怪しい来客簿 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 375
レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167296049

作品紹介・あらすじ

私が関東平野で生まれ育ったせいであろうか、地面というものは平らなものだと思ってしまっているようなところがある-「門の前の青春」。亡くなった叔父が、頻々と私のところを訊ねてくるようになった-「墓」。独自の性癖と感性、幻想が醸す妖しの世界を清冽に描き泉鏡花賞を受賞した、世評高い連作短篇。

感想・レビュー・書評

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  • 異形巨躯な相撲取り、白痴の少女、一発屋の歌手、香具師のお婆さんetc...

    世間で言う、「一風変わった人物」達を各章で取り上げ、各々のエピソードを色川氏の想像と感性を加えて語られた短編集。

    色川武大。
    幼き頃に容姿に劣等感を持った事を契機に、以後の人生をずっと劣等感と屈託に彩られた人生を送られたようだ。

    人と馴染む事が出来ず、人と競争することも出来ず、人と同じ生き方を選ぶことも出来ず、だから、人と違った独特な生き方をしないと生きて行けないという苦い心情の中をもがき続けた人。

    この色川さん、独特な生き方でなければいけないという一心から、
    一時はスリになろうともしたような面白い方。

    そんな厭世的な特色を持った方だが、この人は心から好感が持てるんです。
    苦しくても辛くても、どんなに嫌であれ、どれだけ風変わりだろうとも、頑張って生きていた人。
    厭世的な代名詞と言えば太宰治が思い浮かぶが、太宰治の場合はもっと押し付けがましくて可愛げが全く無いのだが、色川さんは、何と言うか健気さが感じられる。

    本書で色川さんが取り上げた人物達はみな、
    色川さんのように「生きにくい」人生を送った人達。
    時に注目を浴び、時に嘲笑われるような人生を送った人達。

    そんな人達を色川さんだからこそ分かる心情と優しい眼差しを持って描いた、不思議とホッと心温まる作品。

    本当にこの方の作品は、色川さんの人生そのもの、「独特」です。

  • 本当に上手い文章って、こういうモノを言うんだろう。
    なんたる余韻というか。
    色川氏の目を通した様々なインプット&アウトプット、その人間愛や達観に、痺れまくる。
    戦後初期の混沌をベースに、そこに生きるニンゲン達の業や哀しさが、色川氏自身の生き様も含め濃縮している。
    しかし、こんなにも鋭敏な感性と伍しながら生きた色川氏って、
    あまりにも剥き身というか、例えるならば、皮膚さえ削がれていたかのようなクリアさというか鋭敏さであって、
    とかく鈍感でこそ凌げる浮世を思えば、それはそれはきっと生き辛かったのではなかろうか、とも思う次第である。
    否、だからこそ、アウトローに徹せざるを得なかったのか。
    戦後成長から飽和、そして停滞の今こそ、凄まじいリアリティと共に読むヒトに迫り来る最高の随筆といえよう。

  • 泉鏡花賞受賞作。「空襲のあと」 8回も9回も空襲で焼け出された婆さん。「墓」 亡くなった叔父が頻々と私のところを訪ねてくるようになった。等が良かった。川上弘美の『<a href=\"http://mediamarker.net/u/nonbe/?asin=4122041058\" target=\"_blank\">あるようなないような</a>』で知って、興味を持ったので購入。次は<a href=\"http://mediamarker.net/u/nonbe/?asin=4061960830\" target=\"_blank\">田紳有楽;空気頭</a>を買ってみよう。色川さんので「狂人日記」も読みたいのだが、amazonにない。残念。[private]諫早に持ち帰る2007/1/1[/private]

  • 別名で書いた麻雀放浪記は読んでいたが、本作は町田康の書評で興味を持った。短編集であるが、小説と言うべきか、実際の自分の身辺の経験に基づいているように見える。町田康も評するように、著者の冷徹で率直な視線がただものならぬ感じであり、ただのエッセーという気がしない。自分の周辺の「怪しい来客」を描きながら、彼らを見つめる視線が逆に著者本人の輪郭を描き出していくさまは、最近読んだ須賀敦子のエッセーに近いと思ってしまった。

    力士や教師をシビアに見つめた「サバ折り文ちゃん」、「右むけ右」。タイトルの一言に友人の人生を集約していて思わず吹いてしまった「したいことはできなくて」。ドサ健を思わせる登場人物の「タップダンス」。年を食った著者の現況にて締める「たすけておくれ」などなど傑作多数。

  • 色川武大 氏には 面白エッセイの神が おりているとしか思えない。博打打ちの天性 や 変人・霊・不幸を引き寄せる能力、物凄い夢を見る能力 がある人の文章は 面白いに決まってる

    安部公房氏や筒井康隆氏の破茶滅茶な空想とは違う「現実の負け犬人生」であり、このままでは終わらない 力強さを感じる

  •  ここに登場するのは、少し変わった(いやいや、かなり変わった)人々であり、人生の落伍者であり、異常を来たした人々である。
     生きるのが下手な人々、どうやって生きていけばいいのかわからない人々、と言い換えてもいいかもしれない。
     そんな人間に向けられる著者の視線のなんと暖かいことか。
     人とどうやって関わり、人の中でどうやって生きていくか。
     著者なりの視線でとらえた、僕の心に残った一節がこれ。
    『私たちはお互いに、助け合うことはできない。許しあうことができるだけだ。そこで生きている以上、お互いにどれほど寛大になってもなりすぎることはないのである』
     そうなのかも知れない。

  • 小説というよりエッセイのような連作集。戦前戦後の、身近にいたちょっと変な人、友達や家族、先生などの他、相撲取りや野球選手、ボクサーといったスポーツ選手から、浅草の芸人、ダンサー、歌手など、思い出の人物を中心に綴った雑感みたいな。 昭和初期の空気が克明に記録されているという部分で貴重な文献な気がする。10代の頃の親友の話「門の前の青春」や、死んだ叔父さんが来訪したりする「見えない来客」が好きだった。

    ※収録作品
    空襲のあと/尻の穴から槍が/サバ折り文ちゃん/したいことはできなくて/右むけ右/門の前の青春/名なしのごんべえ/砂漠に陽は落ちて/とんがれ とんがり とんがる/ふうふう、ふうふう/タップダンス/見えない来客/墓/月は東に日は西に/スリー、フォー、ファイブ、テン/また、電話する/たすけておくれ

  • うむ。先に読んだ話とずいぶんイメージが違うのは、話が戦後のことだからかなと思う。ほんと滅茶苦茶な時代だったんだな。最後の手術録は圧巻。

  • 霊感もあるんだ・・・・

  • だいすきな本。
    ごたごたした世のなかの隅っこであがく、妙ちきりんな人々。報われない、勝てない、器用になれない。文学って、そんな人たちにもちゃんと光を当ててくれるのだなあと思った。
    読み始めてすぐに、色川さんがすきになった。人の描きかたが優しい。

    「奇形の心境とはどういうものか、それを記すと長くなるけれども、一言で代表させれば、人と同じことをすると、笑われたり、びっくりされたりするのではないか、ということではなかろうか。誰もがやっている何気ない行為がためらわれる。同じ次元で、誰もがやっていることをするために心の戦いが必要となる。もっと意志的な場合は、むきになってそのことをやろうとする」
    この部分にどきっとする。

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