平家物語の女性たち (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167200053

感想・レビュー・書評

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  • 歴史小説とか時代小説は苦手だったけど、永井路子は昔から馴染みがあった。『北条政子』や『歴史を騒がせた女たち』のシリーズは面白かった。

    この本はかなり昔に買ってそのままになっていた。大河ドラマの『清盛』を見た後だから、何となく掴めたけど、平家物語を未読の人には分かりにくいかもしれない。

  • 「平家物語」に登場する主だった女性に対する筆者の考察。


    ざっくり「平家」の物語を復讐したいときに便利かもしれない。
    しかしながら、筆者の時代と現代とは感性のギャップがあるため
    若干の違和感は拭えない。

    ともあれごく一般的な解釈による記述に留まっているのは
    初心者にも理解しやすく、「平家物語」の世界観を知るには
    よい本ではなかろうか。

  •  “平家女人探訪”と標榜される本書は、軍記物の脇役ではない、日本史上の変革期に生きた女たちのドラマが描かれる。
     女性群像を種別し、戦争体験を各々の立場から見つめる著者の視線は、冷静でも穏やかなのが温かい。
     『恋人たち』には有名な顔触れが揃い、特に千手前と平重衡の心の通い合いが目を引く。
     琴と琵琶を交えた和漢朗詠集歌の遣り取りが儘に会話となる淡く優雅な一夜は、「平家」において最も美しい場面の一つとされる。
     透き通るように胸に沁み入る綺麗な情景。
     死を目前に必死に悟りを求める敗軍の将の貴公子と、東国の女らしくなく繊細な気遣いに満ちた優しい女性。
     慕う男の姿を通して死を罪を生の意味を知った女の、語られぬ心情の過程こそが興味深いと説かれる。
     重衡の死後、彼女が出家した「平家」と恋慕募って死んだと結ぶ「吾妻鏡」の差の詮索は、確かに無用なのかもしれない。
     行きずりに出逢った安らぎと労りの交叉の美しさを、素直に味わっていたいと思わせる。
     また、名の知られる横笛は哀しき美女といった風情で、大衆に望まれたロマンスの担い手故に必然的に類型化したと、語り物の限界が指摘される。
     かつマンネリに倦まず、時代における出家願望の奥まで抉り取るのが深い。
     社会に対する底知れぬ不信感や絶望・虚脱感は現代の比でないとし、仏道への帰依が、世を儚んだ逃避よりも精神的平和を追求しての跳躍だったと見ている。
     表面に流されないこの観察眼は見習わなければと、いつも思う。
     一方、従来注目の薄かった一門の妻女に焦点を当てた『人妻たち』では、凄惨さにそれぞれの個性が浮き上がる。
     平通盛の後を追って入水した小宰相の遺体に亡き夫の鎧を纏わせて海に葬る光景は、春の曙のモノクロの葬送劇だから尚更鮮やかに想像してしまう。
     自殺の良し悪しを問わず、ひたすら悲哀のみを昇華させ流転興亡に織り混ぜた章は、理屈を省いて胸に迫るものがある。
     更に、千手に劣らず重衡の生涯を眩しく彩る、正妻の大納言典侍(佐)の気丈さには瞠目する。
     腐敗しかけた夫の首なし屍体を待ち、恐ろしいという感覚すら忘れて供養する女の、痛ましさを超えた酷烈な有り様。
     “近代の小説なら、彼女こそ一編の小説の主人公になる”との言にも頷く。
     加えて、異質な女性像と描かれる巴御前は、実在性よりも勇婦として創られゆく過程の一案が面白い。
     都人にとっての義仲ら異邦人への隔絶感が人々の記憶の中で深まり、勇猛な女武者が生まれる素地となった見方は伝説の発端を垣間見る思い。
     そして『二人のヒロイン』と称し、建礼門院と対に語られる平時子への熱の籠もった分析。
     妻として母として得た栄華の、報いを見届ける覚悟。
     毅然とした強さと平凡な弱さがせめぎ合う生々しい葛藤を経たが為に、壇ノ浦の決戦に際して冷静に死に向き合う姿が凛々しさを増す。
     追い詰められ取り乱した最期ではなく、苦しみながら見つめてきた死を前に、惨(むご)くも潔い幕引きの役目を淡々と沈着に果たす。
     それは、日本歴史の正統の象徴を、死しても敢然と保つ執念。
     夫の築き上げた総てを終結させた時子と、彼女に抱(いだ)かれた幼帝の死を、著者は“誰の場合よりも静謐な、浄福ともいうべき光に包まれている”と述べる。
     「平家」関連の創作や解釈に触れる機会が多かったせいか、これら古典の『隙間』の不思議に目を留める楽しさに味を占めそうだ。
     物語は、背後に在る綴り手の主張や拘り、欠落や相互関連、時代思潮の網目から掬い上げた上で、漸く本質が透けてくるのだともしみじみ感じた。

  • 平家の奥方さまたちもジェットコースター人生だよなあ、と思いつつ読んでました。尼御前なんか特にね。たぶん現代の視点から見れば、平家物語に出て来る女の人って言うのはたいがい弱くて儚くて、最後は出家しちゃって…って感じなのかもしれませんが、それでも彼女らはきっとそれぞれ自分なりに人を愛して激動の源平争乱期を生きたんだろうな、と思いました。

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