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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784167192419
作品紹介・あらすじ
なぜ人はこんなに愚かで、哀しく美しいのだろう――。
人々の哀切な息づかいを描く、初期市井小説の傑作六篇。
壷振りの市蔵は、賭場の帰り、大川端で竹を杖に歩く稽古をする足の悪い少女に出会う。
ひたむきな姿に、ふとかたぎの暮らしをとりもどしたいと思う市蔵だが、所詮、叶わぬ願いだった——。(表題作)
江戸の市井を舞台に、小さな願いに夢を見ながら、現実に破れていく男女の哀切な姿を描く初期の傑作短篇。
「暁のひかり」「馬五郎焼身」「おふく」「穴熊」「しぶとい連中」「冬の潮」の全六篇を収録。
解説・あさのあつこ(作家)
みんなの感想まとめ
人間の暗い側面を描いた短編集で、江戸を舞台にした市井や渡世の物語が展開されます。主人公たちは、道を外れた者たちや賭場に出入りしていた人々で、特に女性との関係において苦悩し、時には裏切られる姿が印象的で...
感想・レビュー・書評
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6つの短編集。表題作は障がいのある少女との出会いで優しい心になった賭場の男、美しいが、せつない物語。「おふく」は題名からも「蝉しぐれ」を思い出した。主人公おふくの人生が「蝉しぐれ」と重なる。主人公がいずれも賭場に関係あるなど陰影のある人物であり、女性との関係などでは後味が悪い話が多かった。「穴熊」「冬の潮」などはあまりにも哀しい!その中で「しぶとい連中」は、押しかけてきた母子3人組との鞘当てが何ともユーモラスな物語でホッとする。
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1979(昭和54)年発行、光風社出版のソフトカバー本。6編。登録数の多寡によりこの本で登録。すべて市井モノで1篇をのぞきやくざ者が主人公。暗い小説が多い。暗いのは『闇の梯子』と同様だが、こちらの方は堕ちたやくざ者が救いを求め救われない話。最後の『冬の潮』は救いをもたらそうと考えているはずなのに、実は自分が転落の原因を作っていた。そして自分も結局は救われない。悪い方にしか転がらないようになっている部分が暗さを感じさせるのだろう。
『暁のひかり』、『馬五郎焼身』、『おふく』、『穴熊』、『しぶとい連中』、『冬の潮』、 -
道を外れた渡世人や、昔賭場に出入りしていた主人公が、女に振り回される話が多い。清純な女が生活のために身を持ち崩し、堅気の生活に戻れなくなる。それはお金の問題だけではなく、淫売が体に染み込んでしまったようである。男は力づくでもそこから引きづり出そうとするが、女は自らの意思で夜の世界へ戻って行ってしまう。女に裏切られる男の哀しさを描いた物語が多いが、「しぶとい連中」だけは異色で、バツイチで気ままな一人暮らしの男の家へ、抜け抜けと上がり込んで居ついてしまう子連れの押し掛け女房の話。今日こそは追い出そうと度々考える男だが、女のほうがしたたかで、なし崩し的に夫婦にさせられてしまうユーモラスな作品。
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「暁のひかり」「馬五郎焼身」「おふく」「穴熊」「しぶとい連中」「冬の潮」の6篇。何れも江戸を舞台にした市井・渡世ものです。
表題作「暁のひかり」の冒頭、賭場帰りの壺振りの市蔵が、朝靄の中で歩行練習をする少女おことに出会うシーンはとても清冽で記憶に残る作品です。少し堅気の世界に未練を感じる市蔵ですが、やはり最後は暗闇の中に沈み込んで行ってしまいます。このあたりは初期の藤沢さんのもつ「どうしようもない暗さ」です。
「穴熊」の武家の妻女・佐江と「冬の潮」の亡くなった長男の嫁のおぬいはよく似た設定です。主人公たちは女性を苦界から引き揚げようとしますが、清純だった女性は男を知ることで淫乱に染まってしまって居ます。
「しぶとい連中」はこの時代の周平さんの中では珍しい諧謔な作品です。身投げしようとした母子3人を拾ったアラクレ者の熊蔵が、家に居ついてしまった母子に懐柔されていく様子が面白い。
江戸の街で、少し道を踏み外した者たちが、わずかな願いを抱えてうごめく悲哀。
まだまだ暗さを抱えた作品群ですが、最初期の「身を持ち崩した主人公が最後に堕ちて死ぬ」というパターンから、最後まで死ななかったり、死ぬにしても前向きになったような気がします。
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余りに繰り返し読んだ挙句、ストーリーが完全に頭に定着してしまい、2009年を最後に再読を封印してきた藤沢さん。
先日から封印を解き、全作品を出版順に読み返しています。これが5作品目です。 -
藤沢周平の短編集。いずれも訳ありの男が主人公で(わりと賭場に絡んでいる人物が多い)、解説で作家のあさのあつこ氏が記すように、いずれの話も“身に沁みてくる”。静かに、でもしっかりと心の芯に届き、語りかけてくれる、そんな珠玉の作品ばかりです。
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内容(「BOOK」データベースより)
壷振りの市蔵は、賭場の帰り、大川端で竹を杖に歩く稽古をする足の悪い少女に出会う。ひたむきな姿に、ふとかたぎの暮らしをとりもどしたいと思う市蔵だが、所詮、叶わぬ願いだった―。江戸の市井を舞台に、小さな願いに夢を見ながら、現実に破れていく男女の哀切な姿を描く初期の傑作短篇6篇を収録。 -
よい短編集です。
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2017.5.1(月)¥100(-2割引き)+税。
2017.5.9(火)。 -
6話の短編が、書かれている。
どれも、まともな人生を踏み外した者が、少しの間、夢を見る。
だが、世の中そう甘くはない。
思う通りの人生を描きながら、どうにでもなれ!と、やけっぱちになりながら、生き抜いていく様。
人の世は悲哀に満ちている市井の話を、描いている作品ばかりであった。 -
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良かった。
ハッピーエンドではないところが、また。
最後、あさのあつこさんの解説も、良かった。
若いこれからの人たちに、ぜひ読んで欲しい。 -
暁のひかり
馬五郎焼身
おふく
穴熊
しぶとい連中
冬の潮
江戸の市井を舞台に、小さな願いに夢を見ながら、現実に破れていく男女の哀切な姿を描く初期の傑作短編6編を収録。 -
暗めの話が多かった中、「しぶとい連中」はユーモアまじりのほっこり感があった。
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これね、巻末のあさのあつこさんの解説も良かった。私が今、この作家に夢中な理由のすべてが書いてあった。そうそう、そうなの!って感じで(笑)。
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壷振りの市蔵は、賭場の帰り、大川端で竹を杖に歩く稽古をする足の悪い少女に出会う。ひたむきな姿に、ふとかたぎの暮らしをとりもどしたいと思う市蔵だが、所詮、叶わぬ願いだった―。江戸の市井を舞台に、小さな願いに夢を見ながら、現実に破れていく男女の哀切な姿を描く初期の傑作短篇6篇を収録。
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表題作のほか、「馬五郎焼身」 「おふく」 「穴熊」 「しぶとい連中」 「冬の潮」
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どの物語も、はみ出し者たちが主人公だが、彼らの悪に染まり切ってはいない、やるせなく哀しい心情がさらりと描かれていて、ほだされる。そんな彼らの前に現れる女たちもまた、それぞれの立場なりの屈託を抱えて日々を暮している。全編を通して静かな情が流れているような一冊である。 -
◇六篇
「暁のひかり」
「馬五郎焼身」
「おふく」
「穴熊」
「しぶとい連中」
「冬の潮」
解説:あさのあつこ -
初期の短編集です。
デビューから3年目くらいの本だから、ちょっと切ないストーリーが多いですね。
直木賞を受章する前は、うっ屈した思いをぶつけながら書いていたそうなので。。。まだその流れが残っていたのかもしれません。
でも、なんでもない動作の描写に心情がにじみ出ている、その、なんともやさしい感じがあるんですよね。 -
短編小説が六つ、入っている。
いずれも何かがきっかけで堅気な生活から足を踏み外してしまった男や女の話しである。
この中で、印象に残ったのが「馬五郎焼身」。
過去に幼い娘を妻の過失で亡くすという悲しみを背負った馬五郎。
それから馬五郎は荒れ始め、妻はなんとか彼に許しを請おうと耐えるが
馬五郎の心の傷は癒えず・・・。
二人は別れ、馬五郎は一人の女に入れあげたりして依然荒んだ生活を送るが、心の底には常に深い悲しみがある。
いろいろあって、昔の妻と再会するんだけれど そのとき馬五郎は思う。
「女ってえものは、強えや。」
本当にそうかもしれないな、と同感。
女は過去にどんな罪を背負ったとしても、したたかに生きてゆく生き物である。
反対に男は、どんなに強そうなことを言っても案外精神的に弱い。
最後に馬五郎は、通りがかった火事で逃げ送れた子供を助けるため、単身火の中に飛び込んで 子供を助け出す代わりに真っ黒になって焼け死ぬ。
しかし最後の記述を読むと
「馬五郎は冷たい土に、顔を横向きにして腹這ったまま死んでいた。顔も背も焼けただれていたが、
火に照らされたその骸には、どことなくひどい仕事を終わって、身を投げ出して眠っているような安らぎがあった。」
馬五郎はこれでやっと長い苦しみから解放されたのだ。
自分でもわけがわからなくなるほど、時の流れと心の傷が馬五郎を変え、歪めていた。
過去の傷さえわからなくなるほど。
それでも、ずっと刺さっていたそのトゲが抜けたとき。
馬五郎は本当の安らぎを得たのだろうなぁと思う。 -
「おふく」「穴熊」が良かった
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「らしい」と言えば「らしい」のかもしれないけど…
溺れている人を、助けの手が差し伸べられそうなところでさらに押し沈めるような暗さがどの作品にもある短編集。
全編この暗さはきつい。
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