- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167237042
感想・レビュー・書評
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女優岸田今日子(陰湿=褒め言葉だと思う)の旅行エッセイ。
「ホモよ」と一瞬で切り返す残忍な印象。(褒め言葉)
『もうひとりのわたし』の元ネタ体験もちら、と書かれている。
パリの友人の家に無邪気に泊まる(借りる)描写が
女優ぽくなくて面白い。
相当に学のある、もしくはハイソな時代の女優の一人。
だって父親が岸田國士だもの。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
岸田今日子氏の旅にまつわるエッセイ集。
読んでいると頭の中に岸田さんの声が響いてくる。
文章のリズムも、彼女の話し方がそこに映っているようで、いながらにして1人芝居を楽しんだかのようだった。 -
(2007.07.21読了)(2003.09.20購入)
副題「続・外国遠足日記帖」
副題が「続・外国遠足日記帖」ですので、岸田さんの海外旅行記です。仕事で行ったところ、観光で行ったところ、仕事のついでに観光もしてきたところ、さまざまです。
スペイン旅行記は、仲好し三人組の吉行和子さん、冨士真奈美さんとの分担執筆です。
行った国は、ギリシャ、フランス、スペイン、デンマーク、オーストリア、アメリカです。アテネフランセでフランス語を勉強していますので、フランスが好きなようで、パリへは何度も行っています。フランス語もだいぶ分かるようです。
岸田さんは、芝居や音楽のほかに絵を見るのも好きなようです。
●ルール違反(164頁)
デンマークで人魚姫の銅像の傍で朗読
「撮影が始まって、じっとしたまま朗読していたら、ストッキングの上からに、三ヵ所刺されて、少なくとも蚊が混じっていることは判明した。人が追い払ったりできないときに刺すのはルール違反だ。」
●ウィーンになぜ行きたかったのか(184頁)
「ウィーンでは、町の雑音までが音楽的なんだそうだ」という伝説を確かめてみたかったのか。昔見た映画「会議は踊る」や「第三の男」の、あの街の空気を肌で感じてみたかったのか。音に聞く舞踏会や、本場のオペラハウスの華やぎに憧れたのか。多分その全部が混じり合って、それを何十年かの歳月が醗酵させたに違いない。とにかくウィーンというところへ行って、オペレッタを聴き、クリムトやエゴン・シーレの絵を見る、そう、その街で見るというのが、かなり永い間の望みだった。
●ブリューゲルの部屋(192頁)
ウィーン美術史美術館にブリューゲルの部屋があります。
ここにあるのは「ほんもの」ばかりだから安心して見られるわけだ。「バベルの塔」の蜂の巣みたいな内側や、村人たちのあの大騒ぎ、狩人のいる冬景色を、ゆっくり眺めた。本当に、なんて楽しんで描いている人だろう。
●ベルヴェデーレ美術館(195頁)
クリムトとエゴン・シーレ、本当にその二人だけのためのような小さな美術館。
クリムトの作品のいくつかは、思っていたよりずっと大きくて、人物も等身大以上ある。この金ぴかは、ここまで来ればもう、許すしかないと言いたい。半眼の美しい女の人の上に、そしてそのおこぼれが、私の上にまで降り注ぐ金粉の中で「退廃ってものを絵にするとこうなるんだろうか」と思ってうっとりした。
始めて日本でシーレの展覧会を見たときのショックを思い出す。痛々しくて、慰めもないという感じ。
●モローの美術館(212頁)
「ヴィラ・ボルゲーズ」という思いがけない好きな絵があった。ローマの館の庭を描いたらしい風景は、一個の宝石も使われていない。風の吹きぬける優しい緑の中に、どっか神秘的な感じもあって、ちょっと墨絵を意識しているのかなと思わせる。
●ドナルド・キーンさん(244頁)
「三島も安部もいなくなりましたね」とキーンさんはおっしゃった。わたしは、安部さんが亡くなった翌日、お宅に伺って、そのお顔に触った話をした。死顔があんまり滑らかできれいだったのでそういったら真知夫人が「触ってあげて」とおっしゃったのだ。「公房は、ハンサムじゃないけど肌だけはきれいだったのよ」ともおっしゃった。
☆読んだ本
「一人乗り紙ひこうき」岸田今日子著、角川文庫、1983.09.10
「ラストシーン」岸田今日子著、角川文庫、1989.01.20
「外国遠足日記帖」岸田今日子著、文春文庫、1994.11.10
「大人にしてあげた小さなお話」岸田今日子著、大和書房、2000.07.05
著者 岸田 今日子
1930年4月29日 東京生まれ
自由学園高校卒業
文学座付属演劇研究所、アテネフランセを経て文学座に入る
1950年 『キティ颱風』で初舞台
2006年12月17日 脳腫瘍による呼吸不全のため死去、享年76歳
(2007年9月2日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
ギリシャでは映画を撮り、フランスでは『源氏物語』を朗読、アメリカでは芝居を巡演、そしてスペインではインク壺を探しまわる。その間、怪しい男につきまとわれたり、タクシー運転手に言い寄られたり、個性派女優の旅はハプニングの連続。親友、吉行和子氏、冨士真奈美氏と交互に書いた面白旅日記も併録。