- Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167200176
作品紹介・あらすじ
その身を犠牲にしてまで元正女帝を政治につき動かしたものは何か。壬申の乱から平城京へと都が遷る激動の時代、皇位を巡る骨肉の争いにかくされた謎に挑む長篇。(磯貝勝太郎)
感想・レビュー・書評
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元正天皇を主人公に据え、その少女時代(ひめみこ氷高)から、
生涯を閉じるまでが描かれます。
この本を読み、この時代の権力の争いは、蘇我氏の血と、
中大兄皇子を補佐した中臣鎌足からの藤原氏の血との、
皇位継承争いなのだと知りました。
この時代に詳しくないため新鮮な驚きをもって読みました。
この本を読んだのちに、別の本で日本史の通史概説を読みましたが、
ここに描かれている経緯はほぼ、史実に沿っているようでしたので、
大変勉強になりました。
持統天皇、元明天皇、氷高の妹・吉備、軽(文武天皇)、長屋王、
藤原不比等、不比等の四兄弟・武智麻呂、房前、宇合、麻呂、
県犬養橘三千代、光明皇后、聖武天皇、橘諸兄…、
さまざまな人物が登場しますが、わかりやすい文体で丁寧に描かれています。
特に、長屋王に興味が湧きました。
藤原四兄弟に一家諸共謀殺されますが、元正天皇の立場で読み進めるので、
長屋王の変は無念で歯痒い気持ちで迎えました。
薬師寺の薬師三尊像なども登場し、
その時代のものが現在まで遺っていると思うと、
感慨深いです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「女帝」の中でも元正天皇はもしかしたらあまり強い存在感を持たない人物かもしれない。ただ、教科書でその名を知るきり。だが、私たちが思うより元正女帝が生きた時代は、激動であり波乱であったと思う。蘇我の時代から藤原の時代へ。見落とされがちなこの流動を記すことができるのは、永井路子さんにしかできない。
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持統天皇から聖武天皇にいたる5代の天皇に至る時代を背景に、元正天皇を主人公とした大河作品。王朝物というとなんだか雅な物語と想像するかもしれないけれど、全然違います。蘇我の血統である天皇家。台頭し天皇家に我が血を注ごうとする藤原不比等。
天皇家を藤原から守ろうとする長屋王。不比等を継ぐ藤原四兄弟。そして、その子である藤原仲麻呂(恵美押勝)。対抗する橘諸兄。宮中はまさに権謀術数や陰謀がうごめき、息もつかさぬ緊張感。屹然とした女帝たちに対し、気が弱く流されやすく、政治を投げ出してしまう文武や聖武。
この凄まじいまでの世界を、史上ただ一人、女帝から女帝に皇位継承された未婚の美貌の女帝が、毅然として乗り切る姿を描きます。
いやあ、奈良時代ってすごいんだねぇ。ただただびっくりのスリリングな小説です。
この版は絶版ですが、今は別に新装版が出版されています。 -
初めての永井路子女史。大変面白かったです。日本史は好きだったけど、所詮大学受験の知識までだったので、視点が異なるだけでこんなにも世界が変わるのだなあと感じました。
政治色が濃いので、見事な手腕に鳥肌が立つシーンが多々。
「すみれ色の翳」という表現がとてもすきです。
この本が出版されたとき、まだ自分が生まれていなかったと思うと、それもまたゾクゾク。
2016.08.11 -
古代においての母系史観は納得だし面白いのになにか引っ掛かる。そもそも蘇我本宗家側からしてみたら、所詮クーデターに荷担した蘇我倉山田石川麻呂の末路は自業自得みたいなもんじゃないかと。そこを無かったかのように子々孫々しれっとされてもなぁ。『そもそも誰が元凶?』そんな感情が最後まで拭いきれずモヤモヤ。
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高校生くらいの時に永井路子氏の小説にはまったのだが、久々に取り出してみたら本が黄ばんでいて自分の読書の歴史を感じました・・・。
本書は、古代史の一つの節目、672年の壬申の乱後に誕生した女帝元正天皇の生涯を描いたもの。壬申の乱で勝利した大海人皇子=天武天皇とその妻持統天皇の孫にあたる氷高皇女(のちの元正天皇)は、幼い頃からその美貌を謳われていたが、彼女の負った宿命は、女としてではなく帝王として生きる道であった・・・。
藤原氏が次第に台頭してくる時代でもあるが、その影には女たちの孤独な戦いがあった。実際の元正天皇が、もっと潤いのある人生を送っていてくれることを願わずにいられない。ちなみにマンガ「天上の虹」も合わせて読むと作者の捉え方の違いなどが分かって面白い。 -
どちらかというと政治色の強い内容でした。歴史好きには面白いかもしれませんが、ストーリーとしては物足りないかなと思いました