漱石の思い出 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (1994年7月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784167208028

作品紹介・あらすじ

見合いから二十年間を漱石と共に生きた鏡子夫人でなければ語り得ない、人間漱石の数々のエピソードを松岡譲が筆録。漱石研究に欠かせない古典的価値を持つ貴重文献。(半藤末利子)

みんなの感想まとめ

人間漱石の真実を、彼の妻である鏡子夫人の視点から語ったこの作品は、漱石の知られざるエピソードや人柄を深く掘り下げています。夫人のあけすけな語り口は、彼女自身の魅力を引き立て、読者に古き良き東京の雰囲気...

感想・レビュー・書評

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  • てっきり文豪漱石さんの奥さんは、悪妻とは言わねど、
    恐妻か、嬢様奥様ではないかと、なんとなく思っていましたよ。

    それは漱石さんの作品に影響されたところがあります。
    登場する女性が気が強そうなお嬢様、伝法なひとっぽい女性、
    あるいは静かだが芯が強くて分かりにくいひとが跋扈するのですから。

    漱石さんの奥様鏡子さんに漱石生前の出来事を思い出して話をしてもらい、
    娘婿の作家松岡譲さんが書き留め文章に起こしたものなのです。

    その話っぷりがあけすけでおもしろく、夫人の人柄がよく出ています。
    そう、古き良き東京人ぽい、ちょっと伝法な雰囲気があります。

    でも、なかなか開けている奥様でもありまして、
    その住んでいらした本郷や早稲田近辺しか知らないひとでもなかったのです。
    (東京人はほんとによそを知らない人が多いんですよ)

    漱石さんが神経を病んでいるときにはパワハラあり「別れる」と言われ続け、
    失敗すればしたで「オタンチンノパレオラガス」といろいろからかわれても、
    添い遂げました。

    話っぷりからすると愛情の深い、明るい何事にもめげない性格
    それでなければ、あの胃弱で神経衰弱で気難しい作家についてられませんわね。

    そして、家計経営でも貧乏は貧乏なりに、潤沢になってくれば、
    ちゃんと采配する、しっかり者でもありました。

    この本の初版は昭和3年、漱石13回忌のころという古さなのに、
    作品はすべてのように親しんでも、わたし知らなかった本です(恥

    漱石さんの作品の成り立ちも分かり、作品がなおなお、おもしろくなる読み物です。

  • 想像以上に読みやすく、面白かったです。

    漱石への愛がつまっています。
    どこからくるのか不思議なくらい、深い愛。

    とくに漱石ファンではないわたしですが(半藤夫妻や宮崎駿から伝ってきた)、
    鏡子夫人は好きです、ファンになりました(笑)

    松岡譲氏の準備と合いの手がよかったのかわかりませんが、細かいことまで覚えていらっしゃるし、語彙も豊富。

    またいつか読み直したい一冊です。

  • 漱石の婦人が語り、娘婿が筆録した本。
    BOOKOFFで購入。
    漱石は「吾輩は猫である」以外はだいたい読んだから、裏話を知りたくて読んだ。夫人の目から見た漱石、「狂せり」と言われたロンドン留学の話、父親としての顔など、面白く読んだ。
    私は1冊気にいると同じ著者のものをひと通り読む癖があるので、自然と著者の人となりも知りたくなる。
    いい買い物をした。

  • 漱石について読むたびに「神経衰弱」と書かれていることが多くて、どういうことなんだろう?と思ったものだけれど、本書を読んでそれがありありとわかった。
    かなり奇矯な行動をとる漱石。監視されているという被害妄想あり。妻や子供には怒鳴り散らす。鏡子夫人は一苦労。いくら文豪とはいえこれはひどい。
    面白かったのは鏡子夫人の分析。漱石の顔が火照ると頭がおかしくなり、それがおさまると今度は胃にくる。医学的にはどうかわからないけど、この見立てがすごく説得力があった。

  • 妻・夏目鏡子から見た、夫・夏目漱石

    夏目漱石に親しみを感じる、読み終えるのが寂しい
    また、読み返す一冊になると思う

    今の世ですとかなり困った夫なのですが、明治の女は情が深く強かった
    漱石先生、鏡子さんに甘えとる
    まあ、かなり鏡子さんに甘い夫でもあったようですが
    10歳年下やしな

    お二人がご夫婦で良かった
    奥さん凄いしっかりしてはる

    いろんなエピソードを読んでから、改めて作品を読み直したく思った

    次男・伸六さんの後書きを読むと、漱石先生の行状が怖すぎる…
    よく見捨てられなかったな…

    また、“死”が現代より身近であった時代の死生観も考えさせられる

    ※「文豪」という言葉、「夏目漱石氏剖検(標本供覧)」長与又郎博士述 大正五年十二月十六日講演でも出てきている
    「新小説」臨時増刊「文豪夏目漱石」は、大正六年一月二日発売
    ※“文豪”という言葉の初出を調べてみる

  • 1928年(昭和3年)80年前の夏目漱石夫人による回想録
    作家夏目漱石個人の伝よりも
    明治を生きた女性が夫を観察した記録として抜群に面白い
    著名な業績を残したひとを対象にしているとはいえ
    これだけ夫について語ることがありできる女性が
    もちろん妻に対して夫がでも
    過去も80年後の今もどれだけいるだろうか
    それだけでも充分に素晴らしい
    ついでに面白い記述があったので引用
    「俺は昨日また野間と二人で神田の方を歩いて、飯時になったから牛肉屋に入ると、隣の客が噂しあってるのが、おれの知ってるやつの話だ。きいているといかにもウンデレでね」 と夏目(引用注:鏡子夫人からみた漱石のこと)が話します。そこで寺田さん(注:漱石の友人で様々な作品で好意的に描かれている物理学者、寺田寅彦のこと)が、「人間ウンデレに限りますよ。何でも細君のいうことをウンウンと聞いてやって、そうしてデレデレしていればこれに越したことはないじゃありませんか。ウンデレでなけりゃ夫婦喧嘩の絶え間がないわけでしょう」 で、夏目もそれはそうだなといったぐあいにいやいや賛成しているといったものでした。 (P164より)
    「何々デレ」ということばは100年前からあったのか

  • 初読の時と違い、続けざまに『道草』まで漱石を読んでから再読すると、妻・鏡子が述懐する漱石との生活がより深く味わえる。英国留学を契機に発症した神経衰弱は、漱石にとっても辛かっただろうが、鏡子にとっても大変だったろう。今なら離婚をしていてもおかしくない。明治という時代と鏡子の人柄が漱石と添い遂げる結果になったろうと思う。漱石臨終の場面では涙があふれそうになった。

  • 2017/03/09
    よくこんなにいろんなことを覚えているなぁ。
    どうしようもない夫だったんだろうけれど、それでも愛していたんだろう。

  • 妻が語る夏目漱石。
    いやー面白かった。
    家族に暴力を振るうこともあったというのはお孫さんの話で知っていたのだけど、その原因である神経症がひどい時期の話は壮絶。
    結婚から数年の貧しい時期も想像以上のものだった。
    しかしそんな辛い時期も含めて、どこかユーモラスに語られていて、そこにはやはり妻と漱石の間に他では代わりにならない大切な繋がりがあるからではないか、と思うのは少々夢を見過ぎだろうか。
    妻も「ヒステリーでソクラテスの妻と並べられるほどの悪妻」という話も聞いているけれど、ここで語られているものが胸を打つことに変わりはない。

  • 漱石の理不尽な言動の数々がこれでもかというほど次々と出てきます。
    時代も時代だし、妻の鏡子はとんでもなく大変だっただろう。
    それでも、決めた相手にはとことん食らいつく精神が良い。
    何かあるとすぐ離婚する夫婦、私は時折疑問だった。
    最近の話題でいえば高島礼子には離婚してほしくなかった。
    そんな一般論で収まる女性じゃないと思っていたからだ。
    でも離婚して、あぁ彼女は普通の女だったんだと思った。
    当然それが悪いというわけでもなく、
    勿論そんなのは本人達次第でもあるわけだけど、
    例えば苦しくて自殺するとかしか逃げ道がない場合以外は、
    やはり決めた結婚相手に食らいつくくらいの覚悟がほしい。
    その気概を鏡子は持っていた。
    他の女性じゃ決してつとまらなかっただろう。
    だからこそこの2人の関係が最強に思える。

  • この本が世に出た後、悪妻なる評判が立ったらしいが全くもって理解出来ない。何が問題なんだろうか?漱石という神格への侮辱と受け取られたのか、女性が何を言うみたいな時代の風潮のせいなのか、今読めば夫を愛する妻の素朴な回想記としか読めないんですが。
    おそらく漱石の病はその時の当事者にとっては悪夢だったのではないかと推察しますが、それをも包み込む優しさに溢れた良い本です、はい。

  • 漱石の、『道草』や『思い出すことなど』とあわせて読むと、漱石と鏡子の物の見方考え方の違いが分かっておもしろい。

    一概には言えないけど、これが男女の思考の差なのかな、と。

    世間では、鏡子と漱石の夫婦関係について、どちらかを悪者にするような考察も多々あるが、このふたりの在り方は理論で片づけられるものじゃないというのが本当だろう。

    漱石の人間らしい部分を覗くことができる一冊。
    ほのぼのしたところもあっておもしろい。

  • 強烈な個性の漱石と渡りあう鏡子夫人の生き方が印象的だ。漱石の家族への暴力(DV)に対して、「病気なら仕方がない。離婚せずにつきあっていこう」と覚悟を決めてからの距離の取り方が見事だ。

    『行人』執筆時の神経衰弱ぶりは実際にひどかったらしい。作中でも一郎が妻について「一度打っても落ち着いている。二度打っても落ち着いている。三度目には抵抗するだろうと思ったが、矢っ張り逆らわない。僕が打てば打つほど向はレデーらしくなる。そのために僕は益無頼漢扱いにされなくては済まなくなる」と書いている。夫人の対応の仕方はおそらくこの通りだったろう。

    漱石を崇拝してやまない門下生の夫婦への干渉は目に余る。とはいえ没後10年が経っての思い出語りのせいか、誰を特に悪く言うでもないところがあっぱれだ。こういう夫人のさっぱりした気性を漱石も愛したのだろう。

    悪妻と言われた母を弁護する夏目伸六のあとがきも印象深かった。伝説の中で偉人化される漱石の、欠点も含めた等身大の姿を後世に残した娘婿松岡譲の労作だと思う。



    作成日時 2008年02月23日 10:59

  • この本は、高校1年生の頃、母親が読んでいた本を、横で一緒に目で追っていたら、興味がわき…。
    気付いたら、私が読んでいました!!
    そこから、不思議な漱石に興味がわいたのです。
    昔の話し言葉なので、難しい日本語も多いですが、おもしろいです♪

  • 漱石の妻鏡子の思い出語りを、娘婿にあたる松岡譲が記した書。
    一般に、写真の影響もあってか神経衰弱を患った気難しい文豪(一面、落語や洒落を好む)というイメージが強い漱石だが、本書では一番身近にあった鏡子の目を通し、むしろ愛嬌とユーモアを持ち合わせた愛すべき人物として描かれている。
    夫婦の会話も多かったように思うし、この時代には珍しく折ふし妻の意見を取り入れているあたり、意外なくらい人当たりの柔らかい人物だったようだ。
    (もちろん、神経衰弱の症状の出ているときは壮絶。)
    学生時代に一通り読んだ漱石の作品も半ば忘れかけてしまっているので、これを機にまた読み返したい。

  • これほど愛されている作家は珍しいと思う~末っ子として生まれて養子に出されたこと。夏目籍に戻ったが実家とは疎遠で,東京帝国大学を卒業後,大学院に進むが,徴兵逃れのため北海道に送籍。27歳で東京高等師範学校の教授,29で辞職して伊予松山中学校教員として1年。第五高等学校教授として熊本。34歳で二年間の英国留学(学資1800/年)。37歳で帰国後,千駄木に住み,第一高等学校教授から帝大講師。36歳から神経衰弱状態となる。このころから雑誌に寄稿するようになり,39歳で「猫」第一回。文京区西片町に転居。41歳で朝日新聞社入社,早稲田に転居。44歳,胃潰瘍で内幸町に入院し,転地療養のために修善寺菊屋本店で8月大吐血。47歳,神経衰弱。50歳,糖尿病に診断を受け,11月に大内出血,12月9日午後6時50分,臨終~松岡譲は漱石の長女・筆子の夫で,解説を書いている半藤末利子はその娘。勿論,鏡子さんは妻です。修善寺で大吐血して大騒ぎになったのは知っていて…間もなく亡くなったと勘違いしていたが,修善寺が44歳の時,往生したのが50歳。鏡子が解剖を希望して,追跡症というのも糖尿病が根本にあったかも知れないと思われる。胃の痛みも18の頃に煩った盲腸炎が原因で虫状突起が腹膜と癒着して起きたものかも知れない。奥さんは10歳年下だった。笑わせる夫婦だねぇ

  • 鏡子の物言いがとてもおもしろくて最後まで読めた。
    強い愛情とおかしみを感じたし、
    朝寝坊以外になんで悪妻なのか全然わかんなかったんだけど、
    結婚初期はけっこうヒステリー起こしてたと知って少し納得。
    でもそれ以上のことに漱石はなってるわけだからな。

    これは後でウィキペディアで見たんだけど、
    鏡子の本名がキヨで、
    これは坊ちゃんの下女と同じ名前なんだよね。
    坊ちゃんはどう考えても「清サイコー」という話だったし、
    漱石は愛妻家だったんだな。
    まあ子ども多いしな。

  • この作品は、いわば覚え書き的、生活面での家計簿の様なものと捉えられるのではないだろうか。
    自分の気持ちを掘り下げていく様なことは最初から意図されておらず、淡々とした記述の中に、人と人の関係や、感情を垣間見ることができる。
    また、明治の女性の語彙や感じ方を知るうえではとても興味深かった。

  • 私は最近、物事を両面から考えるように心がけている。たとえば、これも夫漱石が亡くなった後で、思い出すのは辛かろう、自分が悪妻と呼ばれてもありのままの漱石の姿を残したいなどなど。
    それを考慮に入れても反吐が出る本。評判にたがわない、ものすごい悪妻ぶり。
    それは早起きしないとかそんな小さなことではなく、尊敬すべき文豪を虫けらでも観察するようにつづる。

    そして、揚げ屋の親戚のくせに、自分は山の手育ちだのなんだの、それと出会う人の肩書の描写がすごい。見栄っ張り女。漱石の親戚が漱石に金銭的に頼ってくるのを悪く言うが、後半で自分の実家にも仕送りをさせてたってことがわかるし、、、漱石の姉なんか、人の気持ちがわからない人だからとか書いてあって、お前だよ!って思ってしまった。。。何につけても金額の話がコマコマと述べられて、守銭奴のようだ。漱石が世話をしてやった見返りが「腐りかけの安い果物かご」って、お前は何にもしてねーよ。優しいのは漱石だよ!って言いたい。

    漱石が危篤に瀕している時の日記も、しょっぱなからなぜか花の名前の羅列。意味がわからない。誰がお土産に何を持ってきただのどうでもよくない?

    しかも「いい按排」という言葉ばかりが耳触りなほどに繰り返されて、今でいう「いい感じ」の連発。教養が低いのではないかと疑う言葉使い。コギャルの言い訳を聞くようでうんざりする。

    そして漱石の病状が「気持ち悪い」ということで、別室にいて、夜の付き添いも友人たち。気持ち悪いって。。。そして、みんなが私の気持ちをわかってくれないと連発。本を読みたいが自分で持つことのできない漱石に、本を広げて見せるのも友人。お前は何をした?

    お金がないと終始言いまくるわりには、女中は二人。ご飯を作るのも女中。子供の朝ごはんもパンを置いておいて、子供らが砂糖をかけて勝手に食べる。漱石が脳の病で女中を追い出してしまった後、台所が困るので、長女が。。。ってお前は?さらに、書斎の前に降り積もる埃を見かねて漱石が掃除するのを見て笑う。。。ってお前は?

    私は男女平等主義だ。だからこそ、働かず、養われる身分なら性別を問わず、以上のことはすべきことではないだろうか?と思っている。

    この人、本当に何もしてない。そして、自分の鬱病には触れず。。。都合よすぎる本。

    漱石は作品は好きだが、ロンドンでこもりっぱなしで外に出れなかったって聞きかじっていて、弱い人なのかな?位なイメージだったけど、繊細で情に厚く純粋で優しい方だったってことはわかった。見栄坊な妻にたいして、自分をしたって面会を求める相手に気安くあったり、人に親切にして裏切られてショックを受けたりとても純粋な人。それがわかるので、かろうじて★2つ。ある日、自殺したいという人が面会に来て、なんとかしてあげたいと悩む漱石に対し、「それほど死にたけりゃ、勝手にさっさと死ねばいい」という悪妻。人間の出来がどれほど違うのか。。。意に染まなければ、高圧的で失礼な体制に、きっちり自分の意見を述べるところも素敵。全然、弱い人じゃなかった。本当に、ただ繊細な人だったんだと思う。

    漱石が好きなだけに、読まなければよかった。気の毒になった。脳の病の時に、離婚したいといった漱石に何度も断る悪妻。本当はきっちりしたい漱石を追い詰めたのは、だらしないお前じゃないのか?それに、本当に離婚したかったのでは?と思ってしまう気持ちもゼロでない。妻、息子、長女の婿(この本の筆記者)、すべてが漱石のふんどしですもうをとる本を出しており、あげくのはてに孫は漫画評論家。。。。がっかりすぎる。。。

  •  荷風はこの本が出たのを聞いて怒ったと『斷膓亭日乘』に記しているが、後世の凡人たる我々にしてみれば、じつに面白い。
     鏡子夫人はしばしば悪妻の代表みたいにいわれるが、それは誤解であろう。それどころか、漱石は病気だと掛かりつけの医師から聞くと、病気なら私が直してやると意を決して、以後ひるむことなく立ち向かったところなど立派というしかない。若い頃はともかくも、漱石と暮らすうちに随分と成長した人なのだと思う。この成長という点が森鷗外の後妻と決定的に違うところである。

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