新装版 長門守の陰謀 (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-43)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167192433

感想・レビュー・書評

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  • とても読みやすく一気読み。映画やドラマで観たことはありましたが、恥かしながら藤沢周平作品の初読みです。
    庄内酒井家のお家騒動である「長門守一件」を小説にした表題作ほか短編5編です。
    ゆったり調の出だしから始まるストーリー展開が面白いのと、3編が女性視線で2編が男性視線ですが、どれもそこはかとない女性としての幸せが印象的な女性視点の物語が面白かった。
    表題作「長門守の陰謀」は、実際の事件の顛末を紐解き小説として著したものですが、歴史的事実の中にストーリーをよく織り込んだ作品で、解説によればその後の藤沢作品の土台となったということです。
    一番良かったのは展開がベタな気もしますが(笑)、「夢ぞ見し」で雰囲気がドラマなどの藤沢作品でお馴染みな印象を受けます。内容は読んでのお楽しみ。(笑)ほかに町人物の「春の雪」と「夕べの光」も、庶民の日常の中から巻き起こる「女性」や「母」としての心情を細やかに描き出しています。「遠い少女」は男性の淡い思いが現実に直面する、男にとっては少し意地悪な作品でしょうか。(笑)
    自分の中で思う作品の完成度としては1位「夢ぞ見し」、2位「春の雪」で、後ろの作品ほど少しへたってくるような気が・・・。短編という限られた字数の中で、思いは伝わるのだが少し書き足りないのかもしれない。

  • 藤沢周平さんといえば時代小説だが、ミステリーを書いてもきっととても面白かっただろう。

  • 2009年第一刷、文藝春秋の文春文庫。5編。表題作以外は市井の女性を描いたもの『遠い少女』以外は主人公の女性視点。(下級武士を含む)市井の女性。『夢ぞ見し』はおかしみがある話だが、他3編は貧しいが強い女性の話。表題作の『長門守の陰謀』唯一の史実もの。解説によると以後のお家騒動モノのバックボーンとなったのではないか、とのこと。内容としては「歴史読本」掲載の小説らしい話だと思う。ラストシーンが印象的だが、これも歴史読本掲載作ではよくあるような気がする。最後だけは史実のママでないというのがよくあるので。

    収録作:『夢ぞ見し』、『春の雪』、『夕べの光』、『遠い少女』、『長門守の陰謀』、他:『「あとがき」にかえて』(昭和52年12月)、「解説」磯田道史(歴史家)、

    初出:『夢ぞ見し』小説現代 昭和52年9月号、『春の雪』小説宝石 昭和52年2月号、『夕べの光』小説宝石 昭和52年7月号、『遠い少女』小説現代 昭和52年3月号、『長門守の陰謀』歴史読本 昭和51年12月号、単行本:昭和53年1月立風書房刊。 昭和58年に刊行された文春文庫の新装版。底本は「藤沢周平全集」第二巻、第五巻、第六巻。

  • 武家物「夢ぞ見し」市井物「春の雪」「夕べの光」「遠い少女」庄内藩の跡目騒動を描く歴史物「長門守の陰謀」の5編。
    第1短編「夢ぞ見し」
    自分でも多少容貌に自信の有った昌江から見れば、亭主の小寺甚兵衛は異常なほどの無口であり、汲々と小禄を守っているだけの風采の上がらぬ夫だった。その甚兵衛を頼って現れ居候になった啓四郎は明るくカラッとした好青年だった。昌江は知らなかったが、甚兵衛は藩で一二を争う剣士であり、啓四郎は跡目争いに巻き込まれた若君だった。という、実に通俗的なストーリー。
    しかし、これが藤沢さんの手にかかると実に良い。終始昌江の視点で語られる物語は、柔らかく啓四郎に揺れる気持ちや、亭主の思わぬ一面に触れて見直すものの、またすぐに元の木阿弥にもどる昌江の心が伸びやかに描かれる。
    エンディング。藩主となった啓四郎との再会シーンはここまでの藤沢作品に無かった突き抜けた明るさです。
    藤沢周平の多作期。勿論、どうしても作品は軽くなってしまいます。でも良い意味で明るく伸びやかになったように思えます。

    ========
    余りに繰り返し読んだ挙句、ストーリーが完全に頭に定着してしまい、2009年を最後に再読を封印してきた藤沢さん。 先日から封印を解き、全作品を出版順に読み返しています。これが16作品目です。

  • 2020/3/20 読了
     「長門守の陰謀」は荘内藩の御家騒動の話。その他、武士の世界を女性視点から見た作品。

  • 2019.12.2(月)¥180(-20%)+税。
    2019.12.22(日)。

  • 人間模様に一気読み。

  • 表題作ほかの短編集。
    ダメ夫だと思っていたのが実はスゴい剣客だったり、昔あこがれていた才色兼備のマドンナがあばずれ中年になっていたり…。

    人間っていくつになっても面白いし、藤沢さんは女性心理も上手く描けるからいいですね。

    表題作は庄内藩のお家騒動を元にしているけれど、最後に悪いヤツが成敗されて良かったです。

    結局は「男性はいつまでたっても子供でダメだけれども愛らしい存在」ってところにまとまっていくわけだけれども…(笑)

  • 夢ぞ見し
    春の雪
    夕べの光
    遠い少女
    長門守の陰謀

    初期短編の秀作全五編を収録。

  • 藤沢周平の痛快で巧みな描写で見せる剣客ものも好きだが、この短編集は(表題作以外は)一般庶民の人情ものが中心で、人生の機微に触れるような、非常に味のあるものばかりだ。必ずしもすべてが手放しのハッピーエンドに終わるものばかりではなく、それぞれの愛憎や事情を抱え込んだままに、アッサリとして余韻の残るラストが秀逸だ。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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