うらなり (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 79
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167256241

作品紹介・あらすじ

漱石の代表作『坊っちゃん』の登場人物、うらなり。個性豊かな教師たちのなかにあって、マドンナへの思いを残しながら、新任地へ赴いた彼から『坊っちゃん』の世界をみるとどうなるか。さらに、その後の彼の人生とは。明治、大正、昭和を生きたひとりの知識人の肖像を、卓抜な着想と滋味あふれる文章で描き出す。第54回菊池寛賞受賞!小林信彦が描く『坊っちゃん』の後日談。

感想・レビュー・書評

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  • 前日「坊っちゃん」を読んだのは、小林さんの「うらなり」を読むためだ。坊っちゃんの中でのうらなりは影が薄そうに見えるが、実は物語の後半で多々起きる事件のキーパーソンであることがわかる。うらなりの愚痴めいた邂逅が面白かった。

  • 夏目漱石「坊っちゃん」の登場人物、うらなり君が主人公。彼が30年近くも経ってから、当時とその後を振り返る。登場人物はみんなイメージ通りで、「ああ、こんな感じだったかもなあ」と思える。巻末に著者の「創作ノート」がついているのも良かった。
    言われてみれば、うらなり君って坊っちゃんでは脇役だけど、あのドタバタの当事者だ。でも全然怒らないので坊っちゃんに「君子」なんて言われてしまう。坊っちゃんは当事者ではなく、うらなり君とそんなに親しいわけでもないのにプンスカ怒る。その辺が坊っちゃんの魅力なんだけど、うらなり君から見たら変わった人かもなあ。

  • 坊っちゃんの後日談ということを知って図書館で借りてみた。
    坊っちゃんはとんでもない奴だったw
    うらなりもそれなりの人生をおくったんだ。

  •  許嫁のマドンナを赤シャツに奪われ、校長に謀れて延岡に飛ばされることなったうらなり君。人がいいのか、弱いのか、送別会の主役にも関わらず、座敷の隅に追いやられ、ほったらかしに。会津っぽの山嵐や、江戸っ子の坊っちゃんのように、声を荒げて腕を振り回し、暴れまわればさぞ爽快だろうに。と、うらなり君が思ったかどうかは知らん。ひっそりと、表舞台に上がることなく、記憶の片隅に残ることもなく、さよならを告げる相手もなく退場した彼のその後の人生と、彼の目から見た山嵐と坊っちゃんの人物像とは。 
    久しぶりに坊っちゃんを読み返し、曖昧だったうらなりの意味を検索してたらこの本が引っかかったから読んだ。
    楽しいよ、これ。

  • 坊っちゃん、実はちゃんと読んだことがない(恥)。
    何となくのあらすじは分かるけど。

    坊っちゃんに出てくる脇役うらなり・古賀先生が主役に。
    坊っちゃんを読んでもう一度読もうと思う。

  • 【あらすじ】
     昭和9年、銀座四丁目で古賀先生(うらなり)は堀田先生(山嵐)と再会する。
     カフェでお互いのその後や近況を交換し、古賀先生は帰宅後、寝る前に今までの人生を振り返る。
     うらなり先生の視点から見たもう一つの「坊っちゃん」。
    【感想】     
     夏目漱石の「坊っちゃん」を読むと、私はつくづくうらなり先生だなと思います。
         
    ■[名作文学]【百年読書会】『坊っちゃん』その後おれはうらなりになった
      http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20090709/p1
         
     うらなり先生が語り手となってうらなり先生のその後が描かれているという小説があると知り、私が語り手とはどういうことだろう、私はその後どうなったんだろう、と興味深く思い、読んでみました。
     本作品では、「坊っちゃん」に描かれた事件が、うらなり先生や山嵐先生の視点から語られています。
     うらなり先生から見ると、坊っちゃんの行動が理解不能のようです。
         
    「男には人の心に土足で入ってくるようなところがあった。」
    「自分の考えや行動はよろず正しいと思っているらしいのが私とは合わなかった。合わないというよりも迷惑である。」
         
    ……というような記述が度々繰り返され、赤シャツや野だいこ以上に坊っちゃんに対して辛辣な書き方が目立ちます。
     そのような記述を見ると、やはり私はうらなり先生ではないようです。
     もし私が回想するならば、いつまでも狸や赤シャツや野だいこに対する恨み辛みを忘れずに書きたてるだろうし、一方、それらに敵対していた山嵐や坊っちゃんを持ち上げるでしょう。
     私がもし当時の愛媛の学校の教師として赴任したとすると、やはり古賀先生に同情して堀田先生に加勢し、教頭や吉川先生と対立していたでしょう。坊っちゃん先生そのまんまです。
     私にとっては、本作品のうらなり先生の発想の方が分かりません。
     というと、私は、外から見えるタイプはうらなり先生で、頭の中は坊っちゃんということです。
     理想(思うこと)に現実(行動)が伴わないという、一番ストレスが溜まる組み合わせです。
         
     ところで、坊ちゃん先生のその後はどうなったことになっているのでしょうか。
     堀田先生は現在、東京在住ということですが、その堀田先生とも音信不通のようです。
         
    「東京に帰ってから、街鉄の技手になり、それから技師になったという噂もあったが、本当のところはわからない。それよりも、関東大震災を生きのびたかどうか」
      http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150404/p1
         
    ……さて、私はさらに、歴史上繰り返されてきた人間の本質や日本人の国民性について考えてみました。
     ブログに書きましたので、よろしければ、ブログにお越し下さい。
         
    ■[日々の哲学]『うらなり』で考える日本人の国民性
      http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20150405/p1

  • 『坊っちゃん』の登場人物の一人「うらなり」の視点から描いた作品です。今の言い方でいえば、「スピンオフ」でしょうか?回想を織り交ぜながらも、『坊っちゃん』の世界観を壊すことなくオリジナルストーリーがあります。『坊っちゃん』を読み直したくなります。

  • 『坊っちゃん』の登場人物である「うらなり」の視点で描かれる本です。うらなり視点の『坊っちゃん』。『坊っちゃん』では途中退場したうらなりのその後に迫る作品です。

  • 昭和初期の銀座のど真ん中で待ち合わせをする田舎の男。
    待ち合わせに遅れてきた声の大きい男。
    互いに50過ぎで、元教師である。
    田舎の男はコンプレックスの塊で、声の大きい男はがさつだが人は善いらしい。
    やがて昔話が始まり、“四国”“若気の至り”“教頭を殴りつける”“赤シャツ”という単語が出てくると、俄然、物語が面白くなってくる。

    そう、これは夏目漱石「坊っちゃん」のアナザーストーリーです。
    「うらなり」とは教頭に許婚を奪われた挙句、厄介払いで左遷させられた教師です。
    田舎の男こそ「うらなり」本人で、彼から見た物語と登場人物達のその後の半生が描かれます。
    「坊っちゃん」はそそっかしい正義派の“B型ヒーロー”である。
    このそそっかしさは育ちの良い都会人の一典型で、立身出世にこりかたまった地方出身者から見たら嗤うべきものだろう。そして坊っちゃんは“B型ヒーロー”が地方でどんな目に遭わされるかという物語でもあり、漱石その人もB型だった…。
    と語る小林信彦もB型です。かく言う私もB型で、親近感を禁じ得ません。

    坊っちゃんで起こる出来事の中心人物は「うらなり」と「山嵐」(声の大きい男)ですが、
    坊っちゃんは正義感から自分が主役気取りで首を突っ込んで赤シャツ達に敗北します。
    うらなりから見た坊っちゃんは浅はかで理解し難くB型の私は身につまされます。
    でもB型ってそんな自分も好きって人が結構多いと思うんですが…。

    この小説は、B型を愛する人には特にお勧めの面白い本です。

  • うらなりとは、夏目漱石の小説「坊っちゃん」に登場する人物のこと
    マドンナの元婚約者であり
    赤シャツ教頭の奸計にかかって松山を追われた英語教師である
    これは、うらなりのその後の人生を書いたオマージュ小説

    坊っちゃんこと「五分刈り」の行動を理解できないうらなりは
    常に戸惑いとある種の畏怖をもって彼に接していた
    そんなことが、山嵐との再会をきっかけに、回想されていく
    しかし、実際のところ
    「五分刈り」とうらなりは
    根っこの部分で似た者同士だったのではないだろうか
    常に率直で、しかも飽きっぽい「五分刈り」と
    世間におもねることを善しとするうらなりが
    互いを理解しあえるはずはないのだが
    それでも
    彼らがそれぞれの現状に不満を抱き続けていたのは確かである
    そして
    英語教師のくせに外国人を恐れるうらなりの心性は
    結局、誰かに相乗りする形でしか動けない「五分刈り」に通ずるものだ
    このふたりのすれ違いは
    近代日本の悲劇を、何か象徴するものである
    …ような気もしますよ

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著者プロフィール

小林信彦
昭和7年東京生

「2016年 『唐獅子株式会社』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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