村田喜代子傑作短篇集 八つの小鍋 (文春文庫 む 6-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 165
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167318543

感想・レビュー・書評

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  • 8篇の村田喜代子傑作集。

    このひとは「おばあさん」を描かせたら最高。
    ほのぼのあり、しみじみありだ。

    中でも「白い山」の中にたくさん出てくるおばあさんのなかで、腰がひらがなの「く」の字ではなく「つ」の字になっているおばあさんがあったという、卓越した表現にはまいってしまった。

    いるいる。「つ」の字ねぇ!ご本人はつらくて大変だろうけれども笑えてしまう。

    ほんと、うまい作家と思う。

  • 「熱愛」「白い山」「蟹女」が圧巻だったんだけど、でも正直短編集でいうと『鯉浄土』のほうが数段好みだなあ。あの薄氷みたいな張りつめた雰囲気の短編がまた読みたい。
    「熱愛」のオートバイを運転している時の描写がすごすぎた。こういう作品は村田さんの中では珍しい作風なのではないだろうか。

    村田さんの作品は家族を取り扱っているものが多い。
    幼さと老いの醜さ、原初的な、欲望に名前がつく前の状態とか(幼)、逆に欲望の名前でしか表せないようなシンプルなこころとか(老)。その真ん中に閉じ込められてしまったのがきっと「蟹女」なんだろうな。

  • 3.79/156
    内容(「BOOK」データベースより)
    『土地からたちのぼる綺想、生きることのたくましさとおおらかさ。大人のユーモア漂う短篇の名手の代表作をデビュー30年を機に精選。「鍋の中」(芥川賞)、「百のトイレ」「白い山」(女流文学賞)、「真夜中の自転車」(平林たい子賞)、「蟹女」(紫式部文学賞)、「望潮」(川端康成文学賞)など、さまざまな味わいをお楽しみ下さい。』

    『八つの小鍋 村田喜代子傑作短篇集』
    著者:村田 喜代子(むらた きよこ)
    出版社 ‏: ‎文藝春秋
    文庫 ‏: ‎397ページ

  • 仕事の現場:作家 村田喜代子さん 世界や人間の根源へ - 毎日新聞
    https://mainichi.jp/articles/20200112/ddv/010/040/001000c

    文春文庫『村田喜代子傑作短篇集 八つの小鍋』村田喜代子 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167318543

  • 何が言いたかったのか全く分からない作品ばかりだったが、不思議と読んで損したなどとは感じず、最後まで読んでしまった。情景の描写が個性的ではありながら豊かで、空気の匂いまでも伝わってくるよう。これまで読書は主にストーリーを楽しむものと思っていたが、描写や表現そのものの味わいを楽しむという読み方もあるのだと知らされた。

  • 八つの短編が収められています。
    なんと、うち5編が何らかの文学賞を取っているというぜいたくな作品集です(「鍋の中」芥川賞、「白い山」女流文学賞、「真夜中の自転車」平林たい子賞、「蟹女」紫式部文学賞、「望潮」川端康成文学賞)
    とはいえ、実は絶版。中古をネットで購入しました。
    確かに文学賞、流石に読み応えがあります。何やら不思議で幻想的な雰囲気。とはいえ、あまり面白いとは言い難く。。。

  • 「熱愛」とあれど緩慢な「ぼく」による殺人に見えた

    1987年に97回芥川賞を受賞した「鍋の中」を含む短編集です。芥川賞に女流文学賞、平林たい子賞、紫式部文学賞、川端康成文学賞と諸々の賞を受けている大作家さんですが、お恥ずかしながら初めて知りました。

    最初の「熱愛」が短いのだけどもぐいっと惹きつけて離さない力量のある作品で。

    1980年代後半という30年近く前の世界が、私にとってはとても古い時代であるのですが、この文章の中にはその古さが無いなあ、なんて思いながら、相当バイク好きなのだろうか、と思わせる臨場感あふれるツーリングの描写。

    「熱愛」というタイトルではあるが緩慢な「ぼく」による殺人に見えてしまうのは

    「どれも新田の方が上だが引張るのはぼくだ。一種の精神的力関係。いいだしたらぼくはしつこい。新田は折れるしかない。」

    「ぼくはしつこい、新田はやがて陥落する。いつものことだ。」

    というような描写が何度も続くため。自分はスピードを上げるのに、新田がいざ前にたち、スピードを上げていくと「距離をあけた方が自由に走れる」と距離をあけてしまう「ぼく」に物凄い傲慢な気持ち、残酷さを感じびっくりしました。

    全く語られないのですが行間から感じられる新田の行動にジェームスディーンのエデンの東の兄だったり、理由なき反抗のチキンレースを思い浮かべながら、ページを行きつ戻り反芻つしながらラストに行かないようにしていましたがいよいよラストに。

    物語が終わった後の世界を想像して、ああ、と重たい気分になりましたが、夢中なひとときを与えてもらい残りの短編に期待が高まります。

    「鍋の中」から「望潮」に至るまで全体的に夢うつつな気分にさせられることが多いです。何が真実でありほんとうなのか。これは記憶違い、これは本当、と思っていてもその地平が揺らぐような展開があり、大きい桟橋にいるような心持がしてきます。

    そんな気持ちを最後「茸類」というこれまた短い、30ページにも満たない短編で夢うつつの意識はぱっちり。克明な描写により下手なホラーよりも激しく恐怖に叩き付けられてしまいました。

    静かな田舎の宿に泊まる時に持って行って、この話に出てくるように「清冽な飲み物」である焼酎を喉に通してこの本を読みながら眠りたい、なんて思いました。

    素敵な本と出合えて良かったです。

  • タイトル通り八篇おさめられた短編集。芥川賞受賞作で映画化(八月の狂詩曲)もされた「鍋の中」はそれなりに面白かったですが、個人的には「蟹女」がなんだか不穏でお気に入りでした。精神的に病んでいるとおぼしき初老の女性が、担当医に自分の子供時代のエピソードなどを連日語って聞かせるだけの話なのだけれど、微妙に食い違っているうえに、最終的には完全に創作としか思えない壮大な虚言のようになり、ただ共通しているのはいずれも、とにかく数が多いほどいい、と思っているらしい語り手の強迫観念。よくわからないけどなんか怖い。

    あとは「鍋の中」はもとより、ひたすらおばあさんがらみのエピソードだけを羅列する「白い山」、当たり屋の老婆たちの「望潮」など、とにかく“おばあさん”という生き物のインパクトが強烈。

    ※収録作品
    「熱愛」「鍋の中」(芥川賞)「百のトイレ」「白い山」「真夜中の自転車」「蟹女」(紫式部文学賞)「望潮」(川端賞)「茸類」

  • どこまでが現実で、どこからが空想なのか・・・
    暖かいけど、不思議で、なぜだか怖い物語でした

  • 鍋の中を読みたくて借りてきた。
    ある日おばあさんに昔別れた弟から手紙が来る。その人にあいに行った親たちに残された子供たちはおばあさんの家に集う。
    鍋の中のようなおばあさんの記憶。
    何故わたしはしばらくおばあさんの白いてぬぐいをながめたのか、で論文書きたい。

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著者プロフィール

1945(昭和20)年、福岡県北九州市八幡生まれ。1987年「鍋の中」で芥川賞を受賞。1990年『白い山』で女流文学賞、1992年『真夜中の自転車』で平林たい子文学賞、1997年『蟹女』で紫式部文学賞、1998年「望潮」で川端康成文学賞、1999年『龍秘御天歌』で芸術選奨文部大臣賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞、2014年『ゆうじょこう』で読売文学賞、2019年『飛族』で谷崎潤一郎賞、2021年『姉の島』で泉鏡花文学賞をそれぞれ受賞。ほかに『蕨野行』『光線』『八幡炎炎記』『屋根屋』『火環』『エリザベスの友達』『偏愛ムラタ美術館 発掘篇』など著書多数。

「2022年 『耳の叔母』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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