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Amazon.co.jp ・本 (624ページ) / ISBN・EAN: 9784167192464
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みんなの感想まとめ
生涯を緻密に辿ることで、作者の温かい筆致が長塚節の歌や旅、厳しい日常に寄り添い、読者に深い感動を与えます。心理描写の豊かさが際立ち、彼の作品が子規の写生の伝統を受け継ぎながらも独自の完成度を持っている...
感想・レビュー・書評
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克明に追っていきながら、心理描写を含むのがよい。子規の写生の伝統は長塚節においてある意味完成する。かなり俳句に近づいており、久保より江が称賛するのもわかる。同時代の文壇・歌壇などの情勢も面白い。藤沢周平の「海坂」投句経験がどこかで生きているのかもしれぬ
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2019.12.2(月)¥200(-20%)+税。
2020.5.27(水)。 -
長塚節(たかし)といえば「土」。
名前と作品名は、学校の教科書で習ったことがあるが、これまで関心を持ったこともなく、藤沢周平を読んでいなければ、まさか伝記を読むこともなかったはずの作家である。
長塚節が正岡子規の弟子で、歌人であったということも本書を読んではじめて知った。
作者が得意とする時代小説とちがって、あざやかなストーリーの展開はなく、綿密な資料の調査に基づき、やや鈍重と思えるほど、地道な作品となっている。こちらが和歌を鑑賞する能力を持たないでの、作中に引用される多くの長塚節の作品の出来具合や上達具合もよくは伝わってこない。それでも最後まで興味深く、一気通貫で読ませる。
語り口も時代背景も島崎藤村の「夜明け前」を思わせるが、こうした重厚で地味な作品を、読者に飽きさせず読ませるのは、ひとえに作者の文章の力なのではないかと思う。
ところで、長塚節は晩年(といっても37歳で早逝しているので、まだ若いのだが)、九州各地を旅しており、そのなかでも福岡の寺社についてこう感じていたという。
「福岡周辺の古蹟は、古く由緒あることでは機内の旧蹟に負けないものだった。そして筑紫野を中心に散在する古刹観世音寺、東光院、朝倉の寺寺の仏像は、節の予想を越えてすばらしいものだったのである。感動が瑞端しいのは、構えたところのない筑紫野の自然の中に、あるいは観世音寺の巨大立像のように、あるいは南淋寺の秘仏のように、豪放に、また緻密に光彩を放つ仏像が、格別ひとに騒がれることもなく無造作な形で存在していることに、京都、奈良の仏像から受ける印象とは異なる、一種の野性味のようなものを感じるせいかもしれなかった。だから節は、伊藤佐千夫にあてた五月十四日附けの絵葉書に、「いよいよかへりとなれば奈良へよるが、観世音寺の仏像をよく見ておいて、奈良を見たらどう見えるだらうと楽しみにして居る」と書いたのである。」(p402-403)
福岡には寺社の観光名所が多いということは聞いたことがあったが、そこまで素晴らしいものだとは知らなかった。
機会があれば見に行ってみようと思う。 -
夏目漱石の長塚への視線が気になった。泥臭い田舎作家と見下す上昇志向の強いエリート(夏目)の狡猾で冷たい意識が感じられて仕方がない。貧しい・教育がなく・品がない百姓でも蛆とか獣類とまでいわれることはない。この違和感は長塚のものであり、藤沢のものでもある。自分の作風・作品を際立たせるために、「土」を朝日の連載に選んだとも勘ぐってしまう。
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茨城県南西部出身の作家、長塚節(たかし)の生涯をかなり調べたうえで「小説」として描いたもの。
ハッキリわからない部分を想像で補完しているから「小説」としているけれど、実際は人物伝としてかなりまとまっているものでした。
正岡子規の門下生だった長塚さんは、父親が茨城県議長をするのにお金が必要で(県民のために…ではないようだ。)質屋で成りあがった家計は火の車。
本人も病弱で、妻も娶らず貧困と闘いながら37歳の生涯を閉じた。
……って聞いていたけれど、ちょこちょこ東京に出て句会仲間と交流したり、何か月にもわたる大旅行をしたり、九州まで結核の治療に行って連日観光をしまくるなど、いわゆる本当の「貧困」とはちょっと違うようでした。
正直言って、それなりの「特権階級」だったと思う。
この時代はやっぱりコネが強い時代なんだね。
各地を旅する鉄道の切符は知り合いの国鉄職員からゲット、九州での入院費はお医者さんの「好意で」官費入院にしてこれまた無料。
結核患者は困るって旅館の人に言われても(ってことは結核が空気感染することは一般常識で、本人がそれを知らないはずはなかったわけだ。)あちこち旅をして宿に泊まり、人とも接しまくる。
旅先からは「どこどこで美人に会った♪」とか、友達に手紙やハガキを出しまくり、それなりに(?)女性に対する興味もある。
歌を詠む方にはスゴイ人なのかもしれないけれど、ただひたすら働いて知識欲を持つことすら知らず、ただひたすらに働いて土地に縛りつけられたまま亡くなるだけの生粋の農民に比べたら、その代表って言われても「はぁ?」って感じなんじゃないかなぁ~。
あと、同じく子規門下生だった伊藤左千夫さんがかなり傲慢な困ったオヤジで、これを知ったら『野菊の墓』とかを読んでも「はぁ?」って思いそうな気がしました。
毎年奥さんに子どもを産ませて、そのほかに愛人がいて…とかね~。
やっぱり彼らは、この時代の特殊な部類の方々なのだな。
貧困も自己責任って言うか「それって貧困?」ってね。
この『白き瓶』自体は、しっかり調べられていて、キレイにまとまったお話でした。
さすがの藤沢文章で読みやすかったです。
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