分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか 精神と物質 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (1993年10月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784167330033

作品紹介・あらすじ

百年に一度という発見で、一九八七年ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進氏に、立花隆氏が二十時間に及ぶ徹底インタビュー。最先端の生命科学の驚異の世界をときあかす。

みんなの感想まとめ

生命現象の探求には偶然と試行錯誤が深く関与していることを、ノーベル賞受賞者の利根川進が語ります。彼の考えは、科学が物質レベルで人間の精神現象を説明できる可能性を示唆し、これが人文科学の枠組みを変えるか...

感想・レビュー・書評

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  • 何かを発見するという事は、研究者の努力の積み重ねだけでできるというものではない。科学というのは自然の探求で、ネイチャー、特に生命現象はロジカルではない。何億年にもわたる偶然の積み重ね、試行錯誤の積み重ねであり、必然性がない。大発見した人は、みんな自分がラッキーだという。

    謙遜ではなく、素直な発言なのだろう。ノーベル生理学医学賞を受賞した利根川進。対談相手の立花隆が珍しくついていけない程の専門知の領域。

    対比が面白いのは次の内容。人間の精神現象なんかも含めて、生命現象は全て物質レベルで説明が付けられると言うことになるのかと立花隆。それに対し、結局は脳の研究によって、認識、思考、記憶、行動、性格形成等の原理が科学的にわかってくれば、現象を現象のまま扱う人文科学が解体し、ブレインサイエンスになると利根川進。立花隆が納得したのかは分からない。しかし、利根川進の考え方はよく分かる。よく分かるし、究極形なのかも知れない。だから今AIが擬人化し境目が分からなくなりつつある。

  • もう博士課程が終わってしまうタイミングですが、ずっと気になっていたこの本をようやく読みました。

    生命科学を研究する者としては、分子生物学の歴史という意味でも興味深く(と言っても現時点では利根川さんはまだ現役の研究者ですが)、また科学者としては耳が痛くなる意見もありました。

    生命現象は何億年にもわたる偶然の積み重ねであり、現在の在り方に必然性があるわけではない。そして、自然観が本当の自然の在り方と近くかつ運もある研究者ほど、大きな発見に近づく可能性があるという点は特に印象的でした。

    また、人間の能力は限られているため、良いアイデアを思いつく人と画期的なテクノロジーを開発する人は多くの場合に別である、という指摘は科学に限らず広く当てはまると思う。そして、利根川さんのアイデアを実現するにあたって、その当時の最先端で、人脈や情報のハブとなっていたダルベッコの研究室でポスドク時代を過ごしたことが大きな意味を持っていたのだろう。

  • 実は田中角栄とかじゃなくて科学ライターがやりたかったらしい立花さんの利根川さんとの対談本。事前準備で全部の利根川さんの論文読んだりしてそうな立花さん。そういう相手と楽しそうに話す利根川さん。それを横で聞いている幸福な体験。サイエンス業界の利根川さんの分析がすごい。

  • 2001年に、この本と出逢わなかったら、今の自分はない。それくらい大きな存在である。
    書いてある内容そのものよりも、その背景にある信念が当時の自分にインパクトがあった。

  • 1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進博士の研究の内容を、立花隆氏が直接のインタビューで詳しく解説してくれている。

    ノーベル賞の対象となった抗体の多様性の背景にある遺伝子の組み換えの仕組みの解明だけでなく、分子生物学の黎明期からの歴史や、自然科学研究の現場でどのように発見が生まれてくるのかといったことも、インタビューの中で臨場感をもって語られており、大変興味深かった。

    利根川博士のノーベル賞に至る研究の過程は、遺伝子を直接解析する技術の発展途上の段階であり、遺伝子配列を直接解析することはまだできなかった。そのような制約条件の中で、制限酵素やハイブダリゼーションといった技術を使いながら、遺伝子の構造とその働き方を明らかにしてくという研究は、発想力と地道な実験の両方が求められる、非常にチャレンジングな研究の世界だったということがよく分かった。

    さらにこの本は、研究の成果だけではなく、それらを踏まえた、インタビュー時点での利根川博士の遺伝子や生命の進化に対する考え方も取り上げられている。

    例えば、遺伝子にはタンパク質の生成に使われず何の機能も果たしていないと思われる部分の方が多い。利根川博士と立花氏の議論の中で、このことこそが生命が偶然の積み重ねで進化してきたことの一つの結果であるという考え方が出てくる部分があるが、遺伝子や生命に関する新しい見方をすることができ、目が開かれた。

    また、利根川博士が発見した抗体遺伝子の持つ組み換えの仕組みが、高等生物に特徴的なものであるということ、情報を保持する能力があり、ネットワークによって機能するといった神経細胞とも共通する性質を持っているということから、免疫システムの進化と脳の進化の間には関係があるのではないかといった話も、興味深かった。

    本書で取り上げられた研究内容やそこで検討されている様々な仮説については、現在ではさらに研究が進み、大きく修正されているものもあるであろうが、ノーベル賞を受賞した研究のプロセスをこれだけ詳しく知ることができるのは貴重な事ではないかと思う。

    立花氏の徹底したインタビューと、分かりやすくかみ砕いた解説に感謝したい。

  • 「サイエンスでは、自分自身がコンヴィンス(確信)するということが一番大切なんです。自分がコンヴィンスしていることなら、いつかみんなをコンヴィンスさせられます。」
    利根川先生の力強い言葉。

    2000年代で学んだ高校生物は、かなり真新しい内容の学問だと感じた。
    最先端にいることは非常に意義がある。同時に、最先端を知ることは未来を予見することだ。
    自分がいる場所がいかに情報的に乏しいか。痛感させられた。
    失敗を重ねること。軌道修正すること。また実験に取り組むこと。科学だけじゃない。人生も同じだ。
    少なくとも自分の信念は間違ってない。前に進む気持ちを再燃させてくれる本だった。

  • 本書は、立花氏の著作の中でも必読すべき1冊であると考える。ブクロクへ登録するために再読したが、やはりそれは変わらなかった。とりわけ、文系、理系を問わず研究者を目指す者と、ジャーナリストを目指す者は本書を読むべきである。

    本書は1987年にノーベル生理学賞・医学賞を受賞した利根川進氏へのインタビューを中心に構成されているが、利根川氏の研究への姿勢およびあり方は、大いに学ぶべきである。「仮説が間違っていればどんな実験も意味がない」というくだりが出てくるが、これは大部分の学問分野に共通することであって、だからこそ仮説に対して頭を絞るべきであろう。

    またインタビューを行うにあたり、立花氏は利根川氏の論文および関連分野の基礎文献を丹念に読み込んでいる。だからこそ、利根川氏からこれだけの話を引き出しているのである(もちろん、インタビュー当時で進行中の研究など、話していないことも多々あるだろうが)。このことは、ジャーナリストにとって最も重要なことである。時には立花氏が疑問を投げかけ、利根川氏が反論する場面もあるが、きちんと文献の読み込みをしたからこその疑問であり、ちゃんと下調べをしている相手だからこそ利根川氏もしっかり反論しているのである。

    話を聞く相手の著作をきちんと読んだり、関連分野の基礎知識をある程度学ぶことはジャーナリズムの基本であると思うが、記者会見などを見ているとこれができていない人が思いのほか多いように思われる。こうした人は本書を読むべきだろう。

    ノーベル賞を受賞した研究に関するインタビューであるため、決して易しくはないが、所々で立花氏が解説を加えており、まったく分からないというわけではない。高校で生物を取った人であれば問題なく理解できると思う。

  • 2020.8.21 読了
    父親に薦められて中学の時に読んだ本を引っ張り出して再読。
    10年たった今、理系大学院生になって新たな視点が獲得できた。
    それは、「探究心」という言葉に集約されると思う。
    本書の中では利根川氏はノーベル賞受賞者にもかかわらず全くもって自分を盛ろうとせず、ありのままの形でインタビューに答えていたのがとても新鮮だった。大学時代のエピソードやその後の研究生活なんかでも私達と遜色がなく、かなり共感できる点が多かったように思う。
    私はそんな中でも「何かを発見したい」「真理を見つけたい」というような熱い志で研究生活を送ってこられた話に心を打たれた。特に、『世界のみんなが知りたがっていることを、自分だけが知っていて、それをみんなに聞かせてやるんだというような心の余裕』のノーベル賞受賞前のエピソードにはひどく感激した。
    最後の「精神とは何か」というテーマの内容も濃く、考えさせられる時間だった。

    人生はやはり哲学。そしてそれは飽くなき真理の探究。

  • 大学の講義で、利根川さんが同僚の遠心分離機を止めて、その理由を「私の研究の方が価値があるからだ」と答えたということを聞いた。それ以降、この利根川進という人物に興味を持った。

    なるほど、利根川さんは教科書に出てくる抗体の遺伝子多様性のメカニズムを解読した人なのかとこの本を通じて知った。そして、教科書つながりで有名なダルベッコやクリック、ギルバートなど歴史的に名を残した研究者と一緒に仕事をしているのが印象的だった。

    サイエンスに対する考え方も実験の進め方も大いに参考になるものだった。教科書では事実でしかないクローン選択説や抗体の遺伝子多様性も当時の論争があったことは知らなかったし、無味乾燥な事実じゃなく歴史的な流れを知ることができたので大変面白かった。

  • 分子生物学を学ぶ上で非常に役立つ情報が多かった。分子生物学の発展の歴史、研究者としての心構え、実験の原理なども一般向けに簡単に書かれていて良かった。何気なく僕が利用している技術が多くの人の知恵によりもたらされたものであるということには、ただ頭を下げるのみである。

  • この本では著者立花隆は質問を通して科学者利根川進の人となりや知識と経験を引き出すことに徹している。利根川の研究分野の専門的なことを詳しく調べ納得したうえで臨み、それによって読者が彼の研究に興味を注ぎ理解できるよう注力している。

    利根川の京都大学時代、60年安保闘争を北小路敏などと上京して戦った話は雲の上のノーベル賞受賞者を身近に感じさせる意外な逸話である。彼はそれを引きずらずに切り替えて研究の世界に入っていく、そのためには日本ではなくアメリカのアカデミア環境が必須であった。最先端生命科学に触発され目的意識の強さがしがらみや環境を超えて偉業をなし遂げた。

    冒頭、「序に変えて」で渡辺格(慶應大名誉教授)が利根川の研究のことや彼の1987年ノーベル生理学・医学賞の単独受賞の意義について説明している。彼は利根川の分子生物学研究の恩師でありその分野の大家である。

    「近代自然科学は物理科学あるいは物質の研究を先頭に発展し今日の物質文明的繁栄をもたらした。1960年代頃から物質の研究から生命の研究へ、さらにそれを超えて精神(脳)の研究へと向かってきている。ノーベル賞もそれを反映して物理学賞、化学賞中心から生理学・医学賞が激烈な競争の場になる。物質から生命、精神への方向転換をもたらしたのは第二次大戦後に大きく発展した分子生物学である。ウイルスやバクテリアファージの研究を通して生命現象を遺伝子の本体であるDNAに還元し、新しい生命概念を打ち立てたDNA生物学の発展が強く望まれるようになった。たとえば免疫現象、ガンのメカニズム、遺伝的な病気の解明、さらには脳の問題などを遺伝子DNAを出発点として探究することが重要なテーマとなってきた。利根川は分子免疫学という学問分野を切り開いた。胎児から成体へ成熟する過程で免疫抗体の遺伝子DNAがダイナミックに再編成される(つなぎかえられる)という事実を発見した。DNAが受精卵から分化・成熟する過程で個体の中で一定不変に保たれているという原則(ドグマ)を打破した点で画期的かつ衝撃的であった。この再編成が脳細胞ではどうなのか、さらにそのDNAが細胞の中でどのような働きをしているのか「分子細胞生物学」の重要性が増している。そして次の大きな目標は脳機能の解明である。利根川さんは免疫学の領域から脳の研究に移りたいという意向をしばしば述べている・・・」と書いている。

    立花隆の今回のインタビューの問題意識は、
    いずれ生命現象のすべてが人間の精神現象すら含めて物質レベルで説明がつくことになる・・・分子生物学が生命現象を物理現象として一歩一歩解明していくごとに生命の神秘は消えていった。やがてすべての生命現象が物理現象に還元され人間存在には特別の意味は何もないのだといことが証明されてしまうのかもしれない。かくして今や「存在の意味」という生命論あるいは人間論における哲学上の最も古い問いが生命科学上の問いに置き換えられてしまうのか・・・というものだった。
    自分は、ここだけをいえばAIやAGIの発達によるシンギュラリティの話とも重なり、人間がシミュレーションするよりもAIがやった方が早くそれも勝手にやってしまうのではないかと思ったりもする。

    利根川は学生運動の挫折感・虚脱感から大学に残り化学を勉強する。そこで分子生物学のニーレンバーグの遺伝子暗号解読(DNAの塩基配列三つが一つの暗号になって一つのアミノ酸に対応している)の理論に遭遇する。渡辺格教授の率いる日本の若き分子生物学者の梁山泊「京大ウイルス研究所」に入り世界第一線の科学の面白さを知る。そしてすぐアメリカに留学する。
    ペロン説(細胞一つ一つにDNAがありその中に膨大な遺伝情報が詰め込まれている。人間は六十兆個の細胞からできているがその一つ一つの細胞に長さ一・八メートルのDNAが入っておりそこには塩基対にして三十億個分の遺伝情報が蓄積されている。そのうち読み出される遺伝情報はほんの一部である。大部分は読まれずに眠ったままで終わる。)の影響が大きく、なぜ膨大な遺伝情報の中から特定の部分だけ読み出されるのか、遺伝子発現の制御・調節メカニズムはどうなっているのか、の研究にはまっていく。

    ・一流の科学者になるには、人のやったことの後追いでなく自分自身のオリジナリティのある研究をしなければならない

    ・日本の大学院生は科学者として本格的に研究していくための基礎的訓練をきちんと系統的に受けていない

    ・これから脳の機能を解明していくのは分子生物学の手法じゃないとできない 回路は重要だが長期の記憶の機構として遺伝子の発現に変化が起こることが関与している

    ・生物の世界というのは何億年にもわたる偶然の積み重ね試行錯誤の積み重ねでこうなっているのであって必然性なんてない 生命の発生と進化は物質的偶然の積み重ねが生んだもの

    ・大半の学者は何が本質的に重要で何が重要でないかの見分けがつかないからどうでもいいことを追いかけて一生を終わっている サイエンスの発展にどれだけ本質的に資するか 何をやるか決めるのは何を重要と思うか 若い時に本当に大切なのはこの本当に重要なものを重要と判断できるジャッジメント能力を身につけること

    ・遺伝子そのものを研究しようなんて発想は分子生物学者以外なかった 普通の免疫学者はそんなこと考えもつかなかった 多様性の問題は抗体遺伝子そのものを研究しない限り解けない

    ・サイエンティストの才能・天分はインテンス(熱心)にものを見るものを考える 観察と考察にかける集中力これが大事

    ・仮説を立てそれを確かめる実験を組みそれがうまくいって自分の仮説が確かめられた時の喜びはすごい
    数学者のマンデブロートの『フラクタル理論』は完成するまで四十年間も来る日も来る日も同じことを考え続けた結果だ

    肝心の専門的・技術的な部分については活字を追うだけで理解不能状態だ。AIやAGIの進化との関連で又読み直さなければならないと思うので、その時迄お預けにして今回はこれで一旦閉じることにする。
    いずれにしてもDNAから免疫、抗体そして脳の解明に至る一連の細胞生物学研究は人間を知るための大きな道筋であり、その進歩のために利根川進が偉大な貢献をなしたということはわかった。彼が個性的な難しい人だとも感じた、本庄庶さんに感じたものと似ている。それを立花隆は上手に扱い素人の読者に繋いだ傑作だ。
    デジタル技術でのアプローチ、文学や哲学・宗教・歴史からの考察などとともに先を争って人間存在そのものへの探究は加速度を増している。
    気になって仕方のない課題であり分野である。

  • 優秀な科学者は説明も上手というけれど、非常に解かりやすい。立花隆さんによるまとめる力もあるだろうけど。確かに研究の大半は失敗の積み重ねだし努力は必要だけど、差が出るのはセンスなんでしょうね。

  • 利根川進が、日本人初のノーベル生理学•医学賞を受賞したのが1987年。その時、利根川48歳。
    受賞理由は<多様な抗体を生成する遺伝的原理の解明
    >だった。
    受賞当時、それを報道したマスコミもその受賞を喜んだ日本人の誰もが、その受賞理由を理解することが出来なかった。
    それを誰にでも分かりやすく解説してくれたのが本書だ。

    本書によって、利根川が現在では常識となっている<遺伝子組み換え>という生理メカニズムの存在を、世界ではじめて明らかにしたことが分かる。
    色々な異物に対して、体内では抗体を作って対抗する免疫のメカニズムが存在する。
    従来、抗体は最初から準備されており、限られた抗体が異物(抗原)に反応すると考えられていた。
    それにしては、抗体の数は多過ぎはしないか?
    その謎に対して、利根川は、体内で<遺伝子組み換え>が行われていることを実証して、無限に抗体を生み出すことの出来る、驚くべき免疫のメカニズムを明らかにしたのだ。

    本書は、利根川進の目の付け所の天才と、抗体が司る免疫構造の奥深さを伝えてくれる。
    ノーベル賞競走の裏話としても途轍もなく面白い。
    科学のどの領域でもデッドヒートが演じらているのだ。
    そんなデッドヒートのレースを勝ち抜き、その後何年もトップを快走し続けたのが利根川だったのだ。
    「あと何個かノーベル賞をもらってもおかしくない業績を上げていた」と彼が豪語する理由も良く分かる。

    <利根川のノーベル賞受賞という偉業の理由を納得出来るまで理解したい。>
    それが、貪欲な知の探求者、立花隆の利根川インタビューの背景だ。
    インタビューに先立って、立花は利根川の論文を全て読み込む。
    英語で書かれた難解な免疫学の専門論文をだ。
    それを専門書を横に置きながら、全て読み込むのだ。
    こうした、普通のジャーナリストではあり得ない、謂わば破天荒とも言うべき立花隆の努力を、利根川は感嘆を以て迎え、喜んで長時間のインタビューに答える。
    その成果が本書だ。
    本書によって、我々ははじめて、免疫構造の謎の解明と、それを明らかにした利根川の方法論の天才ぶりを目の当たりにすることが出来る。

    子供のボストン日本人学校の卒業式。
    隣に座っている見たことのあるオッサンが利根川教授だと気づくまでには少々時間がかかった。
    当時小学生だった子供たちはノーベル賞を受賞した利根川教授から直接、免疫構造の講義を受けたが、家に帰って感想をきくと、「全くつまらなかった」と残念な反応。
    ペイトリオッツのトム•ブレイディと、ビーニー•ベイビーズに夢中の小学生に、免疫の話が響く筈はない。勿体無い話だ。

    子供がボストン日本人学校で、利根川教授の子供たちと一緒だったのだ。
    利根川教授は20才ほど年上だが、再婚で、子供たちは我が家と同い年くらいだった。
    文集に収められたその子供たちの文章に驚嘆した。
    アフリカに遊びに行った時の探訪記だったが、観察眼の鋭さに唸らされた。普通の子供の書く作文ではなかった。「流石はノーベル賞受賞者の子供は違う」と妙に納得してしまった。
    その内の一人は天才の呼び声高く、16歳でマサチューセッツ工科大学に進学し、父親の利根川進も自分を超える天才かもしれないと大きな期待をかけた。
    しかし、その天才少年は、大学の寮で腐乱死体となって発見されるという痛ましい最期を迎えてしまった。
    日経新聞の<私の履歴書>で、自信家で傲岸不遜とも言える利根川進が、自分の息子の死に触れる場面で、神に<ノーベル賞などいらないから息子を返して下さい>と叫んだのには、人間利根川の肉声に触れる思いがして、同じ父親として涙を禁じ得なかった。

  • 立花隆による利根川博士へのインタビューであります。1987年のノーベル賞受賞後でのインタビューですが、なかなか興味深い所、多々あります。良い研究所の情報量は圧倒的、そこに身を置くことで、様々な情報に触れることができる。また、何がいま重要な問題で、何は重要でないかが、自ずとわかってくる、と。何が本当に重要なのかを充分見極めないうちに研究を始めることは、時間の浪費になる、とも。会社での仕事、課題解決の在り方にも似たところがあるな、と感じつつ(少し僭越ですが)、なるほど、なるほど、であります。分子生物学の関連資料を確り読み込んだ立花隆の、しっかりとした質問に啓発された利根川博士(40代でのノーベル生理学・医学賞 単独受賞者)、かく語りき、であります。★四つです。

  • 抗体多様性は、生殖細胞から体細胞に分化する際に、遺伝子組み換えが起こることで発生しているものだった!

    高校生物の知識レベルでも分子生物学の片鱗を理解することができた。DNA上の遺伝子のごく一部が発現することで抗体などの蛋白質が産生される。ヒトの体細胞は全て基本的に同じDNAを持っていて、発現する遺伝子の違いによって異なる蛋白質が産生されヒトの体ができる。

    生命の神秘に触れられる、知的に刺激的な一冊。
    サイエンスとは何ぞやというのも少し伺える。

    高校生の時に読んでたら生物系に進みたくなっただろう。

  • 精神、感情などはいずれ物質で説明がついてしまうのだろうか?、残念ながらその答えはまだわからないようだ。DNAの配列を決めたのが何者なのか、それとも偶然配列された多数の組み合わせの中から勝ち抜いてきたものだけが現在存在しているのか?
    結局根本の謎はわからないままである。

  • 「仮説を立てて、それを確かめる実験を組み、それがうまくいって自分の仮説を確かめられたときの喜び」が、ワクワクドキドキして最高に面白かった。無人島に持っていくレベル。

  • 利根川進さんが自身のノーベル賞受賞研究について語っているインタビュー本。実験生物学基礎研究の真髄に触れるようなレベルの内容だと思います。

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著者プロフィール

評論家、ジャーナリスト、立教大学21世紀社会デザイン研究科特任教授

「2012年 『「こころ」とのつきあい方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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