- Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167239091
感想・レビュー・書評
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ミッドウェイ海戦の実相に迫るノンフィクション。文庫版で3巻。
といっても大所高所からの戦略論、戦術論だったり運命の5分みたいな生き残った高級指揮官による振り返りではない。
まずこの戦いで何人が日米双方で死んだのか?について約XX名ではなく実数把握にとことんこだわった調査から始まる。そして日本だけでなく米軍側の犠牲者も全ての戦死者の名前、生年月日、入隊日などを追跡し、可能な限り現存する肉親や関係者にどんな人だったのか?そして大切な人(父親や子供のケースが多い)を戦争で失ったことで残された家族の戦後の生活について丹念にこれでもかと取材していく労作。特に残された母親や妻(多くは新婚)が戦後の苦闘について描かれており、女性の視点から描いたミッドウェイ海戦とはなんだったのか?という角度にもなっている。
沖縄から徴兵や志願して乗り組み戦死した兵士の親や兄弟がそのわずか3年後の沖縄戦でたどった生々しく過酷な体験、よく知られている四空母ではなく海戦前夜に攻撃された輸送船でなくなた人など表舞台の歴史では書き残されてない兵士たちとその肉親の記録がこれでもかと続く。筆者の取材の執念とそして異様な筆致力があるからこそ最後まで読めたが内容はとにかく重い。
軍都である呉が隣の県だからだろうか、自分の出身の山口県から出征して戦死した兵士もたくさん出てきて出身地などが出てくると思わずグーグルアースで今そこがどうなってるか?の確認作業をしながら読んでしまった。
天童荒太の「悼む人」という作品がある。「人は肉体的に死ぬときと、忘れ去れれて死ぬ時の二度死ぬ」というモチーフで主人公が事件などで亡くなった人の場所に訪れて取材をしそして祈りを捧げる小説がある。
この作品は小説ではなくノンフィクションであるが、まさに著者による「悼むための巡礼の作品」のような趣を持っている。
これだけの作品が絶版になってるのが勿体無い。なんとか復刊して欲しいものだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とてつもない労作。大岡昇平のレイテ戦記と方向は逆だが、両方とも必読と言えよう
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2010.08.13読了