サイダーハウス・ルール 上 (文春文庫 ア 7-1)

  • 文藝春秋
3.82
  • (66)
  • (51)
  • (93)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 551
感想 : 38
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (532ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167309640

作品紹介・あらすじ

セント・クラウズの孤児院で、望まれざる存在として生を享けたホーマー・ウェルズ。孤児院の創設者で医師でもあるラーチは、彼にルールを教えこむ。「人の役に立つ存在になれ」と。だが堕胎に自分を役立てることに反発を感じたホーマーは、ある決断をする-。堕胎を描くことで人間の生と社会を捉えたアーヴィングの傑作長篇。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  1930年代のアメリカ・メイン州で、性的虐待や売春などによって望まぬ妊娠をした女性を救おうと決意し、違法行為である堕胎を行う産科医のウィルバー・ラーチ。彼は中絶をしない、またはできない女性の子どもは出産後に引き取り、自らが院長を務めるセント・クラウズ孤児院で惜しみない愛情を注いで育てていた。
     本書の主人公は孤児院で最年長の男子ホーマー・ウェルズで、15歳頃からラーチ先生の片腕として分娩室の手伝いを始める。医学的知識も徐々に身につき、堕胎とは何なのかを次第に理解していくホーマー。だが彼は中絶する女性よりもむしろ孤独な出産に臨む妊婦に寄り添うようになる。
     そんな折、未婚の美男美女のカップル・ウォリーとキャンディが堕胎のためにセント・クラウズを訪れ、幼い孤児たちは彼らの養子になりたいと沸き立つ。ウォリーはリンゴ農園の経営者の息子で、同じ年頃のホーマーに興味を持ち、家へ来ないかと誘う。外の世界を見たことがないホーマーは、ラーチ先生の許しを得て20歳手前にして初めて巣立ちの時を迎える。

     ドクター・ラーチが聖人君子ではなく、日々の業務に追われるちょっと怒りっぽい普通の老医師として描かれていて、とても親しみが湧く。その崇高な使命と性にまつわるあけすけでどぎつい描写の対比がいい。ジョン・アーヴィングの文章は言葉の端々まで皮肉たっぷりで思わず笑ってしまうし、登場人物一人一人にリアリティーがあり作者が彼らをこよなく愛しているのが伝わってくる。
     特に、無邪気にいつか誰かが自分をもらってくれるに違いないと期待している孤児たちのいじらしさがたまらなくかわいい。毎晩寝る前にホーマーが子どもたちに本を読んでやり、ラーチ先生が「おやすみ、メインの王子たち!ニューイングランドの王たちよ!」と呼びかける場面に心が温かくなる。

  • 孤児ホーマーを中心に、またもや奇想天外な物語が始まった。孤児院長ラーチは産婦人科医。堕胎が禁止されていた時代に、推進派だった。相変わらずの長編ドタバタで、これからどうなるのだろう。老いもテーマの一つか。

  • 堕胎のシーンなど辛いが今も昔も変わらないかも。
    孤児院で読み聞かせされているのがディケンズなのがとっても良い。

  • 映画版には出ていない登場人物メロニーのキャラクターが素敵すぎます。

  • 孤児院で育った主人公。孤児院で堕胎を施す父のような存在の医師に反発して新たな地へと身を預ける。人間の生と社会を捉えると同時に傷を負った少年少女の成長から人生を考えさせられる。どのように話は展開するのだろう?

  •  第二次大戦直前のアメリカ。孤児院で育ったホーマーは孤児院の長であるラーチ医師から医療技術を伝授される。しかし堕胎に反対するホーマーは孤児院を離れりんご農園で働くことを選ぶ。

     何かを求めて外に出て色んなものを得るんだけど、最後は人の為に生きる為に元の場所に戻っていく。
     この物語の中にはいくつもの重要なルール破り(嘘)があるんだけど、それらが最後にうまく落ち着くところに落ち着く。そのカタルシスは見事。
     人生の最も大事なルールは誰かの為に生きる、自分が生きている意味を見つけることなのだと思う。

     「オウエンの為に祈りを」と同じく、映画版は数年にストーリーを凝縮し、小説版は何十年の時の流れの中で人生を通してストーリーが語られている。どちらも映画でまず興味を持って、小説版でじっくりその世界に浸かるのがいい楽しみ方。

  • まだ前半しか読んでいないので、途中までの感想。
    アーヴィングの作品を読むのは三作目だけど、やっぱりいつもの構成だった。この上巻のほとんどが主人公とその周りのキャラ固め等の土台作りに当てられていて、タイトルにも出ている主要な舞台のはずの「サイダーハウス」の登場は四百ページを過ぎてからだ。
    もっとも、いつも通り文章にパワーがみなぎっているのでそこまで読むのが苦であるわけではない。ただ、「ガープの世界」や「ホテル・ニューハンプシャー」と比べると舞台や小道具、キャラクター等が地味な分、前二作ほど興味がそそられない。熊もまだ出てないし。
    とはいえ、下巻を今ちょっと開いた所思うの他「早く読みたい」とワクワクしたので、心はガッチリと捉えられてしまったよう。
    下巻は9月中に読み終わりたい。

  • いつも思うけど、ジョン・アーヴィングのレビューってまず書けない。
    でもこれぞアメリカって感じ。
    先進的なニューヨークでも、多人種の混じる危ない裏通りでもなく、ほんとのアメリカ(って知らんけど)。

  • これからもずっと一番好きな本だと思う。

  • 生きていくには「ルール」がいっぱいあるんだよ。

    大事なルールはね、「役に立つ」ってこと。

    ほんとかな?

    堕胎は人殺しかな?それとも誰かの役に立つことことかな?

    読んでみて。長くて面倒だったら映画でもいいよ。

全38件中 1 - 10件を表示

ジョン・アーヴィングの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
フランツ・カフカ
トルーマン カポ...
ポール オースタ...
ポール オースタ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×