又蔵の火 (文春文庫)

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • 文藝春秋 (2006年4月7日発売)
3.54
  • (14)
  • (37)
  • (51)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 373
感想 : 42
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784167192402

作品紹介・あらすじ

凄絶な仇討ちの果て——。負のロマンと賛された初期名作集。

一族の面汚しとして死んだ放蕩者の兄のため、理不尽ともいえる仇討ちを甥に挑む又蔵。

鮮烈かつ哀切極まる決闘場面の感動が語り継がれる表題作のほか、島帰りの男と彼を慕う娘とのつかのまの幸せを描いた「割れた月」など、全五篇。

〈収録作〉
「又蔵の日」「帰郷」「賽子無宿」「割れた月」「恐喝」

「主人公たちは、いずれも暗い宿命のようなものに背中を押されて生き、あるいは死ぬ」と作者が語った、初期の名品集。

文庫解説 常盤新平

みんなの感想まとめ

人間の宿命や過去との向き合い方を描いた作品で、特に仇討ちや博徒、渡世人といった男たちの物語が収められています。彼らはそれぞれに過去を背負い、時には滑稽でありながらも哀しい姿を見せ、人生の選択に苦しむ様...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 藤沢周平さんの世界はほんといいです。疲れた時さらっと読みたい。この作品に「帰郷」という作品が入っていて、仲代達矢さん主演で時代劇専門チャンネルでドラマ化され、劇場公開もされたので観に行きましたが、これも渋かった。時代劇っていいなぁ。

  • 私の好きな藤沢周平作品は『三屋清佐衛門残日録』や『海鳴り』など中期のどちらかといえば透徹した目で淡々と振り返っているような、しみじみしたものであった。(全作品を読んでいるわけではないが)

     ところがこの初期の作品は作家自身も「書くことでしか表現できない暗い情念」と書いているように、ものすごく暗い。

     中篇「又蔵の火」のあらすじは、放蕩者の兄を殺した(血は繋がっていないが)叔父に仇討ちをしかけ、凄惨な斬り合いで叔父も自分も相打ちとなって死んでしまう。

     一族の困り者、ほんとにどうしようもない粗暴な悪い奴である又蔵の兄、でも弟には「殺されて当然」と人々に安堵され、忘れられてしまうことが許せなかった。

      兄がどうしてそうなったか、作者はそれも簡潔に書いている。複雑な生い立ち、部屋住みという不安定な立場、庶子というさげすみ、大きく言えば封建制のしがらみに縛られた人間、弟もそうだった。

     だからといってその悩みのために傍若無人にふるまっても受け入れられない。気づいてもらえない痛みに弟は「火」を見た。理不尽な怨念だ。

     この作品は時代に場を借りているけれど、現代に噴出す怨念はあふれる如く、さもあろうと想像する。作家というものは才能があると、恐ろしいものを抉り出してくるものだ。けれど噴出すものは作品だけで沢山だ。

  • 2021年4月17日読了。藤沢周平の初期の短編集、仇討ち者・博徒・渡世人など、後ろ暗い過去を持つ男たちが過去を精算し、概ね悲劇的な最期を遂げる物語たちが多く収録されており、必殺剣を持つ剣士が活躍してさわやかでスカッとした余韻が残るいつもの藤澤作品とは毛色が異なる印象。やむにやまれず・あるいは自ら決断して国や家族を捨てたり、「まっとうな仕事」に背を向けたりした面々が人生のある時期に差し掛かり、望郷の念を抱いたり家族のために奮闘したりする姿が滑稽で哀しい。手前勝手な望みではあるのだが、中年男性読者たる自分は大いに主人公たちに共感した。

  • 自分の人生で損得を勘定しない、これが宿命だと信じて長年鍛錬する。
    いま考えると馬鹿らしいと感じるけど、それが時代なんだろうな。

  • 初期の作品集。あとがきにもあるように、どの作品にも暗さが残る。後に残るものは悪くなく、著者の主人公への暖かい思いを感じた。

  • しぶい〜〜〜〜。
    作者の初期の作品。
    暗いんだけど、何かいいんだよね〜。

  • 藤沢周平の中短篇時代小説集『新装版 又蔵の火』を読みました。
    藤沢周平の作品は、先日読了した『闇の穴』以来ですね。

    -----story-------------
    一族の面汚しとして死んだ放蕩者の兄のため、理不尽ともいえる仇討ちを甥に挑む又蔵。
    鮮烈かつ哀切極まる決闘場面の感動が語り継がれる表題作の他、島帰りの男と彼を慕う娘との束の間の幸せを描いた「割れた月」など「主人公たちは、いずれも暗い宿命のようなものに背中を押されて生き、あるいは死ぬ」と作者が語った初期の名品集。
    -----------------------

    藤沢周平の初期を収録して1974年(昭和49年)に刊行された作品……以下の5篇が収録されています。

     ■又蔵の火
     ■帰郷
     ■賽子無宿
     ■割れた月
     ■恐喝
     ■あとがき
     ■解説 常盤新平

    同族相討つ凄絶な仇討ちの一部始終をえがいて鮮烈な感動をよんだ表題名篇、加えて「帰郷」「賽子無宿」「割れた月」「恐喝」など全5作を収録……暗い宿命に背中を押されて生き、あるいは死んでいく主人公たちを抑えた筆致で哀感を込めて描き、鮮烈な感動を呼んだ初期名品集。

    派手な事件も大きな英雄譚も登場しないのですが、読み終えると胸の奥に小さな火が灯るような静かな熱が残る……そんな作品集でしたね、、、

    そんな中で特に印象に残ったのは、

    土屋万次郎は土屋家の鼻つまみ者で、弟の又蔵とともに荘内藩を脱藩するが、2年後に戻ったところを捕えられ、連行中、甥の土屋丑蔵等に斬殺さる……又蔵は万次郎の中に放蕩の快楽に浸った以上に悲惨で傷ましいものを見てきていたことから、この兄のことを憎むことが出来ず、故郷に戻り理不尽とも思える仇討ちを果たそうとする『又蔵の火』、

    老いた渡世人の宇之吉が故郷に戻り、飲み屋の女であるおくみが実は自分の娘であることを知る……そのおくみと出来ていた若い渡世人である源太が厄介ごとに巻き込まれていることを知り、ひと肌脱ごうとする『帰郷』、

    ちんぴらの竹二郎は、難癖をつけた備前屋の娘に助けられる……その竹二郎が善九郎の指示で、博奕で大負けしている店の若旦那に金か女で払えと強請をしたところ、連れて来られた女は竹二郎を助けた娘だったことから、竹二郎がその娘を助けようとする『恐喝』、

    の3篇かな……どの作品も、物語の結末は必ずしも希望にあふれた明るいものではないのですが、それぞれの抱える困難や苦境から何とかして脱却したいとあがく人間を、温かく視線で描いてあり、暗さが目立つものの、感情移入しながら読むことができました! 面白かったです。

  • 初期藤沢作品。暗い、切ない、救いがない。でも、沁みますね。

  • 一見ありふれた話であり、それぞれの短編も似たようなものでありながら、それぞれがなんとも味わい深い。なんでもないような人でもそれぞれ物語があるように、それぞれの短編に人の世の悲哀がこもっている。全く手抜かりのない筆致によって読んでいるうちについつい手が止まらなくなる。

  • あまりに 忙しすぎて
    暮しに 潤いが 欲しい時
    思わず 本棚からとりだして
    どの「章」からでも
    藤沢周平さんの世界に
    耽溺させてもらう
    藤沢さんが描く
    「人間」に寄り添わせてもらう

    この「又蔵の火」には五編の
    人間哀歌が収められている
    その「哀しみ」が
    しみじみ 沁みわたって
    読み終わる頃には
    あぁ 人間って哀しいけれども
    精一杯 いきていけば いいのだ
    そんな気にさせてもらえる

    私にとっては
    藤沢作品は
    「読むクスリ」のようなものです

  • 1974年文藝春秋発行の単行本。5編。登録とは異なる版。 また、以前読んだ同名タイトルの傑作選とは収録作が違う。『又蔵の火』が武士もので、他4編は渡世人もの。『又蔵の火』は放蕩者の兄の敵討ちをする弟。弟から見た兄は満ち足りていなかったと感じたという。義理関係に引き目に感じ放蕩者となった、と考える弟。初見は弟に身勝手さを感じたが、そうでない部分も感じた。他の4編は渡世人物で1編がヒーロー的な活躍を見せるが、2編は死で終わり、1編も結末は望まれないもの。後ろの3編のある意味情けなさが、暗いロマンで心に残った。

    収録作『又蔵の火』『帰郷』『賽子無宿』『割れた月』『恐喝』

  • 短編集。
    表題の又蔵の火と次の短編だけ読んだ。
    又蔵は何故兄の敵討ちをしたかったのか?きっと本人も説明出来ない気持ちなんだろうな。そんな哀しさが溢れた物語。

  • 初期短編集。
    「負のロマン」と藤沢作品の相性はとてもいいんじゃないかと思う。豊かで静かな情景描写が、負の複雑さを際立たせているように感じた。

    「又蔵の火」の又蔵の心に火が灯る描写は秀逸であり、主人公たちの寡黙で肝が座っていて、腕っぷしが強いキャラクターも渋かっこいい。
    「恐喝」の善九郎だけは弱いところが垣間見え、人間味が感じられるのも胸が張り裂けそうなほどよかった。

    全編素晴らしいがもれなく切ないので、心を落ち着かせたいときなどに読むのが吉。

  • 藤沢周平2作目。
    表題作で武家物の「又蔵の火」の他に、渡世物の「帰郷」「賽子無宿」「割れた月」「恐喝」の4編。

    本人のあとがき(昭和48年12月)を転記して、この作品の紹介に代える。
    「・・全体としてみれば、どの作品にも否定しきれない暗さがあって、一種の基調となって底を流れている。話の主人公たちは、いずれも暗い宿命の様なものに背中を押されて生き、あるいは死ぬ。
    これは私の中に、書くことでしか表現できない暗い情念があって、作品は形こそ違え、いずれもその暗い情念が生み落としたものだからだろう。(中略)ここに集めた小説は負のロマンと言うしかない。(中略)
    だがこの暗い色調を、私自身好ましいものと思わないし、固執するつもりは毛頭ない。(中略)その暗い部分を描き切ったら、別の明るい絵も書けるのではないかという気がしている。」

    実際に作風が変わるまで、あと3年待つ必要がありました。

  • 2019/04/14読了
     暗い宿命の話ばかり。むなしい仇討ち、どうしようもない博打打ち等々。その中で「帰郷」の宇之吉の話、老年になって知った我が娘のために身を挺する姿にホロリとさせられる。

  • 藤沢周平=暗い、と語る人は多く、確かにこれは暗い。しかしその暗さがご本人が語るように、「負のロマン」となって輝いている。
    この短編集の主人公はだいたいが堅気ではないヤクザものだ。平凡な道から外れた者たちの行き先は、明るくなりかけてまた暗くなる。しかしただただ暗く終わるわけではない。どうしようもない、やりきれない暗さの中に残るものがある。最後の「姉ちゃん」という叫びもその一つだ。
    個人的に印象に残ったのは『割れた月』だ。主人公がどうしようもないながらに奔走する姿や、支えようとするお菊、そして訪れるラストから感じるタイトル。ここまで緻密な美しさを描けるのは、藤沢周平ならではだろう。
    最初はどんよりとした空気に逃げたくなる人も居るだろうが、読後には必ず誰でも書けない「負のロマン」の良さが伝わるだろう。

  • 藤沢周平の世界。人間的ではまる。

  • 内容(「BOOK」データベースより)

    一族の面汚しとして死んだ放蕩者の兄のため、理不尽ともいえる仇討ちを甥に挑む又蔵。鮮烈かつ哀切極まる決闘場面の感動が語り継がれる表題作の他、島帰りの男と彼を慕う娘との束の間の幸せを描いた「割れた月」など「主人公たちは、いずれも暗い宿命のようなものに背中を押されて生き、あるいは死ぬ」と作者が語った初期の名品集。

  • 2018.7.2(月)¥200(-2割引き)+税。
    2018.9.1(土)。

  • 一族の面汚しとして死んだ放蕩者の兄のため、理不尽ともいえる仇討ちを甥に挑む又蔵。鮮烈かつ哀切極まる決闘場面の感動が語り継がれる表題作の他、島帰りの男と彼を慕う娘との束の間の幸せを描いた「割れた月」など「主人公たちは、いずれも暗い宿命のようなものに背中を押されて生き、あるいは死ぬ」と作者が語った初期の名品集。

全36件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

藤沢周平の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×