狼がやってきた日 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (1982年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784167240035

みんなの感想まとめ

経済の急激な減速と物価上昇を引き起こした1973年の石油危機を背景に、当時の日本社会の混乱と人々の心理を描いたノンフィクション作品です。著者は、マスコミの報道による情報不足が引き起こしたパニック行動、...

感想・レビュー・書評

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  • 昭和に起きた石油危機について書かれた、渾身のルポルタージュ。

    素晴らしく濃密な本だった。
    40年以上前に書かれた本だが、今読んでも色あせない多くの学びがある。

    まず驚いたのは、現在の社会状況と重なる部分が非常に多いこと。
    人間の行動なんて、時代や社会が変わっても、そう変わるものではないのかもしれない。

    特に大衆がパニックに陥る心理については、多くの共通点があるように思う。

    オイルショック下では、多くの企業や役人が、大衆やマスコミに吊るし上げられた。
    だが後の検証で、そのほとんどは的外れな批判であることが分かっている。

    結局のところ、「諸悪の根源」という手頃な生贄を欲していただけ、というのが真実だろう。
    これは大衆の普遍的な心理であることを認識し、大いに反省するべきだ。


    また、政治家や官僚、石油会社の人たちの奮闘には心を打たれた。

    国が不安定になると、とかく政治や役人は叩かれがちだ。
    しかしオイルショックという前例のない危機に対して、国民の生活を守るために、身を粉にして働いた人たちが大勢いた事は事実だ。
    何が正解かも分からず、準備する時間もなく、途方もないプレッシャーを感じながら。

    そういった困難な状況の中で、何とかアラブ諸国とのタフな交渉を乗り切った点は、評価に値すると思う。

    確かに日本側の対応は、100点満点とは言えない。
    また、多くの問題を残してしまったことも事実だ。

    しかしそれでも、この時に彼らが最低限「対応を間違えなかった」から、その後も豊かな生活が維持できている。
    その点について、我々は少なくとも敬意を持つべきではないだろうか。

    間違っても、ストレス発散のために、ロクに調べもせず「政治が悪い」と叩いていい存在ではないはずだ。


    自分が本書を手に取ったのは、今起きているアメリカ・イラン問題について学ぶためだ。
    過去を振り返ることは、未来を知るための貴重な財産になる。

    全体的な印象としては、とても丁寧に、公平に取材されていると感じた。
    単純に「国民は愚かだ」「マスコミが暴走した」で片付けずに、その先を見つめようとする目は、とても真摯なものだと思う。

    また本書には、慧眼とも言うべき、鋭い指摘がいくつも残っている。

    ・日本人は、まるで資源を持たないのに、エネルギーに関する関心が薄すぎる。
    ・アメリカが石油備蓄に力を入れるようになれば、いずれエネルギー問題は再びやってくる。
    ・省エネルギー化や代替エネルギーの開発に、もっと本腰を入れるべきではないか?

    これが40年以上前に書かれたものだということには、驚くばかりだ。

    「喉元過ぎれば熱さを忘れる」に陥らないために、本書のようなルポルタージュを読むことは、大いに役に立つだろう。

  • この本は、「マッハの恐怖」などのノンフィクション作品で知られる柳田邦男氏が書いた、昭和48年に起きた石油危機に関するノンフィクション作品である。

    そもそも石油危機とは、1973年10月に発生した第4次中東戦争を機に、アラブ諸国の産油国を中心に石油の減産を決定したことで発生したことで生じた急激な経済減速及び物価上昇に伴う社会的混乱のことを指す
    日本国内ではトイレットペーパー購入に並ぶ様子などが有名である

    特に、なぜ人々はあのようなパニックに近いようにトイレットペーパーを購入したのか、という点で非常に興味深い話であった
    そもそも「行列ができるから並ぶ」「まだ家にあるけど念のために買う」といった状況なのだが、情報が少ない(または偏っている)ことが問題のひとつであると思う
    今のようなインターネット等の情報収集手段はなく、マスコミ頼みであった当時において、マスコミは適正在庫を持つことすら非難し、その在庫が適正であることは報道しないというマスコミのいい加減さは今以上ではないか

    また田中角栄と言えば日本改造計画など大宰相のように思っていたが、国民の顔色ばかりをうかがっていて、工業用石油価格よりも民生用石油価格を抑える等の愚策(工業用石油価格を上げたので国民負担は結果的には増える)を行うなど若干イメージが変わった
    その一方、縁の下の力持ち風に活躍する官僚は格好良く書かれ過ぎのような気もするが、こういった本来は表にでない官僚が日頃がんばっているは本当だろう
    ただ惜しむらくはこのような石油危機の経験というのは生かされているのか
    新型インフルエンザのときのマスク騒動や、東日本大震災のときの騒動を見れば、たしかに当時より情報量が増えたせいか冷静な対応も多かったように思われるが、騒動はおきたわけで、人間の業の深さというものを感じずにはいられない

    ノンフィクションといえどあくまで著者が各方面に取材し多角的情報を判断して書いたものなのですべて正確とは思わないが、ある程度雰囲気を掴むことには有用であったと思う
    昔の本なので、1ページの文字数が多い上、文字が小さくてなかなか読むのは大変であった

    読書状況 読書時間120分、ページ数317ページ

    【参考図書等】
    ・「支店長はなぜ死んだのか」(上前淳一郎)

  • (1985.02.02読了)(1984.08.05購入)
    内容紹介 amazon
    48年のオイルショックとその後の混乱はいかにして起き、その中で日本の官僚・ビジネスマンはどう行動したか?豊富な資料と証言をもとにえがく石油危機の全貌!

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著者プロフィール

講談社ノンフィクション賞受賞作『ガン回廊の朝』(講談社文庫)

「2017年 『人の心に贈り物を残していく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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