帝国ホテルの不思議 (文春文庫 む 3-3)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167328030

作品紹介・あらすじ

東京五輪で再注目! 日本が誇るホテルの職人たち日本のホテルの中で特別な位置にある帝国ホテル。30人の現場の人への、職人性や人生観まで踏み込んだ取材でその不思議を炙り出す。

感想・レビュー・書評

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  • 2010年に創業120年を迎えた帝国ホテル。そこで働く人々のインタビューを通して、歴史あるホテルの姿を明らかにする。

    インタビューされるのは支配人にはじまり、料理人、フロントマン、清掃人、マネージャー、設備担当、さらには請負の神主やピアニストなど。

    彼らへのインタビューで著者が重視するのはホテルに勤める前の人生と今の仕事を選んだいきさつ。小さい頃からのあこがれが叶った人もいれば、なんとなく勤めてしまって現在に至るなんて人もいる。

    ホテルの宿泊者にそれぞれの人生があることと同じく、そこで様々なサービスを提供する仕事人たちにも、それぞれの人生がある。そのホテルに伝統があればあるほど、その味わいは深い。

    一流ホテルの歴史、重みを感じさせてくれる内容だが、インタビューのトリを飾るのが意外にもホテルのIT担当。一息つける「オチ」にはピッタリの人選だ。

  • 大好きな帝国ホテル。
    本当にお世話になっているホテルです。

    ロビーで人待ちしている時にも、ピアノの生演奏が聴けたり、素敵な内装と空間には美しい季節のお花が活けられていたりと帝国ホテルらしいゆったりとした
    時間が流れています。

    飛び交う外国語は今に始まったことではなく、ずっと前から国際的な場所でもありました。

    エレベーターに乗れば、レストランで食事を摂れば有名人と鉢合わせになり、どのスタッフの方も心づくしのおもてなしをしてくださる。このホテルの絶妙な緊張感は、リッチに気分にして下さるだけではなく、そこに相応しく存在するように私なんぞでも引き上げてくれるような力があります。

    たまに帝国ホテル内を散歩する私ですがw、ライトの設計のなごりや四季折々の展示物や装飾が思い出に変わります。桃の節句の頃には、いくつのひな壇が見れるでしょうか。また宿泊中の深夜、Xmasの飾りつけを眺めたりしたこともありました。そしてロビー各所と、エレベーターにまであるお花で心が華やぎます。これは庶民ならではの感覚かもしれませんが、帝国ホテルが大好き過ぎてそうした仕掛けをして下さるスタッフの皆々様にお礼を言いたくなってしまう私です。

    さて前置きが長~くなりましたが、裏舞台を見たいような想像な世界にしておきたいような、そんな理由で読み遅れていた本書。結論的には、読んで良かったです。

    著者の松村氏が帝国ホテルに敬意を払って書いているところ、取り上げたスタッフの背景にも焦点をあてている愛情に共感できたところが大きいです。またどの方もお客様に叱られたことや失敗の経験がいかされて現在に至っていて、たとえクレームであっても前向きにお客を思って取り組む積み重ねと努力が尊敬できました。帝国ホテルで働くというプライドがあって、どのスタッフもがホテルの一部となっていて形成されているところにも感銘を受けました。そんな真摯でprofessionalな職場。とてもとても憧れます。そして、次回帝国ホテルに行く日が楽しみでならなくなりました。

    ~備忘録
    ◆総支配人
    あなたの将来は?帝国ホテルの総支配人
    ◆総料理長
    電車とヘラブナ釣りが生む傑作メニュー
    ◆客室果マネージャー
    バスタブに体を横たえると、トイレの内側の汚れがよく見える
    ◆ドアマン
    両替用五千円札、千円札をポケットに用意
    ◆ベルマン
    人工呼吸器マウスピース携帯
    ◆フロント
    部屋割りのコントロールは神秘のパズル
    ◆スターター
    エレベーターの中に行ける一輪の生花
    ◆ゲストリレーションズ
    何処へ行ったらいい?何したらいい?
    ◆ロビーマネージャー
    ロビーサービスの潤滑油たる何でも屋
    ◆オールドインペリアルバー
    千の顔を持つ表面張力的フェイル・セイフ
    ◆オールドインベリアルバー
    魅力的な大人の坩堝たる「柿ピー」発祥の場
    ◆インペリアルラウンジ アクア
    酸味三体の舞台空間で学ぶ人間学
    ◆ソムリエ
    ワイン好きより、人間好き
    ◆レ セゾン
    レストランという舞台装置の妙
    ◆ルームサービス
    雨、雪、台風?ウェルカムです
    ◆ゴールデンライオン
    奥殿で弾きつづけるピアニスト、永遠の存在感
    ◆ランデブーバー・ラウンジ
    ロビーラウンジの人間模様
    ◆氷彫刻
    消える芸術にいそしむ氷彫刻の左甚五郎
    ◆ベーカリー
    パンと日本人という巨大で厄介な問題
    ◆ブッチャー
    肉は化けるし出世もする
    ◆ペストリー
    うっかり、ちゃっかり成長するバスケ流バティシエ
    ◆神主
    ホテル結婚式事始の継承
    ◆婚礼クラーク
    人生の岐路に立ち会う「幸せのお手伝い」
    ◆宴会チーフ
    白鳥、水面下の足掻きを愉しむ
    ◆シューシャイン
    キンチャン
    映画、ジャズ、そして靴
    オーバーシューズ
    ◆プロトコール
    接遇という伝統の隠し味
    ◆オペレーター
    帝国ホテルでございません
    ◆ランドリー
    百年の伝統を誇る、目で洗うランドリー
    セーターの計測
    しみ抜き
    ご希望で3時間仕上げ
    洗濯ものを投げない
    ◆施設部長
    ハード面でホテルを支える、骨太で柔軟なセンス
    ◆施設・情報システム
    数学の天才少年、ついに義理人情にいたる

  • 帝国ホテルで働くそれぞれの現場のプロの話。
    裏側で見えないところもこんなにこだわり抜いてホテルの空間を作っているかと知って驚いたし面白かった。
    バーテンダー、清掃係、コンシェルジュ、靴磨き職人等々。
    帝国ホテルに泊まってみたくなりました。

  • 20180930読了
    2013年発行。帝国ホテルで働くスタッフたちを取材した本。総支配人、総料理長、客室課マネージャーにはじまり、ロビー、レストランやバー、調理場・宴会場、これらのジャンルにおさまりきれない秘密兵器の方々。

  •  著者と各部門のスペシャリストとの対談集。

     帝国ホテルは自分も息抜きしたいときに利用する。「サービスが行き届いている」という、使い古された言葉では現しきれないくらい様々な点で洗練されている。ゆえに、普通のホテルでは目にかかれないような職種があるのだろう。そんな特殊な職種の話が読めるのは興味深い。

     自分が帝国ホテルを訪れた際に、印象に残っているのが、エレベーターだ。エレベーターのドアが開くと正面の壁に、バラの花が一輪活けてあった。無機質な空間に浮かぶ花。その映像が今も思い出される。本書によるとこれは「スターター」と呼ばれる職種の仕事とのこと。粋な演出だと思った。

     この対談集、最も印象に残ったのは、施設・情報システム担当役員の話。先に特殊な職種の話が面白いと述べたが、それだけが本質ではなかった。対談集のトリを飾るにふさわしい内容。他のホテルでも存在しそうな職種なのだが、その普通なものに、秀逸なクオリティを求めていく姿勢が印象的だった。

  • ものすごく大勢の人が帝国ホテル内で働いていることを知った。

    フロントとかベルマンとかソムリエとか「ああいるね」という職種の人ばかりでなく、神主さん、氷彫刻師、ランドリーの方、施設関係の方など「そんな仕事も!?」とか「必要だろうけど、自社でやっているとは驚き」という人たちにインタビューしているところが良かった。

    庶民なので、帝国ホテルなんて泊まれないよと思っているが、一生に一度ぐらい贅沢してみたくなった。

  • 帝国ホテルはやはり噂通り日本を代表する場所であった。無知なので、大それたことは言えないが、読むうちに情熱とプライド持って働くってすごい。プロフェッショナルってすごい。
    俺も頑張りたい。いつか帝国ホテルに泊まるは、ひとつの目標になりました。

  • まさしく、おもてなしの世界である。ホテルという外国から入ってきたものに、日本独自のおもてなしの文化を加えて、新たなホテルのサービスに進化してさせている。帝国ホテルという巨大企業、そしてそれに従事するスタッフそれぞれの生き様を描いている。

  • 素晴らしいホテルの素晴らしいスタッフなのに
    書き手の技量が足りてない。
    浅くてつまらない書き方。

  • 帝国ホテルで働く人たちへのインタビュー記録です。
    総支配人からお客さん第一線から裏方まで幅広い。プロのこだわりや細かいノウハウがおもしろい。
    お客さんのハードルが最初から高い仕事って大変だなぁ。

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著者プロフィール

1940年東京生まれ。慶応大学文学部卒。『時代屋の女房』で直木賞、『鎌倉のおばさん』で泉鏡花賞受賞。著書に『アブサン物語』『北の富士流』『アリと猪木のものがたり』『猪木流』『老人の極意』『老人流』等。

「2022年 『ゆれる階』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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