- Amazon.co.jp ・本 (532ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167309640
作品紹介・あらすじ
セント・クラウズの孤児院で、望まれざる存在として生を享けたホーマー・ウェルズ。孤児院の創設者で医師でもあるラーチは、彼にルールを教えこむ。「人の役に立つ存在になれ」と。だが堕胎に自分を役立てることに反発を感じたホーマーは、ある決断をする-。堕胎を描くことで人間の生と社会を捉えたアーヴィングの傑作長篇。
感想・レビュー・書評
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1930年代のアメリカ・メイン州で、性的虐待や売春などによって望まぬ妊娠をした女性を救おうと決意し、違法行為である堕胎を行う産科医のウィルバー・ラーチ。彼は中絶をしない、またはできない女性の子どもは出産後に引き取り、自らが院長を務めるセント・クラウズ孤児院で惜しみない愛情を注いで育てていた。
本書の主人公は孤児院で最年長の男子ホーマー・ウェルズで、15歳頃からラーチ先生の片腕として分娩室の手伝いを始める。医学的知識も徐々に身につき、堕胎とは何なのかを次第に理解していくホーマー。だが彼は中絶する女性よりもむしろ孤独な出産に臨む妊婦に寄り添うようになる。
そんな折、未婚の美男美女のカップル・ウォリーとキャンディが堕胎のためにセント・クラウズを訪れ、幼い孤児たちは彼らの養子になりたいと沸き立つ。ウォリーはリンゴ農園の経営者の息子で、同じ年頃のホーマーに興味を持ち、家へ来ないかと誘う。外の世界を見たことがないホーマーは、ラーチ先生の許しを得て20歳手前にして初めて巣立ちの時を迎える。
ドクター・ラーチが聖人君子ではなく、日々の業務に追われるちょっと怒りっぽい普通の老医師として描かれていて、とても親しみが湧く。その崇高な使命と性にまつわるあけすけでどぎつい描写の対比がいい。ジョン・アーヴィングの文章は言葉の端々まで皮肉たっぷりで思わず笑ってしまうし、登場人物一人一人にリアリティーがあり作者が彼らをこよなく愛しているのが伝わってくる。
特に、無邪気にいつか誰かが自分をもらってくれるに違いないと期待している孤児たちのいじらしさがたまらなくかわいい。毎晩寝る前にホーマーが子どもたちに本を読んでやり、ラーチ先生が「おやすみ、メインの王子たち!ニューイングランドの王たちよ!」と呼びかける場面に心が温かくなる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
孤児ホーマーを中心に、またもや奇想天外な物語が始まった。孤児院長ラーチは産婦人科医。堕胎が禁止されていた時代に、推進派だった。相変わらずの長編ドタバタで、これからどうなるのだろう。老いもテーマの一つか。
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堕胎のシーンなど辛いが今も昔も変わらないかも。
孤児院で読み聞かせされているのがディケンズなのがとっても良い。 -
映画版には出ていない登場人物メロニーのキャラクターが素敵すぎます。
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孤児院で育った主人公。孤児院で堕胎を施す父のような存在の医師に反発して新たな地へと身を預ける。人間の生と社会を捉えると同時に傷を負った少年少女の成長から人生を考えさせられる。どのように話は展開するのだろう?
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いつも思うけど、ジョン・アーヴィングのレビューってまず書けない。
でもこれぞアメリカって感じ。
先進的なニューヨークでも、多人種の混じる危ない裏通りでもなく、ほんとのアメリカ(って知らんけど)。 -
これからもずっと一番好きな本だと思う。
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生きていくには「ルール」がいっぱいあるんだよ。
大事なルールはね、「役に立つ」ってこと。
ほんとかな?
堕胎は人殺しかな?それとも誰かの役に立つことことかな?
読んでみて。長くて面倒だったら映画でもいいよ。