沈黙の王 (文春文庫 み 19-5)

著者 :
  • 文藝春秋
3.69
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本棚登録 : 602
感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167259068

作品紹介・あらすじ

黙せる王は苦難のすえ万世に不変不滅のことばを得る。文字である。文字を創造した高宗武丁をえがく表題作をはじめ「地中の火」「妖異記」「豊饒の門」など五つの名品集。(磯貝勝太郎)

感想・レビュー・書評

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  • 全1巻

  • 1995年第一刷、文藝春秋の文春文庫。5編。主人公は順に 商(殷)の高宗武丁、寒浞と后羿、鄭の桓公友、鄭の武公掘突、叔向(羊舌肸)。春秋は諸子百家、特に儒教の孔子の時代だから少しはなじみがあるが、夏や殷はまず小説では見ない時代。最後の叔向は中編ぐらいの長さがあるからかそうでもないが、他の4編は歴史の事実(と作者が考えるもの)に沿って動かすあまりか、うまく動かされている感じがしないでもない。それでもきっちり動いている感じはするのでかなり面白い歴史小説である。

    収録作:『沈黙の王』、『地中の火』、『妖異記』、『豊饒の門』、『鳳凰の冠』、解説:「解説」磯貝勝太郎(文芸評論家)。 単行本は、1992年9月文藝春秋刊。

  • 5つの話を集めた短編集。

  • 黙の王
    地中の火
    妖異記
    豊饒の門
    鳳凰の冠

    著者:宮城谷昌光(1945-、蒲郡市、小説家)

  • 挫折

  • 「沈黙の王」「地中の火」はそれぞれ文字の発明・弓矢を発明した部族の物語。はるか古代を舞台にしており、伝奇的なせいかどこか
    中島敦を思わせる雰囲気がある。
    「妖異記」「豊饒の門」は笑わぬ美女褒?(ほうじ)と、それに振り回される王の物語、そして「鳳凰の冠」は絶世の美女・夏姫の娘を娶った晋の宰相・叔向の物語です。いかにも宮城谷さんらしい歴史物ですが、短編の割に登場人物が多く、その上一人の人物が役職で呼ばれたり、名で呼ばれたり、字(あざな)で呼ばれたりするので苦労しました。

  • 117

  • 超久々の中国モノ・・・
    初の宮城谷昌光で・・・
    彼の十八番の古代中国モノの短中篇集・・・

    今まで一番古い時代のもので始皇帝(安能 務のヤツ)だったけど、更に古い時代・・・
    夏や商(殷)、周、そして春秋の時代!
    全然馴染みない・・・
    けども面白い・・・
    小難しい?
    いえ、全然・・・
    歴史モノだけど、ファンタジー要素も混ざってるし、落ち着いたトーンの丁寧な語り、文体で、結構スンナリ物語が入ってくる・・・

    一番良かったのは、2篇目の『地中の火』・・・
    夏王朝を一時的に滅ぼした男たちの物語・・・
    中国で最初に弓矢をつくり、弓の名手だった后羿【コウゲイ】と・・・
    その側近で、権謀術数鮮やかな寒浞【カンサク】の天下制覇への物語・・・
    后羿に拾われ、后羿へ天下を獲らせるために献策し、時には手足ともなって動き回る寒浞・・・
    彼の功もあり、天下獲りにあと一歩というところまでいった后羿・・・
    その后羿を寒浞は謀殺する・・・
    寒浞はその覇業を引き継ぎ、夏王朝を滅亡させ、王となる・・・
    だが、そんな寒浞もまた、滅ぼしたはずの夏王の遺児により、滅亡の時を迎える・・・
    ・・・
    寒浞の才知のキレとその野心の遠大さ・・・
    燃えるよね・・・
    そして最期の儚さもとても良い・・・
    夢のまた夢、感が味わい深い・・・
    わずか40ページに、栄枯盛衰が詰まっておる・・・
    好きです・・・

    その他・・・
    名将、忠臣、名臣、奸臣、妖女、暗君など各篇で魅力的な人物たちが織り成すドラマが面白い・・・
    語り口がなんだか良いんだよなぁ・・・
    古代中国が題材なんだけど読みやすいんだよなぁ・・・
    すごいよ宮城谷さん!

    中国は美女が何度も国を滅ぼすね・・・
    妖しい美女に近寄っちゃダメですね・・・

  • #古代中国で最初に文字を発明した王様の話。そう聞き表題作を読んだが、言語障害を理由に追放された王子の貴種流離譚がメインで、文字制定の現場は1Pのみ。

    #明らかに白川静の著作の影響があるのに、漢字は一人の王の創造物、というマッチョな結論にとまどったが、調べてみるとこれは、最古の甲骨文は武丁の時代からの出土、というところから宮城谷が膨らませた創作らしく、そう判れば作者が文字の創成期にはどんなドラマが必要だと考えたのか、という視点で楽しく読める。でも、文字が存在しない世界のことを文字で記述できる、ってやっぱり不思議。

    (2009/03/26)

  • 50頁弱の短編小説なので、休憩代わりにさらりと読了。
    同文庫に収められている他の短編は又の機会に。

    ブラッドベリの華氏451度を読んだ直後だからであろうか、この短篇が抑揚無く淡々と進んでいく様が、ことさら心地よく感じた。

    以下、ネタバレにならない程度に、断片的な感想をば。

    流浪の旅にでた王子「子昭」が、当初の目的地にて「甘盤」に出会うも、
    「所詮、知識は人の表層に過ぎぬ」
    という虚しさに直面する。

    その後、高祖の墓を目指して西走する道中で、ついに子昭は「言葉」と出会う。

    それは、言葉を持たない王子「子昭」と、聞こえぬ声を聞き取る「傅説(ふえつ)」との出会いだった。


    そして、言葉を発することのできない王子が、あるものを発明する。

    「沈黙の王」
    なるほど、言い得て妙のタイトルだ。



    2014.07.05
    表題作以外も読了。

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著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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