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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784167214258
みんなの感想まとめ
老いと過去の出来事が交錯するミステリーの短編集で、登場人物たちが晩年を迎え、自らの人生を振り返る姿が描かれています。特に、無実の罪を着せられた役員の不可解な行動には、深い哀しみが隠されており、読者はそ...
感想・レビュー・書評
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老後がテーマの短編集。いい。実にいい。
戦前戦後の思い出と二十一世紀の今を軽やかに行き来して人生の哀歓をさりげなく綴っている。佐野洋は七十過ぎていっそう小説が上手くなったのではないだろうか。どれも推理小説という形式をとる必然性がある。円熟した筆致にいつまでもひたっていたくなる。五十年近く良質な推理小説を量産してきた佐野洋に改めて敬意を。文春文庫の装画は唐仁原教久。
「墓への土産」オール讀物2001年7月号
私は幼児失踪事件で知人のアリバイを証言したが、十年後にまた問い正される。彼とは旧制高校以来の付き合いだったが……。
主人公が事件の傍観者でしかないのがいい味を出している。
「忘れ得ぬ人」オール讀物2001年11月号
雑誌のインタビューで忘れ得ぬ人は誰かと聞かれた重役は、戦後すぐの米兵の犯罪を語りだす……。
最後の一撃はもっと効果的にできたのではないだろうか。
「孤独な香水」オール讀物2002年3月号
一人暮しの老人がゴミ捨て場の提供と見張りを引き受けてくれた。最初は感謝していた隣人たちだが……。
親切な人がじわじわと厄介に見えてくる過程が上手い。よくできた構成。題名の勝利。〈社会派編〉傑作選に入れたい。
「名前は記号」オール讀物2002年7月号
殺人未遂事件の犯人が私の名前を名乗っているという。心当りはないが……。うーむ、これでいいのか。記号にされた方はたまったもんじゃないぞ。
「楽しい瞬間」オール讀物2002年11月号
痴漢の冤罪をかけられた老人は謎の死を遂げた……。
なにかモヤモヤする。佐野洋は平服での葬式というシチュエーションをこそ書きたかったのではないか。
「痛む胸」オール讀物2003年3月号
内縁の夫を殺した罪で逮捕された女。なぜか満足げだが……。
この短編の魅力は一にも二にも被疑者・沼所珠美のどこかとぼけたようなおかしな個性に尽きる。こうした変な感じは佐野洋には珍しい。
「門札の血」オール讀物2003年7月号
同窓会での会話で、旧制中学の門札がアメリカの民間人の手に渡っていたことがわかる。一体なぜ?しかもその門札には血がこびりついていた……。
謎が非常に魅力的。少しあっけなさすぎる結末をもうひとひねりすれば大傑作に化けたのではないか。それでも秀作。旧制高校の門札が実際に盗まれたことがあるとは初めて知った。
「原爆を止めた男」オール讀物2003年11月号
ふとしたきっかけで戦後すぐ病死した先輩を思い出す。彼は自分は原爆を止めた男なのだと主張していた……。
事件そのものは単純だけれども人間模様がしみじみした余韻を残す。これはいい小説だ。〈余情編〉傑作選に入れたい。
「威張る相手」2004年3月号
珍しい名字の老人が殺された。元刑事は偶然床屋で同じ名字を名乗る声を聞く……。
なかなかの出来。「定年後威張る相手がいなくなり」という川柳が秀逸。日本語お小言コーナーは拡大版。「お上着」はおかしい「お召し物」か「上着」だ、「預からせていただいて宜しいでしょうか?」は「お預かりいたします」と言うべきだ、「お名前を頂戴できませんでしょうか?」には「名前を上げるわけにはいかないよ」と返したい、というお小言三連発はあまりのくどさに笑ってしまった。「マナーモード」は「振動状態」と言いたい、と。うーん。
「血判の誓い」2004年7月号
若い頃、人を殺そうとしていた夜を思い出した……。
この短編集の中では平板な出来。
解説は阿部達二。過去のエッセイからの引用はいいが「痛む胸」のネタバレをしてしまっている。
「墓への土産」B
「忘れ得ぬ人」C+
「孤独な香水」A
「名前は記号」C+
「楽しい瞬間」C
「痛む胸」B+
「門札の血」B+
「原爆を止めた男」A
「威張る相手」B
「血判の誓い」C
阿部達二の解説 C
『事件の年輪』B+詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
電車の中で痴漢扱いされた上場企業の役員は、無実を証明しようという第三者の申し出を断わる。その不可解な行動の背後には老境にかかった男の哀しい事情があった…。晩年を迎え、自らの人生を振り返る男たちの前にかつての出来事が時空を超え、謎となって甦る。軽妙な筆致で老いを描き切るミステリー十話。
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