- Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167223014
作品紹介・あらすじ
雪に閉ざされた山村での暮らし。そこで出会う幽明の世界。圧倒的力量で話題をさらった芥川賞受賞作「月山」の他「天沼」「初真桑」「鴎」「光陰」「かての花」「天上の眺め」収録。(小島信夫)
感想・レビュー・書評
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なんとも静かで心にずしーんと響く。非常にビジュアル的で尚かつ心情的、するりと話しの中にひきこまれていって心鷲掴みされてしまう。山形の山は深い。再読。
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再読。
初読の際は「幽明の世界」というワードに惹かれ、内容をもっと幻想寄りだと勘違いしていた為に普通だな…等と感じていた。改めて読むと描かれる情景の美しさ、映像的な表現に長けた文章に気付きその良さを知る -
久しぶりに再読。独特の世界観が芥川賞にふさわしい(?)。山形県民にとって月山・鳥海山には特別の想いがあり、近年、それぞれの山に登り、駆けため、実感を込めてその自然描写を味わえた。「月山」の長い冬から一気に花咲く春を迎えるワクワク感に、どこか寂しさを伴うのは加齢のせいか。。。
「それはすこしも変わらぬ月山でありながら、この世のあかしのように対峙していたあの鳥海山が、もはやまったく見えぬというより、なきがごとき気すらする別世界をなしているということかもしれません(p24)」 -
2017/11/06 9:30:52
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雪に閉ざされた山間の村の破れ寺。時折現れる心を奪われる表現にいつまでも浸っていたい美しさを感じる。
[more]<blockquote>P33 ふと気がつくと、黄菊の群れが雪に折れ、雪をかぶってまだ花を咲かせているのです。と言っても、セロファン菊とかパリパリ菊とかいうのだそうで、あの深々とした気品を漂わすいわゆる菊ではありません。【中略】ひとりこのセロファン菊がこうしてまだ咲き残っているのです。しかもその色が雪に映え、みずからは埋もれるとも知らず雪の中へと眠って行くような、あるいはそうしたセロファン菊の夢見た夢の中の雪に、わたしがいるような感動を覚えずに入られませんでした。
P49 よんどの時は逆らわず、吹きも仲間だと思うて、吹き山さ埋もれとるつもりだったどものう」吹きも仲間?まるでわたしの感じたようなことを言うと思いながら、「しかしそんなことをしたら眠ってそのまま往ってしまうんじゃないかな」
P139 「ものを運ぶと書いて、ウン(運)とよむ、とのう」
P174 庫裏の台所の炉端で終日割り箸を割っている人のやがては春になるという言葉が、わたしにはなにか美しい大きな約束を信じる者の下界の声のように思えたばかりではありません。やがては春になるというそのことによって、美しい大きな約束のあることを信ぜよという天上の声のように思えるのです。
P184 と、ふたたび会わずに終わりながら、ふとその言葉を思い出させる人のように言うのです。
P198 生だいうても死のもどき、だまし、死だいうても生のもどき、だましなんでねえでろか。
P202 「これじゃ長生きするよ」とはよく人のいうところだが、長生きするとはすべてが遅れることで、長生きを楽しむために、われわれはじつにひたすら遅れることをこいねがい、むしろ喜ばねばならぬことが、わたしにもわかって来た。
P305 それにしても、ひとりこの砂原に点々とある、薄赤い花をつけた木はなんであろう。ひょっとすると、すぐ枝を伸ばし、葉をつけ、花を咲かせるそのために、むしろ折ってもらいたいとすら言われたかての木ではないだろうか。もしそうなら糧にもならぬかての花と笑われていたが、すべての木も草も枯れ果てたとき、人が最後の糧にした花の木だったのではないだろうか。</blockquote> -
月山はずいぶん前に読んだ小説だ。中学生ぐらいか。今回、読み直して見て、ほとんど内容を覚えてなかった。
東北弁で綴ってあるので、意味はとりにくいが、何となく不思議な世界だ。
極限の世界では、ちょっとした日常が、非日常であり。
とにかく年寄りばかりの村である。想像してみてください。 -
私には難解な内容でした。書き方は落ち着いていて、表現も伸びやかで心地よかったのですが、日本画で書かれた風景のような淡白さが辛くなっている自分がいました。
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月山は死の象徴、鳥海山は生の象徴