- 文藝春秋 (1988年8月10日発売)
本棚登録 : 321人
感想 : 40件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784167200176
作品紹介・あらすじ
その身を犠牲にしてまで元正女帝を政治につき動かしたものは何か。壬申の乱から平城京へと都が遷る激動の時代、皇位を巡る骨肉の争いにかくされた謎に挑む長篇。(磯貝勝太郎)
AIがまとめたこの本の要点
この本を表す言葉
みんなの感想まとめ
激動の古代日本を舞台に、元正女帝の成長とその時代の権力闘争を描いた物語は、歴史の深淵に迫る魅力に満ちています。著者は、元正天皇が生きた時代の複雑な人間関係や政治背景を丁寧に描写し、特に持統天皇や藤原氏...
感想・レビュー・書評
-
小さい頃、まんが日本の歴史で気に入っていたのが古代なのですが、大人になっても「???」だったのが、天智、天武、持統の関係でした。なぜかというと、天智の娘である持統が、いずれ父側と敵対すると分かっている天武と行動を共にする際、漫画ではとても迷いなく描かれていたので。まんがなので、実際どうだかわかりませんが、そこが子供心に気にかかっていました。永井先生の物語は、その疑問に答えてくれるものであり、さらにそれが持統、文武、元明、元正と続く歴史の底を流れるものだとしています。
つまり、元正帝側では、持統と元明の母たちの父、蘇我倉山田石川麻呂を自害に追い込み、母子たちを不幸な境遇に追い込んだ藤原鎌足や蘇我赤兄の血筋とその政治を否み、蘇我の娘たちが皇統に関与していく道を守る。反対に、藤原不比等は壬申の乱の敗北から立ち上がり、鎌足の時になし得なかった、藤原氏の皇后を立て、その皇子を天皇に据え、政治の実権を握りその地位を確たるものとする、という野望をかなえる。そのせめぎあいが描かれています。そして、その果てに長屋王の変という悲劇が起こります。
元正帝が氷高皇女と呼ばれていた若く政治に疎い時代からはじまり、徐々に自分達蘇我の娘たちの歴史を知り、政治に関わらざるを得なくなり、その手腕を発揮しながら、苦難のなか威厳を保ち続ける様を描いています。
美しいといわれた元正帝は、本当にこんな人だったかも、女帝が多かった背景にはこういう政治的慣習があったのかも、女帝たちの政治的指導力もかなりのものだったのかも、と永井先生の説に納得もし、また物語も楽しめる一冊でした。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「女帝」の中でも元正天皇はもしかしたらあまり強い存在感を持たない人物かもしれない。ただ、教科書でその名を知るきり。だが、私たちが思うより元正女帝が生きた時代は、激動であり波乱であったと思う。蘇我の時代から藤原の時代へ。見落とされがちなこの流動を記すことができるのは、永井路子さんにしかできない。
-
元正天皇を主人公に据え、その少女時代(ひめみこ氷高)から、
生涯を閉じるまでが描かれます。
この本を読み、この時代の権力の争いは、蘇我氏の血と、
中大兄皇子を補佐した中臣鎌足からの藤原氏の血との、
皇位継承争いなのだと知りました。
この時代に詳しくないため新鮮な驚きをもって読みました。
この本を読んだのちに、別の本で日本史の通史概説を読みましたが、
ここに描かれている経緯はほぼ、史実に沿っているようでしたので、
大変勉強になりました。
持統天皇、元明天皇、氷高の妹・吉備、軽(文武天皇)、長屋王、
藤原不比等、不比等の四兄弟・武智麻呂、房前、宇合、麻呂、
県犬養橘三千代、光明皇后、聖武天皇、橘諸兄…、
さまざまな人物が登場しますが、わかりやすい文体で丁寧に描かれています。
特に、長屋王に興味が湧きました。
藤原四兄弟に一家諸共謀殺されますが、元正天皇の立場で読み進めるので、
長屋王の変は無念で歯痒い気持ちで迎えました。
薬師寺の薬師三尊像なども登場し、
その時代のものが現在まで遺っていると思うと、
感慨深いです。 -
持統天皇から聖武天皇にいたる5代の天皇に至る時代を背景に、元正天皇を主人公とした大河作品。王朝物というとなんだか雅な物語と想像するかもしれないけれど、全然違います。蘇我の血統である天皇家。台頭し天皇家に我が血を注ごうとする藤原不比等。
天皇家を藤原から守ろうとする長屋王。不比等を継ぐ藤原四兄弟。そして、その子である藤原仲麻呂(恵美押勝)。対抗する橘諸兄。宮中はまさに権謀術数や陰謀がうごめき、息もつかさぬ緊張感。屹然とした女帝たちに対し、気が弱く流されやすく、政治を投げ出してしまう文武や聖武。
この凄まじいまでの世界を、史上ただ一人、女帝から女帝に皇位継承された未婚の美貌の女帝が、毅然として乗り切る姿を描きます。
いやあ、奈良時代ってすごいんだねぇ。ただただびっくりのスリリングな小説です。
この版は絶版ですが、今は別に新装版が出版されています。 -
初めての永井路子女史。大変面白かったです。日本史は好きだったけど、所詮大学受験の知識までだったので、視点が異なるだけでこんなにも世界が変わるのだなあと感じました。
政治色が濃いので、見事な手腕に鳥肌が立つシーンが多々。
「すみれ色の翳」という表現がとてもすきです。
この本が出版されたとき、まだ自分が生まれていなかったと思うと、それもまたゾクゾク。
2016.08.11 -
古代においての母系史観は納得だし面白いのになにか引っ掛かる。そもそも蘇我本宗家側からしてみたら、所詮クーデターに荷担した蘇我倉山田石川麻呂の末路は自業自得みたいなもんじゃないかと。そこを無かったかのように子々孫々しれっとされてもなぁ。『そもそも誰が元凶?』そんな感情が最後まで拭いきれずモヤモヤ。
-
高校生くらいの時に永井路子氏の小説にはまったのだが、久々に取り出してみたら本が黄ばんでいて自分の読書の歴史を感じました・・・。
本書は、古代史の一つの節目、672年の壬申の乱後に誕生した女帝元正天皇の生涯を描いたもの。壬申の乱で勝利した大海人皇子=天武天皇とその妻持統天皇の孫にあたる氷高皇女(のちの元正天皇)は、幼い頃からその美貌を謳われていたが、彼女の負った宿命は、女としてではなく帝王として生きる道であった・・・。
藤原氏が次第に台頭してくる時代でもあるが、その影には女たちの孤独な戦いがあった。実際の元正天皇が、もっと潤いのある人生を送っていてくれることを願わずにいられない。ちなみにマンガ「天上の虹」も合わせて読むと作者の捉え方の違いなどが分かって面白い。 -
どちらかというと政治色の強い内容でした。歴史好きには面白いかもしれませんが、ストーリーとしては物足りないかなと思いました
-
-
女帝といえば推古天皇や持統天皇しか知らなかった私ですが、大化の改新以降、藤原氏の権力攻勢から蘇我の血を守ろうと対決し、敗北しながらも最後まで凛とした元正女帝の姿に感動しました。
時代の流れには逆らえないところが切なかった・・・。
今度は藤原側から見た小説も読んでみたいです。 -
タイトルから予想される物語とはぜんぜん違っていた。
華やかさがあるものでもなく、女帝時代が長いわけでもない。
面白いのだが、主人公の元正女帝を示す言葉は「美貌の女帝」ではないんじゃないかなぁ。タイトルがもう少し地味なものであれば、話に入り込めたような気もする。 -
独身女帝・元正天皇のお話。恋愛を捨て、国家に身を案じた生き様が描かれている。
-
確かにこれは「歴史小説」なのだけど、さすが永井路子!史実からそれない範囲で、実際にありそうなことが書かれているから好きです。
持統天皇・元明天皇・元正天皇の蘇我倉山田石川麻呂の血筋と、藤原氏との対決。そこには大化の改新、壬申の乱が根元にあった。
全てのしわ寄せが元正天皇にのしかかってきていて、哀れに思えたけれど。しかしそこは美貌の女帝!最後まで凛とした姿を変えない強さがあった。
強い女が好きです。 -
系図を女系で見直すと違ったものが見えるというのはそう目新しい話ではないけれど、この本もそうした視点で書かれています。
蘇我氏は大化の改新で滅んだと教科書では習うけれど、天皇の妻そして母はそれからも蘇我系が続き、蘇我の女たちは宮廷をとりしきっていた。持統→元明→元正と飛鳥時代に女帝が続いたその理由を、単に男子の継承者が若かったからとするのではなく、蘇我系の血を守るためであったという視点で語っています。
その見方からすると聖武天皇は初めて藤原の母を持った天皇という意味で特別になる。大仏を造った理由もその血に絡んだ苦悩につなげています。
寺院の建立、都の造営、遣唐使の派遣。天智以前から天智、天武から聖武の政治の方向もその視点で語っていて、教科書では持統天皇は藤原不比等と協力して政治を行ったとなっているけれど、この話のなかでは対立していて、とても興味深く読めました -
初の独身女帝、元正天皇にスポットを当てた作品。
「中継ぎの女帝」という従来からの考えを覆す、「蘇我の女の血筋を守る」ために即位したという視点に基づいて書かれた作品。
歴史モノは好きで、古代~中世にかけての作品は割と読むが、「女性」にスポットを当てた作品はそれほど多くないように思えるので、「女性にスポットを当てた」この作品は、見つけた瞬間に「読もう!」と思えた作品。 -
人生の負け方教えます。
持統天皇から女帝が三代続いた時代と、蘇我が没落し藤原が台頭する時代が重なっていることに目をつけた作者の意欲作(だと思う)
「春すぎて夏來にけらし白妙の 衣ほすてふ天の香具山」 -
決して中継ぎでもお飾りでもなかった。
元明天皇を母に持ち
義弟、長屋王を失いながら
蘇我の血を引く最後の天皇として
生き抜いた女帝。
翻弄される運命と悲しさの中で
ひっそりと
強く咲き誇った美貌の女帝。
著者プロフィール
永井路子の作品
