隣りの女 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2010年11月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784167277222

作品紹介・あらすじ

温かい眼差しで人間の哀歓を紡いだ傑作短篇集。

「一生に一度でいい、恋っての、してみたかったの」
平凡な主婦が飛び込んだニューヨークへの
恋の道行きを描いた表題作。

嫁き遅れた女の心の揺れを浮かび上がらせた「幸福」「胡桃の部屋」。
異母兄弟の交流を綴った「下駄」。
絶筆となった「春が来た」。

全5篇を収録した珠玉の短篇集。

解説・浅生憲章/中島淳彦

みんなの感想まとめ

日常の中に潜む人間関係の微妙な心理を描いた短編集で、昭和の雰囲気が漂いながらも、普遍的なテーマが根底に流れています。作品は、男女や家族の関係における危うさや、幸福の捉え方について深く考えさせられる内容...

感想・レビュー・書評

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  • *隣りの女
    *幸福
    *胡桃の部屋
    *下駄
    *春が来た

    5編の短編集
    昭和感が溢れる。
    しかしどの作品にも時代をこえて存在する男女、夫婦、家族の日常に潜んでいる危うさの様な心模様が描かれている。
    それにしても総じて男性陣の柔なこと、反し女性陣は案外柔軟で力強いのかも。

  • 幸せを測るものさしなんてあるのかなぁって考えさせられる。
    相手のことが、つい自分より幸せに見えたりする。
    そういう深い部分をぐいっとえぐり取られたような感じがする。
    大人の女性の心理を描くのが、ほんとに上手いなぁと思う。

  • 「もう来ないと思ったわ」
    二人だけの時に、直子は思い切って言ってみた。
    「どうして」
    「だって……あたし、見栄張ったから」
    「見栄はらないような女は、女じゃないよ」
    おぞましいとは思わず、可愛いと思ってくれているんだわ。直子は、嬉しいときには、白湯を飲んだように胸のところが本当にあったかくなることが判った。

  • 最後の短編「春が来た」はテレビドラマで観たのを覚えてました。
    桃井かおりさんがヒロインで、最初の喫茶店でコーヒーに砂糖を入れたあと、そのスプーンを舐める仕草がなんだか話してる内容と合わないぞと思ってたら、それがミエであったわけで……なるほど、そのためのスプーン舐めなのか?とすごく納得したのでおよそ40年以上も前のドラマを今でも覚えてました。あとのディテールはすっかり忘れてて、とっても良き確認となりました。
    それにしても「父の詫び状」とはテイストの違う内容に驚きつつも、何を書いても上手な方だなぁと感心しきりでした。

  • 昭和と現在の生活風景、心象風景の違いを常に意識しながら読んでいた。

    決して幸せとはいえないごくごく普通の女性が主人公だけど、みなしたたかでたくましい。
    人生、いいことばかりじゃない。ダメなこともあるけどそれがいいんだよなぁと思わされる。

  • 時代背景は昭和40年代かなと思わせられる
    古びたアパート、ピンクの公衆電話、スナックのママ、から想像できる
    女の見栄や恋愛の駆け引きが生々しく描かれているのに、なんだか嫌な気持ちにならないのは向田さんの筆力かな
    浮気相手の一夜限りの男性を追いかけてアメリカへ行くというのは現実味がないけれど、旦那に「山に登ってきます」とメモだけ残して消えるのは、携帯電話がない時代ゆえ出来る事なんだなあと
    携帯電話無い方が男女の恋愛は楽しそうに思う

  • 少し、ドキドキする場面でも、虚しくなったりして、読んでる最中、気持ちがごっちゃになってました。不幸な感じの人たちを中心にした物語が多くて、最後はやっぱり虚しいのが残った。
    読み終わった時の虚しさMAXは、心に残ったなあ。

  • 「昭和」の夫婦、恋愛、家族が描かれた五つの短編。独特の湿り気を感じるんだけど、じっとりしすぎず、怖いもの読みたさでページを繰る手が止められなかった。何だか、哀しさと可笑しさが混ざり合って、泣きながら笑うような…一筋縄では行かない感情が捻れて捩れて、思いがけないところに着地する。皆、それぞれに器がちっちゃいんだけど、その小ささ加減が絶妙なんだよなぁ。どこか欠けているからこそ、そういう完璧じゃないところに共感する。
    実はいまだに向田邦子ドラマをちゃんと観たことがないのだが、本作を読んで、さすが脚本を書く人の言葉のチョイスだなとつくづく思った。こんな場面でこんなセリフ…ぞくぞくするわ!!「隣りの女」で、壁の向こうから聞こえてくるあるセリフ。こちらも盗み聞きしてる気分になり、たまらない場面だ。向田邦子ワールド,クセになりますな。

  • 春が来た、が好き。人間模様、昭和のかおり。

  • どことなく空虚な香りのする5篇の短篇集。
    内職をする平凡な主婦が飛び込んだニューヨークへの恋の逃避行を描いた表題作と、好きな人に見栄を張ってしまったことからその相手との関係が二転三転する「春が来た」がとくに印象に残った。
    ちなみに「春が来た」は、飛行機事故で早逝した向田さんの絶筆作品らしい。
    私はその時代に生きた人間ではないものの、こんな作品群を発表している最中に亡くなってしまったのがつくづく惜しいと感じてしまった。
    それだけ読み物としてシンプルに面白い。
    そして人間の深い業も感じる。
    嫉妬と欲望、猜疑心、見栄、そういう感情からくる人の行動。良きにつけ悪しきにつけ、最初は小さかったそれがある日突然小さな爆発を起こすように人を行動に移させる。

    「幸福」と「胡桃の部屋」は若い女が主人公で、偶然なのか何なのか、その父親がある意味とても素直に生きているがゆえにだらしない、という共通点がある。
    そしてその娘である彼女たちは、素直には生きられていない。自分を抑えるふしがあるところは、父親の反面教師的な部分があるのだろうかと考えたりした。
    そういうところもまた、業が深い。

    向田さんの作品は、小説も随筆も、さらっとしていて読みやすい。小説は、複雑だけど明快、みたいな相反する感想を抱く。人を行動に走らせる複雑な感情を表現するのが巧いのだと思う。
    業が深い女たちの世界。勝手に向田作品に抱いていたイメージは、そんなに外れていないのかも、と思った。

  • 初めての向田邦子。
    細部の上手さと台詞の絶妙さに唸った。
    短い作品ばかりだが、どれも読み終えてからも胸に痕が残る。
    音が印象に残る作品が多いのは、やはり脚本を書く影響だろうか。
    どれも映像化したものを見てみたくなった。

  • 昭和の湿度。

  • 井原西鶴「好色五人女」光文社古典新訳文庫つながりで、表題作だけ読む!家で服飾の内職をしてると、うすい壁を通して隣から聞こえてくる男女の営み。間一髪、隣室の心中事件を救ったのをきっかけで、隣りの女の浮気相手を好きになってしまい…と。浮気や心中するひとの隣にも普通の女が住んでること。一世一代の恋をしたと思ったのに、買ったと思われてたこと。自由と独立、女は結婚したらふたつとも無くなってしまう。といったあたりが印象に。

  •  何だか疲れてしまいました。
    流れるような文章の面白い小説なのかもしれない。
    だけど、わたしには・・・切ない。
    ありふれた人々の生活を、愛情を持って描いている良さが、彼らの哀しみが一層、わたしの心を染め、やり切れない。

     それほど、読者を物語の世界に引き込む巧さかもしれないが、わたしは少し苦手と感じました。

  • 献身的な女に惹かれる

  • 胡桃の部屋
    ハンバーグの上の目玉焼き、黄身を四角に切り、 
    弟の皿に置く
    そして、2年半後に弟は同じように
    姉の皿に置く
    細かい描写に唸る。
    目に浮かぶようだし、
    話の筋をとてもよく著していると思えた。
    なくてはならないシーンだと感じた。

    胡桃割る胡桃のなかに使はぬ部屋
    この俳句も相まって、
    深く余韻の残る作品

    春が来た
    一気に艶めく
    私、母、妹…
    その描写は匂い立つような艶めきを感じさせる。
    同じ女性でありながら、
    作者の観察眼、筆致は素晴らしいと思う。

    テレビ番組の再放送の視聴から、
    今改めての再読、
    若い頃にはわからなかった
    作品中の父や母、今なら理解できることも多い。

    本当にもっと向田さんの作品、
    読みたかったなあ。
    若すぎる死が悔やまれる。
    合掌…


  • 女性の作家の中で、この人は好き。書かれた時代を想像して、当時に想いを馳せる装置みたいで。いや、私生きてないんですけどね。だから余計に、生まれる前の時代の空気の熱さに、憧れがあります。

    恋のためにNYまで突っ走っれる情熱とか、私あるかなぁ、とか思ってみて「あぁ、次の長期休み暇だから行くわ、くらいのノリはあるかも。」と思うも、当時のことを考えるとその前のめりたるや。ネットでポチッと航空券取って、ちょっと羽伸ばしてくるわー、とか言ってるのと訳が違うものね。NYにたどり着くまでにかけなきゃいけない労力と、外国という存在に隔たる壁は、今とは比べものにならないのだろうもの。そんなことを思うと、「熱さ」を、その時代に感じるのです。私が過ごしてきた時代のもっとひんやり冷たいような肌感覚とは違う、熱さ。生きるエネルギーを人間臭く感じる。

  • ビザを取りニューヨークまでの航空券を買った。
    結果的にしろ、主婦売春と言う汚名をきたしてしまった。
    この汚名を恋に変えてしまわなくてはならない。

  • 昭和56年の単行本の文庫新装版。隣りの女、幸福、胡桃の部屋、下駄、春が来た。

    再版で読み継がれているすごい小説。昔の時代だなぁ、と思えるところも多々ありましたが、結構、ミステリでもあり、どんでん返しのブラックでもあり、全然ほのぼのじゃなかったのね。

  • 5編の短編集、特別なものを持たない女でも、自分だけの恋、幸福はあり願っている。
    向田邦子のこの長さの小説はスッと入ってきていいです。

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著者プロフィール

向田邦子(むこうだ・くにこ)
1929年、東京生まれ。脚本家、エッセイスト、小説家。実践女子専門学校国語科卒業後、記者を経て脚本の世界へ。代表作に「七人の孫」「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」。1980年、「花の名前」などで第83回直木賞受賞。おもな著書に『父の詫び状』『思い出トランプ』『あ・うん』。1981年、飛行機事故で急逝。

「2021年 『向田邦子シナリオ集 昭和の人間ドラマ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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