冬の運動会 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 354
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167277154

作品紹介・あらすじ

高校時代の万引事件のためエリート家庭から落ちこぼれた菊男は、ガード下の靴修理店の老夫婦のもとに入りびたっていた。そんなある日、ふとしたきっかけから、菊男は謹厳な祖父や、一流ビジネスマンの父のもうひとつの姿を知ってしまう。人間の本質と家族のあり方を追求して話題を呼んだ名作ドラマの小説化。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。いいタイトル。祖父にも息子にも孫にも、外に家がある。本当の親子関係は何一つうまくいかない。それでも向田さんはこの家族をバラバラにする結末にはしない。季節外れの運動会を終えて、もとの家族のところに戻ってくる。普通ならこんな都合のよい結末をつまらなく感じてもおかしくないのに、向田さんが描くと家族ってそうやって続いていくものだよなと自然と思えてくる。ラストに至るまでの登場人物の細やかな書き込みが結末の自然さを生み出すのだろう。

  • 向田邦子 原作「冬の運動会」、1998.1発行。北沢家の家族の物語。長男、北沢菊男25歳の高3の時の「万引き」から物語が始まり、菊男が「万引き」のトラウマから抜け出すことで物語が終了します。その間の、家族の諸々の話を向田邦子さんが読者に語りかけてきます。起承転結が見事です。

  • 大学3年の菊男は、元軍人で謹厳実直な祖父と、エリートサラリーマンの父、上流家庭出身の母、そして妹の5人暮らし。
    しかし、高校時代、つい魔がさして美術全集の本を万引きした時から、家族との歯車が狂い始める。
    どこか上っ面だけで、本当はいつまでも菊男の行為…と言うより存在を恥じる両親の前で、菊男は息苦しくてたまらない。

    ふとしたことから知り合った靴修理店の家に入りびたり、そこの夫婦を「おやじ」「おふくろ」と呼び、家族ごっこをに救いを求める。

    実は祖父も若い妾を囲い、その家に入りびたり、父もなくなった同僚の未亡人の家に通い詰めて疑似家族のような生活をおくっていた。
    菊男の家は、男性陣がそれぞれに家に対して屈託を抱えていたのである。

    今は、たとえ家族に対しても無理して自分を殺すことはない、そんな家ならさっさと家を出てしまえ、と言うところだろうけれど、そこは向田邦子、イライラしながらも家族は家族。
    簡単に切り捨てることはできない。

    菊男が家族の前でイライラするのは、一度は過ちを犯してしまったけれども、そんな自分を家族に認めてほしいから。
    東京の生活をあきらめて田舎に帰ろうとする彼女との関係も含めて、きちんと自分の気持ちと向き合った菊男。
    奇しくもそれぞれ家に戻らざるを得なくなった祖父と父。

    ”行き場のない男たちは、ちょっと元気のない足どりでゴールに入った。
    菊男は思う。季節外れの運動会は、もう終わったのだ……と。”

    少し言葉使いが古臭かったり、家族で軍歌を歌うなんてびっくりな情景もあるけれど、時代を経ても変わらない人間の本質と家族の姿を鋭く描いた作品。
    さすが向田邦子と思いました。
    面白くて一気読みです。

  • 母の蔵書。一気に読んだ。人間模様が面白い。人は信頼されるから頑張れる。カヨがカッコいい。

  • やっぱり面白い。
    お父さんにイライラ。

  • 向田さんの新作? まさかね!
    なんとも不思議な気持ちでこの本を手に取ってみると、
    1977年にTBSで放送された
    テレビドラマの脚本を小説したものだった。

    高校時代の万引き事件のために
    エリート家庭から落ちこぼれた菊男は、
    ガード下の靴修理店の老夫婦のもとに入り浸っている。
    そこが自分の家よりも、温かくて居心地がいいからだ。
    そんなある日、ふとしたきっかけで
    菊男は謹厳な祖父の秘密を知り、
    一流ビジネスマンの父親の裏の姿を知ってしまう。

    エリート家族とのぎくしゃくした関係を
    就活時期にさしかかった菊男が
    若者らしい選択で自ら修復していく様子が、
    向田さんらしい、温かくて細やかな視線で描かれていた。

    ドラマを見ていなかったので、
    新鮮な気持ちで読んだのだが、この方の死は本当に残念だ。

    常に家族や家庭といった
    一番身近な社会を描いたエッセイや脚本が多い向田作品。
    向田さんの描く「家庭」には
    昭和の頃の質素ながらも笑いのたえない家族像がある。
    これは今の時代の「家庭」が失いつつあるものではないだろうか。
    10代の少年犯罪が頻発するのも、
    その背景にあるべき家庭というものが
    「温かい」ものではないような気がしてならない。
    もしいまも向田さんがご健在なら、
    少年犯罪の問題をとりあげた作品を書いてもらいたいものだ。

  • 古本市で購入。
    読み応えあるテーマ。
    配役も豪華。藤田弓子の解説からは当時のテレビ界の雰囲気がよく伝わってきた。

  • 向田邦子のドラマシナリオを別の作家さんが小説化したというもの。急展開っぷりが、たしかにドラマで観たら面白いだろうなと思う。文字のセリフだけでは分かりにくいところがあった。

  • 表題に相応しく、慌ただしい家族劇が展開されています。
    寺内貫太郎一家を陽とするならば、こちらは陰。どんなに汚れていても家族の絆は断ち切れない、ということを悲劇的に描いていて、モヤモヤとさせられる作品です。

  • 家族に対して秘密を隠す3人の男にまつわる物語です。秘密が明らかになっていく中で、家族が再生していく様子を作者が巧みに描いています。ラストの3人の様子が私にとってはちょっと面白いです。

    九州大学
    ニックネーム:稲生平八郎

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著者プロフィール

1929年、東京生まれ。脚本家、エッセイスト、小説家。実践女子専門学校国語科卒業後、記者を経て脚本の世界へ。代表作に「七人の孫」「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」。1980年、「花の名前」などで第83回直木賞受賞。おもな著書に『父の詫び状』『思い出トランプ』『あ・うん』。1981年、飛行機事故で急逝。

「2020年 『向田邦子ベスト・エッセイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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