駆ける少年 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167266035

感想・レビュー・書評

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  • 彼女の作品は力を感じる。
    彼女の作品に出会ってから本屋で見かければ、買うという行為を繰り返している。

    もしはないが、まだ生きていてくれたら、と感じることがある作者の一人です・・・

    作品は短編からなります。

    表題作は、

    父の過去の手帳に記されている内容で、父の生きざまを初めて知る龍之
    一人一人にある人生、他人から見れば、なんでもないことかもしれない
    でもそこに1人に人間が生き、軌跡を残してきたことは、確実であり、確かな生きたあかしであり・・

    自分の父親が何を考え何を求めようとしていたのか・・・
    父の生きざまをたどる旅が始まる・・・



  • 「銀河の町」「駆ける少年」「痩せたせなか」を収録。鷺沢萠は早熟だったなあ。どれも二十歳そこそこの小娘とは思えない題材だよ。時代が今よりもっと軽佻浮薄な感じだったと思うんだけど、そのなかにあってどうして作品を書こうと思ったんだろう。こういう世界に関心をもったんだろう。
    3つとも底に流れているのは、「あきらめる」「あきらめられる」「あきらめられない」ってことかなと思った。もちろん、「あきらめずに頑張らないとダメ」みたいな軽いメッセージじゃないよ。人はちょっとしたはずみで、自分でも知らないうちにあきらめてしまうことがある。あきらめようと思っても、あきらめきれないことがある。あきらめたかのように見えて、あきらめていないことがある。荒んだ情景のなかで、心の中にポッと光を灯すような佳作たち。

  • 薄い本のなかに、三編。
    高速道路の下の、都会の谷間に佇む飲み屋のカウンター
    会社を立ち上げがむしゃらに働きながら、追う父の姿
    女遊びのやまない父をもった息子がみた、父の恋人の痩せた背中

    鷺沢萠の若い頃の本を読むといつもおもう。

    どうして、18だか19だかの
    少女と呼ぶのがふさわしいころに
    こんな小説がかけたんだろう。
    ひとの、人生のつらいことやかなしいことを全て知って
    知ったうえで、肩ひじはるのをすこし、やめたような
    そんなおとなの話がどうしてかけたんだろう。

    足下のコンクリートにも、きちんと色があるのだってこと
    思い出させてくれるような
    灰色も一色ではないのだと教えてくれるような

    そんな、鮮やかな本。

  • ニュースを見て、そういえば高校生の頃に何冊か読んだなぁと思い出し
    図書館で借りてきて読んでみました。
    最初の20〜30ページくらいは
    あんまりよくないかなぁと思って読んでたのですが
    途中から小説の世界と自分の世界が少しずつ馴染んできて
    最後には面白く読めました。
    面白くって表現は内容的にちょっと適当じゃないかもだけど。
    3編の小説が入っているのですが
    「駆ける少年」と「痩せた背中」はとてもよかったです。
    「駆ける少年」は焦燥感を
    「痩せた背中」は愛情を
    それぞれに扱った話。
    昨日の日記で書いた「感情のポケット」の中には
    「駆ける少年」の冒頭の部分の少年の感情に近いものもあるなと。
    この少年はどこに・何に向かって走っているのかは
    本人もよくわかってないんだけど
    ただ向こうに行かなくてはならないと焦っていて
    同じような気持ちを高校生・大学生の時は僕も常に感じていた。
    それはゆったりとスローペースに生きている今にはなくて
    でも、もしかしたら僕の中に隠れているだけでなくなったわけではなくて
    それらが時々、疼いているのかもしれないと思った。
    それを求める気持ちがどこかにあるのかもしれない。
    でも、それを持ち続けたらこの登場人物のようになっちゃうのかなぁ。
    足早に駆け抜ける人生もかっこいいけど
    それだけじゃないとも今は思える。
    「痩せた背中」は女癖の悪い父親とその恋人のような存在と主人公の話。
    父親が女癖が悪くて家にも夜遅くまで帰ってこなくて
    それをじっと耐えていた恋人(しかもかなりの年齢差)が
    精神を壊してしまうんだけど
    そうなる前に出て行けばいいのになぜそうしなかったのか?
    それは主人公には何かを諦めたように見えたのだけど
    本当は単に好きな気持ちを諦めきれなかったんじゃないか?
    と気づいたというお話。
    自分が壊れても気持ちを全うすることができる強さ・弱さの両方が
    今の僕にはないもののような気がして
    その激しさが羨ましいような懐かしいような感じがした。
    当時の僕にあって今の僕にはないものと
    今の僕にあって当時の僕にはないものと
    その優劣というのはたぶんないんだけど
    年齢を重ねるごとにそういう気持ちが失われていくのだと思うと
    なんだか喪失感を感じて悲しくなった。

  • 短編三作を読み終えた後、あとがきを読んで、妙に納得した。
    なるほど、これは父親の話だったんだ、と。
    一作目の『銀河の町』は大人というものの哀しみみたいなものを感じ取ったけど、残り二作は、形の違う父親の物語だった。
    エッセイも多少読んだ今だから言えるけれど、実際、二、三作目に登場する父親は、鷺沢先生のお父さんが投影されている部分があるらしい。
    でも、これは同時にいつかの子ども自身の話でもあるのかもしれない。
    昔ながらの「背中で語る」というのではないけれど、子どもって、どこか父親の背中を見て育つところがある。
    父親が駆けていたなら、その子どもも、いつか駆けずにはいられなくなる。
    そういうものなのかもしれない。

  • 「生」を静かに書き上げたはなしに、すごく胸がいっぱいになった

  • 怖くなかったのでは決してない。
    ただ、その怖さを抑圧してでもどこかへ行かなければ、自分自身を救えなかったというだけだ。

    (銀河の町/駆ける少年/痩せた背中)

  • 表紙裏
    なぜ少年は走り続けるのか?ある夜見た夢がきっかけとなって、龍之は死んだ父のことを調べ始める。過去帳の中に記された見知らぬ名前から明らかになってゆく父の複雑な人生。父とは誰だったのか?私とは何なのか?青年の感性をみずみずしくとらえた表題作を始めとする三篇を収録。第二十回泉鏡花文学賞受賞。

    目次
    銀河の町
    駆ける少年
    痩せた背中

  •  文章の流れるかんじが好き! お話の内容は、多少「どこかで見たような…」という気がしてけれど、この文章の世界にもっとつかっていたいと感じました。

  • 公木龍之が主人公で、父親が龍之介と呼ぶ。これだけで父の後ろ姿を息子がたどり解かろうとしていくのが切々と伝わってきます。切
     亡くなった父親の過去帳から生い立ち、自分の記憶の中にある父親に事業の失敗までをたどる。
     冒頭の夢の少年は父で今の自分の不安定さでもある。その姿が。文末まで引きづられていく。
     あとがきに公木は父のペンネームでもあり、亡くなった父のことが解らないとも著者は書いている。
     家族から見えていない父親の姿。見えていなかったからこそ、滋味深く思う。愛しく思う。

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著者プロフィール

鷺沢萠(1968.6.20-2004.4.11)
作家。上智大学外国語学部ロシア語科中退。1987年、「川べりの道」で文學界新人賞を当時最年少で受賞。92年「駆ける少年」で泉鏡花賞を受賞。他の著書に『少年たちの終わらない夜』『葉桜の日』『大統領のクリスマス・ツリー』『君はこの国を好きか』『過ぐる川、烟る橋』『さいはての二人』『ウェルカム・ホーム!』など。

「2018年 『帰れぬ人びと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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