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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784167316075
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みんなの感想まとめ
盲目の落語家を主人公にした短編集は、幽界と現実の狭間で揺蕩う独特の世界観を描き出しています。各篇は独立した物語でありながら、落語の噺を思わせるメタ的な構造を持ち、読者を引き込む工夫が施されています。登...
感想・レビュー・書評
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盲目の落語家の、少し不思議な日常と周囲との交流を描いた10篇の連作短編集。
この主人公の盲の目を通して見る、幽界と現実の狭間を揺蕩う様な掴みどころの無い作品世界が時として現実よりも迫真に人の機微を映し出しハッとする。
頻出する落語の噺も、気が利いていて面白いが、各篇連作ながらそれ自体が噺のような展開で完結しており、メタ的構造も持ち合わせる。
魅力的なレイヤーに富み、久々に好みど真ん中の作品だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ありそうで、無い、無さそうで、ある。そんな世界を円木から感じ取った。円木の回りにいる人たちはみんななにかを抱えていて、悪人はおらず、良い人とは限らない。円木がゆるゆると世界を歩くのにみんなまとわりついているような気がした。
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一章ごとに落語を聞いているような感覚になる。「円木さん」「はい」「わたしのこと、忘れたりしない?」「忘れたり、思い出したり・・・」「いいの、それで。ありがとう」と、いい会話がそれぞれの章にある。
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エンターテインメント小説の面白い条件をすべて満たしている。魅力的な人物、新奇な情報、意外性、そして時代性。
下手な時代小説や純文学よりも、辻原登。 -
思わず唸るほど上手い。
そりゃ、芥川賞、川端康成文学賞、司馬遼太郎賞、大佛次郎賞と文豪の冠の賞を総なめ、この本だって谷崎潤一郎賞受賞なわけで上手いのは当たり前なのだが…。(その割には知名度が低いのはなぜ?)
たとえば、
第3話の冒頭、体が動かなくなる奇病に冒され入院する女性について、彼女の肌にとまる蚊の視点、
刺される女性のかゆくてもかけない恐怖、そして訪ねてきた円木の視点と変化させながら書く病室の描写。
・・・唸る。
物語は、糖尿病からの不摂生で目が見えなくなった噺家・遊動亭円木を主人公とする連作で、人情話としてさらっと読めばいいんだけど、どうもひっかかる。
第1話で円木が相撲を桟敷席で観ながら、「呼び出しで出身地を言うのはいいなあ」と思う。
すると、第2話「大切な雰囲気」で、円木の昔の女が、テレビでアナウンサーが同じようなことを言っていたのを聞いて
「きっと遊動亭円木の話を読んだのに違いない・・・」という話をし、それについて問い詰められてごまかしたり、
第6話「金魚」で、見知らぬ男が、
「遊動亭円木さんでしょ。読みましたよ。江ノ島でもご活躍。・・・」
と声をかけ、土方巽(!)の語りのテープを渡す。
とか、メタフィクションの様相を示す。特にそれが全体に関係してくるかというとそうではなく、それだけ。
これは何なんだ??
最後に遊動亭円木の
「わたしは落語になります」
という決意。
落語をすべておぼえて落語の図書館になる、ということなのだが、
円木自身が物語へとなってしまうような錯覚を覚える。
聞くように噺を語るというという円木の話芸。
この「遊動亭円木」という物語自体を、円木が聞いているのか?
ザワザワとした気持ち悪いズレを感じる。
辻原登の「夫婦幽霊」もそうだが、落語というのは、メタフィクションと相性がいいのかも、
というか落語自体がメタフィクション的?
たまに噺家が、自分のことや、寄席の状況、ニュースなどを噺の中の登場人物に語らさせるというわかりやすいメタフィクション的な側面ももっているが、
単に古典落語をきっちりとやる場合でも、落語自体の「物語」を聞くのではなく、喬太郎、談志、志ん生の「語り」として楽しむという二重構造を持っているというメタフィクション的な構造がある。
うーん、うまく説明できないので別の機会に。 -
辻原登という作家を知らなかった。昭和20年生まれで103回目の芥川賞受賞作家。芥川賞はつい最近では136回目の授賞式が行われたばかり。年に二回受賞者が誕生するので…という言い訳をしながら殆ど受賞作を読まなくなった。『エーゲ海に捧ぐ』あたりからかもしれない…と調べてみたら大岡玲氏も受賞者なんだ…。
話がそれてしまった。
和歌山の文化人として著名な方と親しくお会いする機会をいただいて「辻原登」さんのことを知った。彼女は「ひろしちゃん…(本名)」とまことに親しげで誇らしげ。
「和歌山県出身の作家は佐藤春夫、中上健次だけじゃないのよ。ひろしちゃんは芥川賞、読売文学賞、谷崎潤一郎賞、川端康成文学賞、大佛次郎賞と全部の文学賞を取ったから、次はノーベル賞しか残ってないの」
内心の太宰治賞は?というつっこみはなしにして、芯から驚いた。そして知らなかったことを恥ずかしく思った。
さらに「芥川賞の頃の小説は何を言ってるのか難しくてわからなかったけど、この頃のはかなりやさしくなってきてるの」と彼女は仰った。
そこでまずは読まなくてはと『百合の心・黒髪―その他の短編』と1999年出版の『遊動亭円木』(谷崎潤一郎賞)2004年『枯葉の中の青い炎』(川端康成文学賞)の三冊を取り寄せた。最近作の『花はさくら木』(大佛次郎賞)はこれらを読んでからのことにした。
『百合の心・黒髪』はたしかに難解だ。この難解さは中上健次の読み辛さとは別種でサスペンスなのに哲学的すぎて読解できないという悲しい結末。が、『遊動亭円木』にはたちまち引き込まれた。
遊動亭円木というのは主人公の名前。公園にある遊具ではない。彼は「自分の闇を忘れたり思い出したり」している盲目の落語家だ。この設定だけでもすごい。そして、そういう主人公だからこそ人の世話になることが多く、無数の傷もついているから、ほんとに触れあう人々にやさしい。そんな馬鹿なと思う場面でもその優しさに説得されて納得し、涙ぐんでしまうほどだ。
一話読み切り短編の人情話が十。その中で遊動亭円木は生き続け真打ちにまで昇進してゆく。
小説家って凄いな。
遊動亭円木という噺家が実在してるように思った。
浅田次郎のホテルシリーズが頭の端をよぎったけれど、いや、違う!私にはやくざと噺家の違いだけではなく、凛とした自尊心がバックボーンにあるのが面白いのひとことで片付けられないように思われる。
カバーで金魚が泳いでいる。これは読めばなるほどと思うだろう。
実は一緒に野沢尚氏の小説とシナリオも届いていて、早く読みたくて仕方ない。でも、まず、彼女の声が消えないうちに辻原さんの三冊を読んでしまわなければならない。さあ!これから『枯葉の中の青い炎』の扉を開こう。
これも短編小説が六つ。短編小説は構成が命。楽しみ。
「あの子、うちに来ても小説家になりたいって言ってたけど、ほんとになっちゃったのよ」
彼女はコロコロと笑っていた。
やっぱり、凄い。スゴスゴ -
盲目の落語家の不思議な話。
なんかいい本ないかな、とネットで検索していたとき偶然みつけたんだったかな……。
近所の本屋で探して買ってきました。
本当に不思議な雰囲気の話なんですが、それが気に入ってます。
冴えない落語家が主人公なのですが(でも落語は上手です。真打ちだし)、何だか色っぽいですよ。
これの続編が読みたくて他の短編集も買ったのですが、そこではちょっと落胆しました。おもしろくなかったのではなく、円木さん、あんた……と思った……。
まあそれはそれとして。
文章もうつくしいです。 -
落語家が主人公と言うと「しゃべれどもしゃべれども」を思い出してしまいますが、青春小説っぽい「しゃべれども」とはちょっと趣の違う人情物語です。
すごく存在感のある小説でした。しかし、どこが良いのかと聞かれても答えには困ってしまうのです。そこでとりあえず箇条書きででも。
・川上弘美さんほどではないにしろ、現実の中に時に幻想が混じりこみます。不思議な感じです
・落語家が主人公ですから落語の話が出てきます。これがなかなか良い
・教養小説の趣もあります
・登場人物がみな存在感があります
何か言い尽くせませんが。。。
円木を主人公にする短編は、こんな形で一冊にはまとまって無いのですが他にもあるようです。これから探して読んで行きたいと思います。 -
傑作中の傑作
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盲目の落語家。けっこうしたたか。その後が気になる。
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堀江敏幸の解説がひどい
一番いいと感じたのは表題作。
佐々木敦や筒井康隆のほめる「大切な雰囲気」は、試みとしてはおもしろい。しかし、それほどすごいメタ要素とは思はなかった。
よくわからない短篇もあり、辻原の「抱擁」を読んだ時にも思ったが、辻原だってわからずにあいまいに書いてゐるのではないか。
どうも都合のよすぎる、ありえない箇所が多々ある。
描写が省かれてストーリーに重きを置いた文章は、盲なので描写が少いのかと推測したが、どうやら辻原の小説の傾向らしい。
堀江敏幸の解説がひどい。意味不明である。
不発弾といふ比喩が下手だし、《金魚池のあおみどろに淀んだ水の熱がどんなふうに発酵してきたのか》なんてほとんど意味不明である。わかるやうに書いてください。
買った文庫は第2刷で、初版から14年も経って増刷してゐた。異例だ。谷崎賞のおかげか、宮下奈都がほめたおかげか。 -
堀江敏幸さんが解説を書いているので読みました。
最初の話以外は、よくわからなかった。 -
上手い、面白い。円木の飄々とした、悪意のない性質は盲になってから発露したのだろうか。作中に出てくる明楽の拵えた庭園の水の如き人である。
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真打になる前に盲目となり引退した落語家・遊動亭円木(ゆうどうていえんぼく)の日常に起こる不可思議を描いた連作短編集。落語家らしい軽妙な語り口が効いていて、突拍子もないことが起こっても、真相がどうだったか現実なのか幻覚なのか等と野暮なことを聞くもんじゃないと思わされてしまう。金魚池の底には深い深い穴があって巨大な金魚が深海魚よろしく泳いでいるのだし、杖に跨って秋田から飛翔して帰ってきたりもできるのだ。
円木が暮らすボタン・コート(賃貸マンション)を経営している妹夫婦(由紀、綱木)、その住人たち(陳&安莉、山下、堀)、不動産屋の明楽のだんな、だんなを15年支えた亜紀子さん、円木の元カノの矢野多恵、円木と恋におちる秋田の寧々さんら、わけあり住民や、粋な友人や美女たちが円木の周りには集まってくる。だんだんキャラクターに愛着も出てくるので連ドラ感覚でもっと読みたいと思ってしまう。先に読んだ文庫の『抱擁~』に、円木ものが2作収録されていたのでついでに読み直したらようやく色々腑に落ちて、とりあえず明楽の旦那が無事でよかったです。
ところで土方巽の謎の語りが入っているカセットテープというのは実在するのかしら?あるのなら聞いてみたい。
※収録
遊動亭円木/大切な雰囲気/短夜の雨/夜が安莉に駆けこむ/探偵/金魚/強きうなじ/笑いの郷/足にさわった女/べけんや/解説:堀江敏幸 -
2004-03-00
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『遊動亭円木』の連作がなぜ読者の身に沁みてくるかといえば、円木の「底意がない、悪意がない」その飄々としたたたずまいの影に、なんとも言いしれぬ破壊衝動と、破滅への鋭敏なアンテナがひっそりと埋め込まれているからである(文庫本の解説より)
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落語と落語家、江戸の粋、大人の所作。だいじです。
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噺家の世界は深淵なのである。きっとそうなのだ。深くて、現実世界と異世界の境界を行ったり来たりする。それをひとりの語りで構築する魔術を使うのが噺家だ。
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詳細は覚えていないけど(すみません)、今でも何となく温かい気持ちと共に思い出す話。梨木果歩さんの世界と共通するような。
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目の不自由な落語家が主人公。第一話で友人たちに金魚池に放り込まれる。円木さん、死んじゃって、第2話以降は死後の夢?なんて変なことを考えた。
彼女との縁も普通じゃない。親の仇の娘だよね。全然そういうこと気にしてないみたいだけど。
そんな周囲の人との関係がちょっと緊張感がある。怖いような可笑しいような短編が続く。
辻原さんは物凄く巧い。他の本も読んでみようと思う。
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