死の記憶 (文春文庫 ク-6-8)

  • 文藝春秋 (1999年3月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784167254421

みんなの感想まとめ

テーマは、過去の悲劇が現在に与える影響と、その記憶を掘り起こすことの難しさです。主人公スティーヴは、9歳の時に家族を失い、その後35年間、事件を心の奥に封じ込めて生きてきました。しかし、女性レベッカと...

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりにクックの作品「鹿の死んだ夜」を読み、クックの面白さを思い出し、続けて、この「死の記憶」を読み始めたが、ほとんど一気読みをしてしまった。
    「鹿の死んだ夜」はクックのデビュー作であり、私が読み慣れていたクックの作品とは少しテイストが異なった(それでも面白かった)が、この「死の記憶」は、私は読み慣れている私の好きなテイストのクックの作品そのものであった。
    クックの話は、暗く、悲劇的な話の印象が強い。本作品も、主人公の語り口は暗く、そして、主人公の子供時代と大人になってから、悲劇的な事件に主人公は巻き込まれる。その中に謎を作って、徐々に明らかにしていくのがクックの作品の特徴だと思う。本作品の終わり方は、少し深みがあるが、それでも、同じような展開をたどった。
    ミステリーなので、ストーリーを明かすわけにはいかないまま感想を書いているので、上記で私が書いていることは、おそらく、訳が分からないとは思う。それでも構わない。言いたかったのは、本作品は、クックの他の作品と同様に、一気読みの面白さだったということだけである。

  • 秋雨が煙る日、父は、母と兄と姉を銃で撃ち、失踪した。

    事件が起きた時、スティーブは9歳であった。車の後部座席に座り、二人の大人が前に居て、一人が振り向いて何か話し掛けたことを覚えていた。その時秋の雨は灰色のカーテンのように景色を曇らせて降り続けていた。
    それは父親が彼の家族、母と兄と姉を銃で撃ち、行方がわからなくなった日でもあった。
    父親は金物屋を営み、部品を取り寄せた高価な自転車を一台だけ組み立てて店の隅に飾っておき、
    まれに売れることがあると、また新しい部品を注文しては地下室に持ち込み、ただ憑かれたように黙々と組み立てている。
    そんな単調な日々に、倦み疲れた彼は生活から開放されるために家族を犠牲にしたらしい。

    ごく普通の家庭であった。兄や姉は通過点である思春期の普通の悩みを持ってはいたし、母にはちょっとした過去があった。
    それも承知の上で父は結婚したのであったが、その頃には過去に縛られた母は無気力な中年女性になり
    毎日をただ生きているだけのように送っていた。
    しかし父はそんな生活を維持していくための責任は自覚しているように見えた。
    家族のエピソードは9歳までははっきりと思い出すことが出来た。

    そして結婚して子供も出来た35年後、レベッカという女性の作家が尋ねてくる。
    家族を犠牲にして失踪した父親達の事件を取材しているという。そして、スティーブの中にいつか埋もれていた当時の事実が掘り起こされていく。
    なぜ父は家庭を破壊し犯罪人として逃げ続ける生活のほうを選んだのか。
    次第に普通に見えた家族の姿が鮮明に思い出され、小さな出来事が事件の時に集約されたかように感じられ始める。

    クックはまた過去と現在を構成する時間を、だぶらせ分解する過程で、
    新たな驚くような出来事が隠されていたことを気づかせる。
    暗い暗い影の中に、より暗い真相が見えてくる。最後はクックの世界にはまったまま読み終えてしまう。

    ただ、レベッカは取材を終え、本にして送ってくる。その客観的な姿勢が、なかなか脇役としては薄味でいい。

    記憶シリーズの中ではその痛々しさが際立っている

  •  9歳の時、母と兄姉を射殺され犯人と目された父が失踪したスティーヴ。それから35年後、妻と一人の息子をもうけた彼の前に、取材の申し込みと称しレベッカという女性が現れる。彼女との会話で徐々にスティーヴは事件に対しのめりこんでいき…

     冒頭の雨とスティーヴが警察に保護された描写がとても印象的。
    事件が起こってしまったことに対する虚無感や、まだ現実に対して今一つ理解が追い付いていないスティーヴの雰囲気などがとても巧く描かれていたように思います。

     事件を追いかけてしまう人間の哀しさというものもしっかりと描かれていたと思います。事件を知るためにレベッカと会い続けるスティーヴ。
    しかしそれによって妻とは擦れ違い、ゆっくりとスティーヴは大切なものを失っていきます。その姿が切なかったです。

     事件の真相については『緋色の記憶』『夏草の記憶』といった作品と比べると少し弱いかな、と思いましたが、上記の2作は回想中心の一人語りが多かったのに比べ、この作品はスティーヴとレベッカの会話から真相に迫っていくため会話の場面が多く読みやすく感じました。

    2000年版このミステリーがすごい!海外部門7位

  • 図書館の本

    内容(「BOOK」データベースより)
    時雨の降る午後、9歳のスティーヴは家族を失った。父が母と兄姉を射殺し、そのまま失踪したのだ。あれから35年、事件を顧みることはなかった。しかし、ひとりの女の出現から、薄膜を剥ぐように記憶が次々と甦ってくる。隠されていた記憶が物語る、幸せな家族が崩壊した真相の恐ろしさ。クックしか書きえない、追憶が招く悲劇。

    過去を掘り返すには覚悟がいるのだと、そんな啓示もありそうなラストでした。過去を掘り返さなければ幸せが続いたであろうスティーヴの過去への旅。父親の苦悩が父親になったときにわかる悲しさ。
    生き延びた、と、殺されなかった、では重みが違うのだと見せられた気がします。

    Mortal Memory by Thomas H.Cook

  • ふむ

  • これは!大好きなやつだ。勝手に言ってしまえばこのミステリーがすごい、1999年ノミネート間違いなし。2002年からか、、残念。
    なんか地味かなーと思いつつも飽きさせないし、展開がうまいんか、最後までハラハラドキドキなんである。最後もどうしようもないっていうか、オッサンたちのおかげで皆さん大変だったのに何この爽やかさは、って感じでステキ。
    振り返って、出てくる登場人物がイチイチちょっと異常で、特にジェイミーに至っては人生まさにろくなことがなかったって感じで悲惨だ。
    というわけで男どもはどうしようもないから良いけど、ここで美人のインテリが知ったような口をきいて解説しててムカつくよね、っていうのが作者の言いたいことなんだろう、きっと。まぁロマンチストってのは当たってるけどね。

  • 「家族を殺した男たち」の事例の一つとして作家がインタビューに訪れる。忘れていた子供の頃の記憶、父が母・兄・姉を殺害・逃亡。失われた愛情、妻子と暮らす中年男性、妻への嘘、自分も同じなのか?

    おぼろげだった記憶に調査結果や第三者の話が加わって、だんだんと明確になっていき、過去に現在の状況が重なり、悲劇も重なる。別の結末も匂わせながら、ミステリーの謎解きで終わる。うまいです。

  • 時雨の降る午後、9歳のスティーヴは家族を失った。父が母と兄姉を射殺し、そのまま失踪したのだ。あれから35年、事件を顧みることはなかった。しかし、ひとりの女の出現から、薄膜を剥ぐように記憶が次々と甦ってくる。隠されていた記憶が物語る、幸せな家族が崩壊した真相の恐ろしさ。クックしか書きえない、追憶が招く悲劇。
    原題:Mortal memory
    (1993年)

  • 昔の記憶ってこんなに覚えてるものなのかな。父親が何故家族を殺したか、いろんな可能性とか父親の性格を調べたけど結局そうじゃなかった。
    ローラの事は全く疑わなかったね。
    考えれば考えるほど怖いよ

  • 主人公のスティーヴは幼いころに父親が一家全員を射殺するという事件を経験している。
    その彼が成長し設計事務所に勤めるようになり、妻と長男という家庭を持つ。
    平凡な日常を送っていたある日、父親が家族を殺すケースの事件を取材するためレベッカというライターが訪ねて来る。
    レベッカとの過去をたどるインタビューで色々な事を思い出し彼の心にも変化が現れだす。

    レベッカとのインタビューのことを妻に内緒にしていたため、妻に浮気を疑われ妻は長男を連れて家を出ることになるのだが、途中 車で事故を起こし二人とも死亡してしまう。

    ショックから仕事も辞め、家も売り、逃亡している父親を探す旅が始まる。
    父親に再び会え真実を知ることになる。




    読み進めていくうちに、これはミステリー?という疑問が頭をよぎった。
    インタビューを通じて事件の寸前の家族の行動や父親の心理を考えたり思い出したりし、なぜ父親が家族を射殺したのかをほかの事件とともに解明していくだけの物語のように思えた。
    もう終わってしまった事件であるが、父親は未だ逮捕されていないのだが、それはこの物語に対してあまり意味を成さない感じで描かれている。

    父親に再び会えた主人公が真実を知らされた瞬間、どんでん返し的真実を知る。

  • ◆◆ ベッドでミステリー ◆◆ 第七回
    ・・・ 第七回 「 死の記憶」 ・・・

    トマス・H・クックはプロの作家だ。
    書くものはすべて水準以上、とても緻密な仕上がり。
    でも一足遅れてきたから、マクベインのような知名度はないんだよね。
    というわけで、ひさびさに手応えのある本を読みたいな~、という向きには素晴らしくおすすめだが、いまどきの傷つきたくない(読んだことによって)ミステリーがいい、という読者には向きません。
    だって、どれもこれもとてつもなく怖い
    んだもの。
    そして、打ちのめされる……。
    暴力とか、おばけとかじゃなく、心理的な恐怖ね。
    主人公は、惨殺された一家の生き残り……。
    死んだのは母と姉と父ー。
    父親が殺したのだが、彼はずっと、なぜ?と思いながら生き長らえてきた。
    だって、彼の知っている父親は絶対にそんな人ではなかったからーー。
    これは、何十年後かに、彼がようやく真実に行き当たるまでの物語だが、その真実はさらに呆然となるものなのだ。
    読後感?
    全然良くない。
    クックはなんでもそうだけど、読みおわったらしばらくは、動けない。

    もし、単純に、本を読むことはいいことだ、と思っている人がいるとしたら、その人は本読みではない、といっていいでしょう。
    本を読むと、ときには恐ろしいことが起きるのだから。
    読んでしまったことは忘れられない。

    その怖さを乗り越えた人だけが本を読むのだ。
    もしこの一冊を読んでおきに召しましたらほかのクックの本もどうぞ。

    「夜の記憶」なんか、これよりさらに怖いから。

    2018年03月20日

  • すき

  • 幼いころに、家族を殺して姿をくらました父親。生き残った自分。

    大人になり、父になった主人公にとって、かつての父親が秘めて爆発させたものを今ならもしかして理解できるのかもしれない。そんな風に思いながら、レベッカという魅力的な女性とともに事件の真相を探りだす日々。

    事件という一家の結末があるからこそ、それまでに起こった全ての出来事が意味深で、暗くて、不幸に色付けさる。

    父が父親を演ずるのに捨ててきたであろう”自我”と”ロマン”。
    今まさにそれによって葛藤している主人公。

    家庭の安定の中に生きることで、抑制されてしまうロマンティシズムの爆発。父親でとどまりたくなくて、男を捨てられなくて、いつだって心を熱くさせるようなロマンに生きたい!
    一家惨殺っていうのはそんな、身勝手で純粋な欲望をはらす1つの手段だったのでは? という主人公の視点。

    そして明らかになる本当の真実。

    事件前の家族の回想、主人公がそれに与えるひとりよがりの解釈、主人公の今の境遇、そのすべてがラストに集約して、すべてを味わい深いものに変えたと思う。

    あの日の父が幼い主人公を待っていたのは、殺すためなんかじゃなかったというところが、ジーンときた。久々に読んだ本当に味わい深い作品。
    上質なミステリー。

  • 2013年10月23日(水)、読了。

  • 真実を求めることによって思い出までも失ったスティーブが哀れ。

    最もクックらしい作品かも。

  • 暗い話しだけど 面白いです。
    最後の父子の姿は哀しすぎる・・・

  • 9歳の主人公が帰宅すると 父が母と兄姉を射殺し、逃亡したあとだった。
    それから35年、当時の記憶を探りながら真実に迫る。

  • 傑作。ただ最後の流れがあまりにも詰まりすぎていてもったいない。

  •  『夏草の記憶』があまりにも面白かったのでクックに嵌っています。作品における登場人物の配置の仕方が気になっています。他のも読むぞ。

  •  家族(愛)の話。

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著者プロフィール

1937年生まれ。[現職]帝京大学文学部教授。[専門]日本中世史,南北朝・応仁期の民衆史研究。
『太平記を読む』学生社,1991。『日本中世の内乱と民衆運動』校倉書房,1996。

「2003年 『歴史におけるデモクラシーと集会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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