山河寂寥 下―ある女官の生涯 文春文庫 す 1-28

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167224295

感想・レビュー・書評

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  • 平安初期、偏見ではありますがどうも埋もれがちなこの時代だけど見事に埋められた杉本先生、やっぱり素晴らしいなと…読んでいて本当に飽きない。
    藤原淑子という1人の女性を「天皇の養母」の肩書きを持つまでにしたのは、彼女を取り巻く宮廷や権力はもちろんのこと、彼女に流れる藤原の血が疼くからなのだと。初心な女童が「女官 藤原淑子」に覚醒する瞬間が印象的でした。読み応えがすごい。

  • 下巻では陽成帝〜醍醐帝時代の人生の終わりまでを描いています。陽成帝や周りの人物設定など、今まで読んだ中でこのお話が一番しっくりきました。いきなり高齢の光孝帝に遡ったのには、主人公の関わりがあった解釈があったのですね。上巻に比べ下巻はドラマチックさがなく、歴史書的な感じではありましたが、政変の移り変わりがとてもわかりやすかった。主人公は概ね幸せな人生を送ったと思いますが、悔いはないと言いつつ最後は何を思ったのか気になりました。上下巻の長編でとても読み応えはありました。

  • 藤原淑子は藤原冬嗣の長男長良の妾腹の子、藤原良房も人格を認める親に愛される淑子は、聡明に育ち道康皇太子の妃である明子に仕える。異腹の兄基経と二人三脚で藤原北家のかじ取りをするが、文徳帝の毒殺で目的を達成する。基経は良房死後に「少し良い人」になりかけるが、現実の厳しさに挫折(?)して再び権力を行使する事にまい進する。
    班子内親王を妻として一親王としてひっそり暮らす時康親王が皇統を得ると、基経の次の候補に遠慮して皇子たちを臣籍降下させる下りも面白い。
    応天門の変における伴大納言の思惑と期待はずれが、歴史の謎になっていたんですね
    中だるみはあるものの、平安時代・・・知っているようで知らない時代の「穴」が少し埋まりました
    勉強していてよかった、さもないとこの小説の人間関係は複雑すぎます!

  • 基経の時代。奥山景布子「時平の桜、道真の梅」と前半部分は被るが、あの劇的なオープニングは虚構だったと判明。それにあっちは淑子が登場せず、かつ時平目線だから読み比べが面白い。宇多帝の道真や政局への傾倒具合も温度差があるし(「昌泰の変」時の対応とか)、時平の距離感も違う。更に基経の次男で時平の弟の仲平の扱いが全然違う。

    ところで、「筑波嶺の」を贈られた宇多帝の妹・綏子内親王、なぜに作中では「簡子(ふみこ)」とされているんでしょうかね?

  • 上巻に記載

  • 女官の淑子さんが養子の定省を天皇に仕立てるあたりはやり手さがうかがえる。
    仕事のできる人だったんだな。

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著者プロフィール

杉本苑子

大正十四(一九二五)年、東京に生まれる。昭和二十四年、文化学院文科を卒業。昭和二十七年より吉川英治に師事する。昭和三十八年、『孤愁の岸』で第四十八回直木賞を受賞。昭和五十三年『滝沢馬琴』で第十二回吉川英治文学賞、昭和六十一年『穢土荘厳』で第二十五回女流文学賞を受賞。平成十四年、菊池寛賞を受賞、文化勲章を受勲。そのほかの著書に『埋み火』『散華』『悲華水滸伝』などがある。平成二十九(二〇一七)年没。

「2021年 『竹ノ御所鞠子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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