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Amazon.co.jp ・本 (544ページ) / ISBN・EAN: 9784167192440
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みんなの感想まとめ
テーマは、著者の初期短編作品を通じての成長と人間ドラマの描写です。無名の時代に書かれた15編の短編は、藤沢周平の真のデビュー作としての価値を持ち、作品ごとに明らかに技術が向上していく様子が感じられます...
感想・レビュー・書評
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藤沢周平が『オール讀物』新人賞を獲得するおよそ9年前、無名の中間小説誌に書いていた短編15編が発掘された。藤沢周平の真のデビュー作だろう。びっくりするのは、一作毎に明らかに上手くなっていくのである。
それで、あえて最初の連作二編について詳しく感想を述べる。藤沢周平にしては拙いその作品に、後世の時代小説を塗り替えた作家の原石が見えるからである。
「暗闇風の陣」(S37.11)と「如月伊十郎」(S38.3)。隠れ切支丹の事件に臨む公儀隠密如月の活躍を描く。この題名の付け方は、きっと黒澤明「用心棒(S36)」「椿三十郎(S37)」に影響を受けていると推察する。内容もテーマも全く違うが、飄々とした如月のキャラはどことなく黒澤明の浪人キャラと被る。藤沢周平が切支丹ものを描いたのはこの時だけだった。また隠密や不良剣士、忍者が暗躍する世界は、当時の流行りではあるが、我々の知っている藤沢周平ではない。藤沢周平は読者の喜ぶエンタメから始めたのである。ストーリーは、粗さが目立ち成功しているとは思えない。唯一活き活きと描けたのは、元結いの亭主、実は泥棒の新吉という庶民だった。また、時々見せる透明度溢れる情景描写に、原石を私は見た。
その後、「霧の壁」のようにムショ帰りの使用人がお嬢さんを助けて去って行く高倉健映画のような構造の小説もあるにはあるし、読者を意識してほとんどの短編に濡れ場を用意してはいるが、総じて男女の哀歓を詩情豊かに描く藤沢周平の世界を、特に15編の終わりの頃には確立してしまう。
忘れてはならないのは、これらが描かれた時期と並行して、長女展子さんの誕生、妻悦子さんのガンの発覚、手術、再発、死亡という人生の激動が起きていることである。子供をあやしながら描き、病室で描き、締切に追われて安易な結末を描きながらも、悦子さんが「小説掲載を喜んでいた」ことを励みに、藤沢周平はいっとき生き甲斐を見出していたのかもしれない。
最初の十五編で、藤沢周平はここまでの高みに登った。私には、ほとんど奇跡のように思える。
2019年6月14日読了
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文壇でメジャーになる前の未刊行作品集。著者の故郷である山形県=出羽国に材をとった作品が多かった。そして、解説で触れられているが、私生活では職業作家になるために努力している最中に、最愛の妻を病で亡くすという不幸に見舞われた時期の作品でもある。そのせいかどうか、「空蝉の女」や「待っている」など、やるせない結末が多いように感じた。
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最初はどうなることかと。。。。
作家デビュー前の作品ですからね、如何に藤沢さんとは言え、やはり質は少々落ちます。「やっぱりねぇ」なんて思いながら、何だか苦労して読んでいました。
ところが後半になると、藤沢さんらしさが出て来て、そこからは結構楽しめました。途中から作品の質が変ったのか、それとも自分の方にどこかスイッチが入ったのか。
まあ、周平ファンが「ついでに揃えよう}と読む本だと思っていただければ。。。 -
藤沢周平の短篇時代小説集『未刊行初期短篇 無用の隠密』を読みました。
藤沢周平の作品は3週間前に読んだ『龍を見た男』以来ですね。
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“藤沢周平”の原点がここにある??
人に恐れられる隠密という存在も、巨大な組織からすれば卑小な歯車に過ぎない──老中松平定信が寛政の改革をおこなうにあたって諸国に放ち、やがて時間とともに忘れ去られた男の悲哀を描く表題作。
ほか、歴史短篇「上意討」、悪女もの「佐賀屋喜七」、切支丹もの「如月伊十郎」、こけし作りに心血を注ぐ男を描く「木地師宗吉」など、作家デビュー前に書かれた幻の14篇に加え、藤沢の浮世絵への深い関心を物語る「浮世絵師」を収録。
阿部達二による作品解説あり。
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藤沢周平が作家としてデビューを果たす数年前(1962年(昭和37年)11月から1964年(昭和39年)8月)の無名時代に雑誌掲載された作品を収録して2006年(平成18年)に刊行……その後、2009年(平成21年)の文庫化の際に『浮世絵師』を追加し、以下の15篇が収録されています。
■暗闘風の陣
■如月伊十郎
■木地師宗吉
■霧の壁
■老彫刻師の死
■木曾の旅人
■残照十五里ケ原
■忍者失格
■空蝉の女
■佐賀屋喜七
■浮世絵師
■待っている
■上意討
■ひでこ節
■無用の隠密
■解説 四十年の眠りから醒めて 阿部達二
■文庫版のための解説 ―「浮世絵師」をめぐって― 阿部達二
人に恐れられる隠密という存在も、巨大な組織からすれば卑小な歯車に過ぎない……命令権者に忘れられた男の悲哀を描く表題作ほか、歴史短篇『上意討』、悪女もの『佐賀屋喜七』など、作家デビュー前に書かれた15篇を収録、、、
文庫化に際し、藤沢の浮世絵への並々ならぬ関心を知ることが出来る『浮世絵師』を追加した。
デビュー前の作品ですからねー やや物足りなさを感じました……そんな中で印象に残ったのは、『霧の壁』と『木曾の旅人』かなぁ、、、
この2作品は、後々の作品の好みな作風を感じましたね……。 -
廃棄: 2022年4月22日
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阿部達二さんの解説を読みたくて。
「用心棒日月抄」から藤沢ワールドに入ったので、初期作品は私には辛い話が多い。
特に「佐賀屋喜七」の辛さったらない。
「老彫刻師の死」は、まさかの古代エジプトが舞台。当時、雑誌の読者さんは戸惑ったのでは?
阿部さんの解説は、単行本の時のと文庫本になってからのも載っていて、丁寧。
文も厳しさもあるが、眼差しが温かい。 -
2019.9.2(月)¥250(-20%)+税。
2019.9.11(水)。 -
藤沢周平は昔集中的に読んだので、文庫本は各社ともほとんど読んでいると思う。残っているのはこういう未刊行初期短篇など落ち穂拾いものだけ。
無名時代に雑誌掲載されて眠っていたものを掘り起こす。ネームバリューでそこそこ売れはするだろうけれど、それがいいことなのかどうか。
はっきりいって内容は玉石混交、雑多であまり感心しない。「らしい」ところは確かにあるけれど、著者が存命していたら手を入れたいと思うに違いない。いや、そういう気にすらならなかったから打ち捨てられていたのかも。
なかでは「木地師宗吉」がぼくは好きだけど、なぜかこの作品だけ阿部達二の詳細な解説には無視されている。なぜだろう。 -
新鮮な藤沢周平を読んだようにおもいました。
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藤沢周平としての作家デビュー前の作品を集めたもののようですが、完成度が高くデビュー前とはとても思えません。
よく言われる初期の頃の暗さや陰りといったものも、あるにはあるのですが、不思議なことにそれほど気になりませんでしたし、以外に明るい作品もあり生来明るさ、暗さの二つを持ち合わせていた証かもしれません。少し文章が華美に過ぎる気もしますが、それも後の藤沢周平と比べてしまうためかもしれません。如月伊十郎を主人公にもっと連作を書いてもらいたかった、ですね
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