私の中の日本軍(下) (文春文庫 306-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167306021

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  • 上下巻同じものを記述


    物資がないとは方々で読んだけれども、その実情が恐ろしかった。
    食べ物がない→フィリピンで民家を襲う、などマシな方だった。
    新しく到着した兵士が飯盒を洗っていると、その米粒を拾う餓鬼みたいなものがいる。それは、先発隊の日本兵で、数日後には自分たちもそうなっていたほど、食料がない。
    死人の肉も食う。敵よりも、友軍が肉をくおうと撃ってくるのが、近いが故にわからない、常に緊張を強いられて怖いと……


    「トッツキ」と「イロケ」
    トッツキは、今で言うとなんだろう……折檻だろうか……暴力だ。上官から部下への暴力。何やかやと文句をつけて、水の入ったバケツを両手に持って立たせ、殴る。水がこぼれればまた殴る。こぼさないために必死で耐えなければいけない。それを上官が自分でだけやらせるのではなく、宿舎内よその部隊の部隊長を順に巡らせて、殴られて来いと言う。
    そんな恐ろしいものばかりだった……

    敵に投降した場合、位が高いほど情報を持っているから「大事に」扱われるのだそうだが、異様な精神状態になっているため、その状態が解放されると、なんでもかんでも喋ってしまうと。問われないことまで喋る。
    その際、アメリカ側に求めるのだと。
    「日本に帰さないでくれ」
    何が怖いって、軍事裁判で裁かれることより、自軍に戻っていびり殺される方が怖いというのだから、その程度が知れる。

    イロケは媚だが、さらなる上官への媚のために、部下に見た目だけの無駄な行動をさせる。うちはこんなにがんばってます、と主張するために……食料も乏しいのに……



    山本氏によればでっち上げの記事である「百人斬り競争」というものが当時掲載されたようなのだけれど、これが下巻の最後に紹介されていたために、ずーっとナンのことだと思いながら読まなければならなかった。これ、始めの方に置くべきだ。
    その百人斬りがでっち上げであることを証明するために、かなりの紙数が割かれていて、何を書いても終いにはこの話に行き着いてしまうので、そこが読みたいんじゃない…と思っていたら、途中に「百人斬りの嘘を証明するためにも書いた」ような記述があり、これも前書きあたりに欲しかった。
    将校ふたりが、どっちが先に敵を百人倒すか競争だ、ということをやったのが記事になったらしいのだが、これが捏造記事だと。東京日日新聞。
    ・日本刀は三人も切れば血のりや刃こぼれ、曲がりで使いものにならなくなるから、百人なんて切れるわけがない。
    ・人体はそんな簡単に切れない
    ・自分が死守すべき大砲を放って、勝手に敵を切りにいくわけがない
    などなど、非常にこまかく。

    当時の心理というものが、後世で言われているのとだいぶ違い、「陛下の兵士」であるから、天皇の命令なら聞くのかと言うと、兵隊というのは直属の上官の命令しか聞いてはならぬものだ、とか。
    貸し借りの概念だとか。
    言論の統制が非常に厳しいし、広告宣伝効果なども狙うので、内地の戦意高揚のために、手紙なんか嘘八百だと。届けばいい、自分が生きていることを知らせられればいい。だから、そういった手紙の真意を読むことは、暗号読解のようなものだと。
    軍隊は嫌だ、なんて書けない。生きて帰りたいとも書けない。代わりに「親孝行がしたいよナ」「ヨメさんがほしいよナ」と書くと。
    「お母さん」というのは、その平和な生活に戻りたいということなのだと……
    これを知ると、特攻隊が「お母さん」と叫んだり手紙に書いたのは、母を恋う気持ちも当然ながら、それだけではなかったのかと、思い至る。

    ジャングルでは食料がなくて人が生きていけない様や、服もドロドロに朽ちていく様や、ノミシラミには常にたかられ、人が死ぬ際にはもうハエがたかっていたりして死体が腐乱して黒くなって融けていく様や……
    ハエを増やしたのは、兵隊だと。多数の人間がいる。つまりは排泄物がすさまじい量になる。これがハエを増やしたと。
    東北の大震災のときに読んだのだったか……ハエがね、飛べないんだそうだ。食べ過ぎて、太りすぎて、ハエのくせに飛べないんだって……

    日本軍の移動手段といえば、二本の足。車はほんのすこし。燃料補給だってままならない。大砲も担いで移動。
    それと、米軍が車両で移動するし武器も運搬するのを考えたら。
    馬を搬送用に使えば、その馬係の兵隊は、毎日蹄鉄の手入れ、これをやると手に菌が入って恐ろしいことになる。馬は歩き続けると足がむくむからワラでこする、水を飲ませるために、自分が空腹と疲労でヘトヘトでも水を汲みに行く……

    日本が戦争に追い込まれていったのはわかるが、本当に、無謀でしかない。そしてこれを反省されていないというのは、もっともだ……
    感情論であって、理論で反省されることがないというのは、昨今のニュースでも変わらないものねえ……

  • 下巻では、日本刀の性質などを詳しく検討して、「南京百人斬り」の嘘を鋭く指摘しています。

    南京大虐殺を否定する言説に、中国人には「白髪三千丈」に代表される誇大な物言いがあることを指摘する人がいますが、こうした意見を著者は厳しく批判しています。

    「虚報を発し、虚報に感激し、美談やら感激やら懺悔やらで自らをごまかし、徹底的に事実を究明せず、すべてを「自決セエ」という形で隠蔽し、公開の軍法会議すら持ちえなかったわれわれ」の側にこそ、責任はあるのであり、戦時中に虚報に酔った私たちが、戦後2人の少尉に無実の罪を着せて死に追いやったのだと述べられています。

    ここには、「空気」に流され、「時代の論理」の前になし崩し的に従ってしまう日本人の、戦時中も戦後も変わることのない病弊に対する厳しい批判があるように思います。

  • 商品の説明 amazon
    自己の軍隊体験を元に日本軍についての誤解や偏見をただし、様々な戦争伝説をものの見事に粉砕した名著。

  • うる覚えですが、確かこの著作の冒頭に「今の世の中は戦争体験者の言うことを信用せずに、戦争のことを何も知らない戦後生まれの学者・評論家の言うことを信用するのだからおかしな世の中だ」というような主意の言葉が述べられていたと記憶します。違うかな?…。

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著者プロフィール

1921年、東京都に生まれる。1942年、青山学院高等商業学部を卒業。野砲少尉としてマニラで戦い、捕虜となる。戦後、山本書店を創設し、聖書学関係の出版に携わる。1970年、イザヤ・ベンダサン名で出版した『日本人とユダヤ人』が300万部のベストセラーに。
著書には『「空気」の研究』(文藝春秋)、『帝王学』(日本経済新聞社)、『論語の読み方』(祥伝社)、『なぜ日本は変われないのか』『日本人には何が欠けているのか』『日本はなぜ外交で負けるのか』『戦争責任と靖国問題』(以上、さくら舎)などがある。

「2020年 『日本型組織 存続の条件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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