三屋清左衛門残日録 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.97
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本棚登録 : 890
レビュー : 85
  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167192273

作品紹介・あらすじ

日残りて昏るるに未だ遠し-。家督をゆずり、離れに起臥する隠居の身となった三屋清左衛門は、日録を記すことを自らに課した。世間から隔てられた寂寥感、老いた身を襲う悔恨。しかし、藩の執政府は紛糾の渦中にあったのである。老いゆく日々の命のかがやきを、いぶし銀にも似た見事な筆で描く傑作長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 藤沢周平さんの初読み。周囲にもファンが多く、いつか読もうと思っていてなかなか手に取れなかった。

    以前、宮城谷昌光さんの対談か随筆の中で、藤沢周平さんの本書と「蝉しぐれ」を絶賛されていたので、「読みたいリスト」には登録しておいたが、やっと本書を読むことができた。

    江戸時代を舞台とした「時代小説」、つまり史実に基づく小説ではなく、その時代要素を取り入れたフィクションだ。史実というシナリオがもともとあるのではなく、著者はイチからストーリーを構築しないといけないということだ。

    そういう意味ではとてもよくできた小説だなと思った。同氏の小説では架空の「海坂藩」が舞台となるそうだが、本書の舞台がそうであるかどうかはわからない。
    ともかく読み始めたら即江戸の町に放り込まれる。

    主人公三屋清左衛門は、藩主に仕える用人であったが、藩主の死去を期に、隠居したいと新藩主に申し入れ、それが認められた直後の隠居生活での出来事を描いた小説である。

    隠居、悠々自適、そういう言葉が出てくる。現代で言えば勤め人が一仕事終えて、「さぁて、やっと仕事も勤め上げて、これからは自分の好きなことをやって余生を楽しむぞ~」みたいなシチュエーションである。

    清左衛門も、城下町を好きな時間にぶらぶらしながら、時には鳥を刺し、魚を釣りと、そして時々美味いものを食ってと、そんな生活を望んでいたようだ。

    ところがそういう予想に反し、藩内の様々な事件に巻き込まれていく。もともと用人という職は、人望熱く、主君の仕事を卒なくこなせる人物が適役のポジションだ。そのポジションについておれば、自然に中央には精通してくるし、人脈も広くなる。

    そんな人物は、隠居しても、逆にフリーの立場と言う中立性からいろいろと相談ごとを持ちかけられる羽目になるようである。

    大きなところでは藩内の派閥抗争にからむ事件の調査から、庶民が巻き込まれた問題の解決まで、次々と清左衛門のところに課題が持ち掛けられるのである。誠実な清左衛門は、その解決に奔走するのである。

    事件性のあるストーリーは読者を飽きさせない。短編連作の形式で展開されるので、一話一話を楽しみつつも、全体でまた楽しめる展開となっている。

    それにしても、どちらの派閥につくかで将来が左右されることを悩んだり、派閥抗争の裏側でドス黒い謀略が渦巻いているなど、江戸時代も今も全く変わらないと思わせるようなストーリー展開に、時おり現実と対比しながら読んでいる自分がいたものである(笑)。

  • 用人の身から隠居することになった三屋清左衛門の連作集。晩年の作品の特徴である明るさが、この作品でもにじみ出ていて、主人公清左衛門のコミカルとも言える日常が活き活きと描かれています。

    当時の隠居は52歳なのかぁ。最初は寂寥感が・・・なんていっているけれど藩の陰謀など次々に事件に巻き込まれ結構忙しい日々。いい年なのに、人を見抜けず厄介な状況になったりと、おちゃめな感すらある清左衛門。

    作者も57,8歳くらいの時の作品と思いますが、実体験らしきものも反映されているのではないでしょうか。なかなかその年でしか描けない、しみじみとした作品です。

    はぁ、早く隠居したい。

  • 久しぶりに藤沢周平読みました。
    良いですねぇ。
    日残りて昏るるに未だ遠し。
    隠居した清左衛門は、老いと向き合う日々。
    しかしいつの間にか、藩の紛糾の渦中に巻き込まれていきます。
    連作短編集で、日常が描かれていきますが、背後には生きることへの深い洞察が見られます。

    ーそうか、平八。
    いよいよ歩く手修練をはじめたか、と清左衛門は思った。
    衰えて死がおとずれるそのときは、おのれをそれまで生かしめたすべてのものに感謝をささげて生を終ればよい。しかしいよいよ死ぬるそのときまでは、人間はあたえられた命をいとおしみ、力を尽くして生き抜かねばならぬ、そのことを平八に教えてもらったと清左衛門は思っていた。 ー 436ページ

  • 1月26日は寒梅忌であったらしい(読友の松風さんのご教示)。誰が名付けたのか寒梅忌というのは、まことに藤沢周平にこそふさわしいと思う。人は命日を自分では選べないのだが。少しずれてしまったのだが、遅ればせながら寒梅忌にちなんで藤沢作品をと本書を選んだ。本編は著者の還暦前後に執筆されている。篇中の「梅咲くころ」の清左衛門などは、作家本人を思わせるようで、ふと読者の微笑みを誘うかのようだ。作品は15の短篇が集積した物語集で、いずれも捨て難い趣きを持つが、「白い顔」の完成度が最も高いようだ。

  • 昔NHKのドラマでやっていて、読んだ原作本。心理描写が、とても好きな作品。短編の集まりなので、読みやすいと思う。

  • 連作短編の趣。派手さはないけど沁みますね。

  • 三屋清左衛門残日録(文春文庫)
    著作者:藤沢周平
    発行者:文藝春秋
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
    これぞ理想の隠居生活でのんびり読みたい日記風小説。

  • R2.2.8~3.1

    (あらすじ)
    日残りて昏るるに未だ通し――。
    家督をゆずり、離れに起臥する隠居の身となった三屋清左衛門は、日録を記すことを自らに課した。世間から隔てられた寂寥感、老いた身を襲う悔恨。しかし、藩の執政府は紛糾の渦中にあったのである。老いゆく日々の命のかがやきを、いぶし銀にも似た見事な筆で描く傑作長編小説!

    (感想)
    ご隠居、三屋清左衛門の心持ちの変化が楽しい物語です。個人的には、第三話、「零落」のあたりから、面白くなってきました。社会との繋がりが薄れ、気落ちする自らに驚きつつも、隠居の立場で藩政の裏側に巻き込まれていく。
    老いの心情、できる男の仕事の仕方、何かと学べる一冊でした。
    ただ、これを読むと多少老いが怖くなりますね。
    友達がいないと本当に孤独に苛まれそうです。

  • 五十を過ぎ、藩主の代替わりに合わせて家督を息子、又四郎に譲って隠居した三屋清左衛門は、藩内で順調に出世し、最後は藩主の用人を勤めていた。

    暇をかこつことになった清左衛門は、次々にトラブルが持ち込まれると、労を惜しまずその解決に奔走する。かねてより対立していた遠藤派、浅田派の派閥闘争が激化すると、その解決にも一役買うことになる。

    第一線を退き、人生の黄昏を迎えた清左衛門が、老いと向かい合い、充実した日々を送る、ある意味理想的な老後が描かれている。今で言うと、六十五歳位で役員を引退した有能な会社人、といったところだろうか。何だか羨ましい。

  • 隠居(といっても、時代背景から、50台前半)の主人公。

    NHK、BSでもテレビドラマ化。

    「人は、生涯、成長できる。」というテーマを読み取った。

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著者プロフィール

1927年山形県生まれ。山形師範学校卒業し教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て71年、「溟い海」でオール讀物新人賞を受賞し、73年「暗殺の年輪」で直木賞を受賞。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。作品は『蝉しぐれ』など多数。

「2021年 『いのちを守る 医療時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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