運な立場を甘受している武士が中心となり、そこにわずかに男女の想いの通い合いがあり、じんわりとした読後。

    風景や人の心の繊細な動きが美しい日本語で描かれますが、決して書き過ぎず影と余韻で想像させる藤沢作品。儘ならないことが多いのが常なのは今も昔も同じだからこそ、胸に響きます。

  • 武家ものに分類される中編4作。
    「真昼の決闘」の西部劇を思わせる表題作を始め、何れも昭和62年から64年1月にかけての、著者の円熟期の味わい深い作品。
    なかでも『榎屋敷の春月』は、女性が主人公を務め、読後感も爽快で印象深い。
    折に触れて、再読したくなる作品ばかりである。

  • オール讀物1987年6月号麦屋町昼下がり、11月号三の丸広場下城どき、1988年7月号山姥橋夜五ツ、1989年1月号榎屋敷宵の春月、の4つの短編を1989年3月文藝春秋から刊行。1992年3月文春文庫化。再読。榎屋敷宵の春月のヒロイン、小太刀の名手でもある田鶴さんの思い切りが、カッコいい。三ノ丸広場下城どきの怪力茂登さんも面白い。山姥橋夜五ツの瑞江が藩命のために離縁を受入るというのも凄い。藤沢さんの描く女性達は素敵です。

  • 中篇集という事で短編集よりも読み応え抜群! 大きな展開はないが知らず知らずの内に物語に引き込まれていく。 特にラストの部分(決闘シーン等)が恐ろしいぐらいに淡々と終えるのも藤沢作品の特徴でもあり好きなところ。 兎に角文章が奇麗なので読んでて心地が良い。 長編を読んだ位の読み応えのある作品。

  • 時代小説は、数多く読んだが 個人的に硬いイメージが強かった
    藤沢作品はこれが、初めて。
    読んだ感想は、クセが無く 非常に読みやすい。
    どの登場人物も、生き生きと書かれていて 爽快感があり
    短編ながら、物語は奥深く4つの作品全て 満足感が非常に高い。

  • はじめて時代ものを読んだ。とっても楽しかった。文章にキレがあり、物語にでてくる剣士のように無駄がなかった。カッコいい!!声に出して読みたい文章。話も引き込まれるしいいですね。
    麦屋町昼下がり、三ノ丸広場下城どき、山姥橋夜五ツ、榎屋敷宵の春月、からなる短編集。題名もいいですね。麦屋町昼下がりがよかったです。ライバル剣士は変人ですが魅力的な人でした。

  • 藤沢周平が描く人々は青い炎だな、と思う。
    静かに構えているのに熱い。
    女性たちがしたたかで寡黙ながら強いのもいい。
    剣でのやり取りの描写がかっこよくて、剣術をやってみようかとそそられる気持ちになります。

    茂登さんの怪力がもっと陽の目を見るかと思った。
    清々しい女性と陰湿な女性の描写の書き分けがすごいな。

  • 良くも悪くも藤沢周平短編集。
    藤沢周平ファンの自分にはじわじわ楽しめる素晴らしい作品です。

  • たまに読むと時代劇というのはやっぱり良いよねぇ。なんで時代小説は味わい深いのに、テレビドラマになるとやたらと杓子定規になってしまうのだろうか。暴れん坊将軍とかさぁ。って思ったら10年前に終わってたわ。水戸黄門もか。いやはや。

    言うても小説の世界でも勧善懲悪には変わらないんだけどもね、なんか世の中そんな単純じゃないよなぁ、分かる分かる感がテレビより上というか。でも単純じゃないけど最後はやっぱり正義が勝つよ、ってところが良いねぇ、ってなる。
    あれ、これって昔オヤジが暴れん坊将軍見てたのと一緒じゃねーか!やばいな。

    後は概ね江戸時代は亭主関白状態なので、それも含めて昔を懐かしむというか、イイナーって思うのかな。しかしそう考えるとこれは女性団体から苦情殺到ですよ。

  • 相も変わらず味わい深い。じわりじわりと響いてくるこの感じが藤沢作品だな。短編も好きだが、このぐらいボリュームのある中編も読み応えがあって良い。ずっと読んでいたいぐらいだ。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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