トロッコ海岸 (文春文庫 し 9-10)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167334109

作品紹介・あらすじ

あの頃、ぼくらは長靴を履いた男にどこどこ追っかけられ、無断借用のトロッコで冒険に励み、物陰から男女のキビを学習した。表題作などノスタルジックに少年の日日を描く短篇群に加え、記憶の中の妙な風景を淡々と綴る「ポウの首」。映画への熱い思いが哀愁とともに蘇る「映写会」等、懐かしい風景の短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の少年時代から結婚後の生活に至るまでの半生におけるいくつかのエピソードを描いた短編小説集です。「あとがき」には、「本書は私小説系統に近いものが集められている」と書かれていますが、「解説」で池上冬樹が述べているように、いわゆる日本の伝統的な私小説とはまったく違う趣の作品で、むしろエッセイに近い感覚で読むことができるように感じられました。

    「猫殺し」「トロッコ海岸」「デカメロン」は、少年時代の思い出を振り返って書かれた作品です。「ほこりまみれ」と「ポウの首」は、新しい世界に目を開き始めた中学生の頃のエピソードが、どこか温かい筆致で描かれています。

    「蛇の夢」は、夢から着想を得るものの、まとまった作品の形を取るには至らなかったケースが語られており、著者の創作現場の一端を垣間見たような気持ちになります。「椿の花が咲いていた。」は、観光案内地図を売る仕事をしていたときのことが、「映写会」は大学時代の同窓生に頼まれて子ども向けの映画の上映会を著者が執りおこなう話で、記憶をたどるようにして紡がれていくた文章に懐かしさを感じました。

  • 1997年10月読了。

  • 井上ひさしを彷彿とさせる内容で愉快だ。井上は本当に馬鹿に思えるが椎名は利口そうな間抜けだ。これは褒め言葉ですぞ。「猫殺し」「映写会」
    が特に面白く読めた。解説者も言っていたが「擬態語・擬声語」は読みながらつくづく感心した。

  • 若い頃の夫婦生活における苛立ちを題材にしたものに身をつまされる思いであった。

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著者プロフィール

1944年生まれ。作家。1988年「犬の系譜」で吉川英治文学新人賞、1990年「アド・バード」で日本SF大賞を受賞。著書に「ごんごんと風にころがる雲をみた。」「新宿遊牧民」「屋上の黄色いテント」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズ、「そらをみてますないてます」「国境越え」など多数。また写真集に「ONCE UPON A TIME」、映画監督作品に「白い馬」などがある。

「2012年 『水の上で火が踊る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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