- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167269104
感想・レビュー・書評
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ぼくは今、何をなすべきか。東京五輪を目前に控えた喧騒の社会にほうり出された倫理的で屈強な肉体をもった知的青年は...って、東京五輪1964の事なのですが、2020年の私にも通ずるではないか!?
怪しい探検隊的な人種は、誰もが同じ苦しみを味わっていると思います。いくらこの本の全てに共感して、最後は「自分の好きなことだけをして生きる」に行き着いても、現実は、一部の気がつけば時流に乗っていて何とかなった組と、大部分の落ちこぼれ組に分かれるのかな?とドライな見方をしちゃってます。
そうかと思えば、結局は「自分の好きなことだけをして生きる」に行き着くのだから、余計なことは考えずに、結論へジャンプしてみよう!と、楽な心持ちになったりと、まるで心が反復横跳びを始めたかのようです。心を惑わす本であった反面、彼の経験値を一瞬で得ることができた側面もあり、なにか少し人生を達観できたような...いやいや、これまた錯覚であるに違いないです。ともあれ、絶妙なタイミングでこの本をプレゼントしてくれた友人に感謝です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
野田知佑氏は幼い。一流大学を卒業しても世間に文句ばかり言って就職をしない。そして外国に「自分探しの旅」へ出る。だが、遠い異国でも「俺は無駄なことをしているのか」とぐちぐち悩む。20代最後に就職したと思ったら3年で辞める。やっと自身の居場所(作家)を見つけたのは40歳手前。そして80代になった今も川遊びばかりしている。ぜんぜん大人になれていない。しかもいまだに世間に文句ばかりいっている。
残念ながら自分も同じ。転職を繰り返し、「だめだこりゃ。俺はサラリーマンに向いていない」と腹をくくったのは37歳。そしてアラフィフになってもクワガタ採集や川遊びのためなら、数十万円の仕事の依頼が来ても引き受けない。なので本書は自分と重ねて辛くなる部分が多々あった。
でも、「ニヤリ」と共感できる描写もあった。
たとえば、
「自分探しの旅で痩せた悩める哲学者風アメリカ人と出会った。そして偶然20年ぶりに再会。彼は実業家として成功し、丸々と太っていた。彼に悪いところはないのだが何となく「がっかり」してしまった」
「川遊びを最大の生き甲斐とするサラリーマンはダメである。俺の人生はこんなのでいいのか、といった下らん疑問は持たず、すべて肯定して生きることが幸福になる道だ。ぼくは明らかにこの道では失格者であった」
今なら分かる。自由に生きていきたいのなら、とにかく曜日を忘れるほど働き「誰にも負けない」と思える得意分野を見つけること。得意分野は一生懸命働かないと見つけられない。だけど10代・20代の頃は、「俺には何か特別才能があるはず」と根拠のない自信から、ふらふら・ぶれぶれしてしまうんだなぁ。
とはいえ、暗く悩みすぎだよ若き日の知佑さん。 -
椎名誠の「岳物語」を読んだ時野田さんを知った。
カヌーが好きで、好きなことを仕事にして機嫌よく生きている人というような印象をもっていたので、この本を読んでびっくり。
こんな悶々とした若かりし頃があったのか。
その頃の日本と今ではやはり時代も考え方も随分違うと思うけれど、その強烈な自意識はいつの時代も変わらないものだろう。
若者の気持ちも親としての気持ちもわかるようになった今読むと複雑だけど、やはり人生は自分で道をみつけていくしかないのだと思う。
「岳物語」を読み返してみたくなった。 -
『北の川から』で語られたとおり、自身の漂泊の人生を綴る。大学を卒業し、苦心して渡航費を貯め、ユーラシア大陸をソ連を皮切りに北欧~南欧まで、ヒッチハイクと鉄道を使って流浪。今で言う自分探しの旅だったのだろう。スウェーデンで自由なカヌーの乗り方に接し、フランスで川下りの楽しさに出会った。29歳で結婚するも、本書を読む限りでは、妻も著者も幸せな結婚生活ではなかったように見える。著書が評価されたのが44歳という、遅咲きの人生だったんだな~
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野田さんが亡くなった。
この「旅へ」は若い頃読んで俺の人生は変わった。野田さんのような旅に憧れた青春時代が懐かしい。 -
カヌーイスト野田知佑さんの
20代の青春放浪記
自由な暮らしを憧れる人は 多い
自由な暮らしを求める人は 多い
しかし
自由な暮らしを そのまましてしまう
自由な暮らしを 貫いてしまう
そこまでの人は そういない
その「自由な暮らし」に至るまでの
若き頃の野田青年が描かれる
若き頃の野田青年の無軌道ぶりまでもが
また愛おしい
さわやかな気持ちにさせられます -
野田さんの自叙伝。若いころから世界を自分の目で見て回り、感じることは必要不可欠だなって本当に思う!!!(若い時、自分ももっと自分の意志で、自分の足で活動すべきだったわって思ったり。。。)
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自由を求め日本を放浪し、会う大人たちにはいつも「遊んでないで働きなさい」と言われ、日々怒りを抱いてた青年が真の自由を求め1960年代まだ海外渡航がはじまって間もない頃にロシアへ渡った。そこから鉄道でヨーロッパへ入り、鉄道旅をやめ、より自由を求めヒッチハイクの旅をはじめた。海でも湖でも水があれば泳ぎ、魚を取り、何かないかと街をプラプラ歩いて、夜は星を見ながら野宿をする。誰もが憧れるであろう自由な旅を、この時代にやっていたというのには本当に驚いた。青春の葛藤を見事にかいた素晴らしい青春旅行記だと思う。
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そうだ、旅とは本来格好悪いものなのだ。勝者はその地に根を下ろし、敗者は逃亡や喪失でその地を去る。
東京五輪を目前に控えた1964年、思い悩み北海道を放浪する野田氏。オリンピック合宿に励む後輩と偶然出会い、懇親会に誘われる場面の何と残酷なことか。逃げるように南下し、大学で英字新聞を売り歩くフーテン生活を送る。そんななかで体験した京都での生活がその後の野田氏の人生を形作ったといえよう。
ヨーロッパ放浪で他人と違うことの価値、自分を表現する喜びを味わい、帰国後の会社員生活で「こうじゃない」と決意する様、それは青春というモラトリアムのなかで苦悶し奮闘があったからといえる。
勝者となってレールに乗ることは決して悪いことではない。そうした人々が世の中を良くしていくのだ。でも敗者となって格好悪くてもよいではないか。そうした人物が世の中を変えていくのだ。そう思える一冊である。 -
1999年7月読了。