本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784167306052
作品紹介・あらすじ
「帝国陸軍」とは何だったのか。すべてが規則ずくめで大官僚機構ともいえる日本軍隊を、北部ルソンで野砲連隊本部の少尉として惨烈な体験をした著者が、徹底的に分析追求した力作。
みんなの感想まとめ
組織の混乱とその影響をテーマにしたこの作品は、帝国陸軍の実態を生々しく描写しています。著者は、北部ルソンでの体験を通じて、戦争の現実と組織の非効率性を鋭く分析しており、特に「員数主義」や「自転する組織...
感想・レビュー・書評
-
著書が見た、フィリピンの戦場で、待っていたのは、孫子の兵法ではく、非条理であった。
そして、日本は、ソ連や中国が仮想敵国であったが、米国は仮想敵国でもなく、戦うつもりは全くなかった。そして、フィリピンに対する深い知識をだれも持ち合わせていなかった。
気になったのは、以下です。
・人は確かに、ある時代のある場所に、まず、生まれ出た、ということを、ある時代のある場所で、最後には死ぬことと同じように、選択の余地なき前提すなわち一種の、宿命、として受け取らざるを得ない
・宿命的にものごとを受け取ると、人は、死に対すると同様、それを見まい考えまいとする
・あわてる、は、本当の、急ぐ、にはならず、過去の方式をただ時間をちぢめただけ。
・すべてが急げや急げの詰め込み主義、しかも今までの方式のまま、あれもこれも、つめこもうというわけで、急ぐ、にふさわしい新しい方法を採用したわけではない
・そのくせ、みな急いでいた、あわてていた、だがリアリティが欠けていた。
・そこには、はっきりした目標も、その目標に到達するための合理的な方法の探究も模索もない。
・いきあたりばったり、とか、どろなわ、とかいった言葉がある
・考えてみれば、この予備士官学校の教育の基本そのものが、奇妙なものだった。
・というのは、学生をあれほど信用しなかった軍が、実は学歴偏重主義で、幹部候補生の選抜基準は1に学歴なのである。
・帝大出の若僧課長の隣に、定年まじかの課長代理や係長がおり、課長はどんどん昇進していくが、彼らは動かない。
・そこで本当に組織を握っているのは結局彼らである
・だめですな。結局、壊滅するまで同じ行き方を繰り返しながら、それ以外に方法がないという状態になっちまうんです。
・人間は、置かれた実情が余り苦しいと、未来への恐怖を感じなくなる。
・というのは、いまの状態に耐えているのが精一杯、どうでもいい、という形で、それ以外の思考が停止するからである
・比島の基本的な経済力とその特殊性さえつかんでいなかった。これは全く、正気の沙汰とは思えない
・比島派遣第14方面軍のほとんどすべては、餓死である
・日本軍のやり方は、結局、ひと言でいえば、どっちつかずの中途半端、であった。
・知らないなら、無能、なのがあたりまえであろう
・またか、私は内心で叫んだ。そして、イライラしてきた。
・何度も、何度も、私自身がこの種の煮え湯を飲まされてきた。
・比島が、まるで、兵器・弾薬・食糧・機材の膨大な集積地であるかのような顔をして、現地で支給する、現地で調達せよ、の空手形を乱発しておきながら、現地ではそのほとんど全部が不渡り、従って私はもう、何も信用していない
・われわれは、全員が、文字通り夜も寝ないで働いてきた。末端の一兵士に至るまで、重労働につぐ重労働、その過重な負担は今の人には空想もできまい。
・だが、その労働の成果は、決心変更、のたびに、次から次へと廃棄されていった。
・私は、最初、補給と住民折衝に専念せよと言われたので、はじめのころの状態はくわしく知らないのだが、四水後退は、指揮班長たちにとっては、実に四度目の変更だったのである
・人間は習慣の動物である。はじめ異常と感じたことも、やがて、それが普通になる
・友達だから、その個人には最後まで信義を守る。対日協力とはまた別の基準であった。
・自分が命を縮めるだけ家族の命がのびる、という発想、この考え方で自己を支えていく生き方は、いかなる、布告、にもその契機があったとは思えない
・しかし、当時の彼を、彼だけでなく多くの人を、最後の土壇場でなお支えていたものは、表現は違っても、実は、犠牲になって生きる、というこの考え方であった。
・国家・民族・天皇・軍、そういった虚構は、もう消え、残るのはそれだけであった。
・私は長い間、この考え方を、家族主義的伝統に基づく日本的な自然発生的な考え方とみていた。
・したがって、フランクルの、愛の死、を読んだとき、これとよく似た一面をもつ考え方が、同じような考え方が、アウシュヴィッツの彼を支えていたことを知り、非常に驚いた。
・帝国陸軍では、本当の意思決定者・決断者がどこにいるのか、外部からは絶対にわからない。
・というのは、その決定が、命令、という形で下達されるときは、それを下すのは名目的指揮官だが、その指揮官が果たして本当に自ら決断を下したのか、実力者の決断の、代読者、にすぎないのかは、わからないからである。
目次
“大に事える主義”
すべて欠、欠、欠…。
だれも知らぬ対米戦闘法
地獄の輸送船生活
石の雨と花の雨と
現地を知らぬ帝国陸軍
死の行進について
みずからを片づけた日本軍
一、軍人は員数を尊ぶべし
私物命令・気魄という名の演技
「オンリ・ペッペル・ナット・マネー」
参謀のシナリオと演技の跡
最後の戦闘に残る悔い
死のリフレイン
組織と自殺
still live,スティルリブ、スティルリブ…
敗戦の瞬間、戦争責任から出家遁世した閣下たち
言葉と秩序と暴力
統帥権・戦費・実力者
組織の名誉と信義
あとがき
ISBN:9784167306052
。出版社:文藝春秋
。判型:文庫
。ページ数:352ページ
。定価:660円(本体)
。発行年月日:1987年08月詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
陸軍幼年学校の最終学年で終戦を迎えた父のことを想い、涙しながら読んだ。戦時中だけでなく、戦前戦後を通して人生を翻弄された父や当時を生きた人たち、もちろん戦争の犠牲となった諸外国の方々が不憫でならない。なぜこのような無意味で無謀な戦争が起こってしまったのか、それは帝国陸軍という組織が「自転」するためであったという。一部の人間が作り上げた「虚構」を守る、というバカげた目的にのためにどれほど多くの無辜の人命が犠牲になったことか。そしてその責任を追及されるべき人々が罪を問われずに戦後の政財界で地位を確保し続ける…。理不尽であることに加え、形を変えてその後も身近に見える構図である気がする。
総括に重きを置かない風潮の日本で、山本七平さんの丁寧で冷静な分析を多くの人に読んでもらいたいと心から願う。 -
1987年の日付アリ、34年前に読んだ本を、改めて読み返しつつ、帝国陸軍の混乱(欠、欠、欠)と、コロナ感染症の時代における組織(政府、医療体制の構築等)の混乱に同じような物語を感じます。昭和18年8月(1943年8月)、学徒動員された山本七平は、豊橋第一陸軍予備士官学校士官学校で対ロシア戦での砲兵の在り方を学びつつ、今、そこにある戦い(南太平洋での米軍との戦い)についての講義が無いことに驚く。(今、教えられていることがまったく役に立たない、という事実に)そして、陸軍は、対米戦争の準備は、殆ど行っていないというリアルに思いが至る。ではどうするか、と考えつつ原隊に戻ると、そこにあるのは、普通の忙しい軍隊の日常。そんな流れのままに、南方方面への地獄の船旅に送り出され、更にフィリッピン戦線での惨憺たる負け戦、生きながらえての俘虜としての日々。わずか30数年前の出来事を振り返る、山本七平の筆致には、臨場感があります。一下級将校が見た、帝国陸軍の敗北のリアルであります。それにしても、帝国陸軍とは酷い組織だったな、と思いつつ、今でも似た組織が身近にあること等に想いが至ります。いやはやどうしたものか、と溜息ですが、★五つであります。
-
・バターンの時米軍には花の雨が降った。サイゴンで日本軍には石の雨が降った。護送の米兵の威嚇射撃のおかげでリンチを免れた。日本では内地で重傷を負ったB29搭乗員を軍が住民のリンチに委ねた例がある。
・員数主義と私物命令、なかなか敗戦を信じずジャングルを出てこなかった例は「命令」への不信が大きかったのではないか。
・米の砲弾は一つずつコールタールで防湿したクラフト紙の円筒に入っているが、日本製は一つずつ薄い四角の罐に入ったものが四発ずつ分厚い木箱に釘付けで荒縄がかかっている。陸軍は世界最高の発射速度の砲(九六式十五榴)を造ったが、実戦ではやっかいものだった。集積所から砲側まで砲弾を運ぶのが間に合わない。
・過去の日本は自らの描いたシナリオによって自ら破滅した。興味深い事にこれと同じ表現が赤軍派の永田洋子への表現に使われていた。自己の持つ未知の未来への不安を社会に拡散して解消しようと言う一つの逃避は、確かに何かを演じつつ破滅する道であろう。人はいかにしてこの道を逃れてリアルでありうるか。 -
-
「統帥権はなぜ独立したのか」
https://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51882708.html -
2025/01/19「一下級将校の見た帝国陸軍」
「日本人論」のはしりで、社会的インパクト大きかった。成功体験を肯定し過ぎて、環境変化に対応できなくなる。戦前の軍事大国も、戦後の経済大国も同じ。
「パラダイム」が信仰になってしまい、客観視できない。客観視する者は村八分される。
良くも悪くも「運命共同体」
①組織の自転 大局・戦略なく日常業務に埋没
②員数主義 形式的・数合わせ
本書は必読・要再読。
2016/12/20
「自転する組織」日本組織のキーワード
あらゆる組織は無意味・無目的の『自転』をはじめ、
その自転が無意味でないことを自己に納得させるため、
虚構の世界に入ってしまう。
形式化した軍隊では『実質よりも員数、員数さえあえば後はどうでも』という思想が
上下を通じて徹底していた。
自転する組織の上に乗った、「不可能命令とそれに対する員数報告」で構成される『虚構の世界』を事実としたからである。
実質は問わない
組織の内実が目的に対する合理的なものか否かは、考えていなかった
いわば将棋の駒をいかに動かすかは考えても、駒の質を根本から変えて別の機能を付与して新事態に対処しようとは、夢想だにしなかった
総合戦略・計画がない あっても机上のもの
そもそも全体を統制する「キャリア」と実務を采配する「ノンキャリア」は交わらない
一切が相手の出方への反射的対応で、総合的計画性はない
連隊の自転する組織の中で日常業務に埋没していれば、その機構の永久存続を信じる -
衝撃を受けました。
目前の仲間うちの摩擦を避けること
奇妙な「気魄」でものごとを解決できると思うこと
「言いまくり型私物命令」を出す人間が組織を牛耳ること
これの克服ができなければ、
「日本全体が第二の帝国陸軍となる」とされています。
50年前に書かれた本ですが、現代日本の病巣を正確に表しています。
第二次世界大戦での敗戦から何も学ばず、同じことを繰り返して衰退の一途を辿る日本。そろそろ考え直したほうが良いと思いますが、考え直すことが大の苦手な国民性からしてもう救いようは無く、ひたすら衰退をし続けることでしょう。
-
-
当事者だからかける事を淡々と、だけど臨場感を持って、かつ納得感が感じられる内容で書かれている。今の日本の社会にも旧陸軍の悪弊がどこか残ってないか?
-
"大に事える主義"◆すべて欠、欠、欠……。◆だれも知らぬ対米戦闘法◆地獄の輸送船生活◆石の雨と花の雨と◆現地を知らぬ帝国陸軍◆死の行進について◆みずからを片づけた日本軍◆一、軍人は員数を尊ぶべし◆私物命令・気魄という名の演技◆「オンリ・ペッペル・ナット・マネー」◆参謀のシナリオと演技の跡◆最後の戦闘に残る悔い◆死のリフレイン◆組織と自殺◆still live, スティルリブ、スティルリブ……◆敗戦の瞬間、戦争責任から出家遁世した閣下たち◆言葉と秩序と暴力◆統帥権・戦費・実力者◆組織の名誉と信義
著者:山本七平(1921-1991、東京)[青山学院卒]作家 -
員数主義、気魄といった文化は、今の日本にも持ちこされている気がする。だいぶ薄まってきた気はするけど…。フィリピンでの軍の生活は本当に悲惨。やっぱり戦争はいかん。
-
「空気の研究」よりもこちら
-
<目次>
“大に事える主義”
すべて欠、欠、欠・・・・。
だれも知らぬ対米戦闘法
地獄の輸送船生活
石の雨と花の雨と
現地を知らぬ帝国陸軍
死の行進について
みずからを片づけた日本軍
一、軍人は員数を尊ぶべし
私物命令・気魄という名の演技
「オンリ・ペッペル・ナット・マネー」
参謀のシナリオと演技の跡
最後の戦闘に残る悔い
死のリフレイン
組織と自殺
still live, スティルリブ、スティルリブ・・・
敗戦の瞬間、戦争責任から出家遁世した閣下たち
言葉と秩序と暴力
統帥権・戦費・実力者
組織の名誉と信義
あとがき
2013.12.29 池田信夫blogで見つける。
2014.02.12 借りる
2014.03.03 読了
2014.03.13 ブログ
https://naokis.doorblog.jp/archives/imperial_army.html
2022.12.21 品川読書会で話題にする。 -
運命を達観した大学生が学徒出陣し、死線を乗り越え、捕虜生活までの「体験談」と「現代での分析や振り返り」を随所に織り込んだエッセイ以上で論文未満の名作。
読み終えた2017年夏現在、
著者が実経験から、後輩たる我々日本人や(企業)組織に対し、警鐘した「戦略欠陥の克服」や「問題提起する義務」に対して真摯に向き合っているか?と思うと、悩んでしまう作品。
この本が好きな人におすすめの本
著者プロフィール
山本七平の作品
本棚登録 :
感想 :
