正力松太郎と影武者たちの一世紀 巨怪伝 上 (文春文庫 さ 11-3)
- 文藝春秋 (2000年5月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (550ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167340032
作品紹介・あらすじ
九回裏、背番号3・長嶋の放ったサヨナラホームラン-昭和三十四年、昭和天皇を迎えた"天覧試合"の劇的な幕切れは、その時天皇の背後に座っていた一人の老人にとって過去の恥辱を雪ぐことを意味した。その男・正力松太郎。読売新聞、日本テレビ、巨人軍の上に君臨し、大衆の欲望を吸いつくした男を描く大河ノンフィクションの傑作。
感想・レビュー・書評
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フクシマ論を読んで、俄かに興味を惹かれた正力松太郎に関して、「原発・正力・CIA」に続けて読みました。
「原発・正力・CIA」がタイトルの通り、原発の父である部分にフォーカスしているのに対し、こちらは正力の生涯を社会的、歴史的背景を解説しながらまとめたドキュメンタリー小説です。
上巻では、生い立ちから学生、警察官僚時代を経て読売新聞社の社長となり、読売新聞社の立て直し、職業野球の立ち上げ、太平洋戦争中とその後の公職追放、そして復帰までが描かれています。
とにかく、正力と言うオッサンは並外れてエネルギッシュで度胸があって、そして、どうしようもない程のエゴイストだった様です。
すごいオッサンが居たんだなぁとしみじみ思いました。
職業野球の立ち上げに関しては、ただでさえアンチ巨人の自分たちですが、余計嫌いになるようなエピソードがあり辟易してしまいました。
すごいボリュームの本なので、下巻を読むにも気合いを入れないとくじけてしまいそうな程です。 -
巨人軍のあの大正力の生涯を描いたノンフィクション。
富山県出身。官僚としてのエリートコースから警視庁警務部長時代に虎ノ門事件で辞任。新聞界に身を移す。
大正、昭和の立志伝中の人物らしくカリスマ性と妄念、執着心を強く持った人物。
一将功なって万骨枯る。正力の元で何人の人物が潰されたことか。沢村栄治もその一人。
どことなくナベツネと重なるが正力のが余程の大物。
前巻は公職追放から復帰し読売新聞に復帰するまで。 -
2022/05/20 読了
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「沢村忠に真空を飛ばせた男」の作者、細田昌志がBOOKSTAND.TVで大きく影響を受けた本として紹介していたので、読んでみました!なに?この情報量…なに?この展開…なに?この男、なに?この男たち…上巻だけも徹底的に翻弄されてしまいました。正力松太郎、名前は知っていても、虎ノ門事件の責任を取って警視庁を辞め、讀賣新聞に入り、、巨人軍をつくり、日本テレビをつくり、よみうりランドとつくり、日本に原子力を導入した、大正力と言われた男、というプロフィールも知っているつもり、でも、何も知らなかった人物の評伝です。個人の歴史というより、彼のまわりの群像の物語でもあり、さらには彼が生涯相対した大衆社会史でもあります。ルーツが米騒動の発火点、富山というのもきっと運命なのでしょう。日本に大正デモクラシーで大衆社会というようなものが生まれ、それを徹底的に抑圧した警察官僚時代、一転、それをメディアやスポーツで方向づけた新聞社経営時代、そのおぞましい陰と祭りのような陽が、なんの矛盾なく地続きである人生に恐ろしさを覚えました。大正力は、大いなる正力であると同時に、大正の力、大正力なのでもあると思いました。この本を読んで、今でも続く讀賣新聞の人生相談が、市民というより大衆を相手にしている気分が、なんとなくわかったような気がしました。正力松太郎の闇も怖いけど、その暗い深い穴をどんどん取材で埋めて行く佐野眞一も恐ろしいと思いました。
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読売新聞を一代で販売数No1にした正力さんの自伝。当然正力さんだけの才能と活躍だけでは成し遂げることはできないものであるが、その影で支えた人たちと正力さんの軋轢や運命を丁寧に綴られていてとても面白い。
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ノンフィクション
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古本で購入。上下巻。
昭和34年6月25日、後楽園球場、巨人・阪神戦。
2-2で迎えた9回裏、村山が投じたストレートを長嶋のバットが捉え、打球はまばゆいカクテル光線を浴びながら4万人の観客が埋め尽くすスタンドへ―
その様をロイヤルボックスから見つめる昭和天皇、そしてその後方に座る容貌魁偉の老人。
この老人こそが、昭和の“輝かしい1ページ”たる「天覧試合」を演出した正力松太郎その人である。
ルポルタージュのプロローグとしてはあまりにドラマチック。
しかし、幼き頃の著者がブラウン管を通して見たこの「ドラマ」が、本書の原点ともなっている。
読売新聞を発行部数世界一の新聞へと躍進させた人物にして、「プロ野球の父」「テレビの父」「原子力の父」の名をほしいままにする正力松太郎。
この怪物・魔王の底知れない怪しい魅力と、彼の持つ重力が形成した複雑怪奇な(著者曰く「惑星状の」)人脈を掘り下げ、歴史に埋もれ消えてしまった正力のブレーン(影武者)たちを追っていこうというのが本書。
ひとりの男の人物史によって昭和史を描くことができてしまうという点で、正力はまさに異形だ。
しかも昭和を支え、つくり出した「大衆」という存在と常に関係を持っているから、尚更なのである。
正力の生涯を追う評伝ではあるが、同時進行の出来事が章分けして書かれているため、時系列の整理には少し苦労する。
ただそこには膨大な情報・エッセンスが詰め込まれている。読み手の興味のありどころによっていくらでも枝葉を伸ばせそうだ。
個人的には正力が戦後、新宿の戸山に世界一の大自然動物園を造るという構想を持っていたというのが気になる。
ここは東京都が上野動物園に次ぐ第2動物園を造るためにGHQと交渉を重ねていた場所でもあり、双方の動きがどんなふうに絡んでいたのか知りたい。
惜しむらくは、この件に関する参考文献が巻末のリストからわからないところ。
今この時節、本書が価値を持つのはやはり原子力導入に関する部分だろうか。
「創造主になりたい」「空前絶後のことをなしとげたい」「次期首相になるための布石と相応しい事業」という正力の野望により火がつけられ、その彼が支配する読売新聞によって一大キャンペーンが張られた巻き起こされた原子力ブーム。
「放射能は体にいい」「野菜がよく育つ」などの俗説がまかり通り、ウラン採掘で一山当てようとする山師も続出した。
今騒がれる「脱原発」も、このとき“操作”された大衆の反省をスタートラインの1つにしなければ、結局は「脱原子力ブーム」に堕するのではないかと思う。
正力の死後、葬儀は日本武道館で営まれた。
巨大な遺影、巨大な祭壇。押し寄せる参列者とそれを見て「ああ、大入りだ、大入りだ」と喜ぶ警視庁時代以来の秘書。正力と訣別し、来賓としてさえ扱われないかつての影武者。
怪物と言われる男の最期を飾る舞台としてふさわしい壮大な装置である一方、どこかカリカチュア的な滑稽さが漂う。
全編を通じて特に(何故か)印象に残る1シーンだ。
CIAのスパイとしてコードネーム「ポダム」と呼ばれたともいう正力だが、史料の制約からかそのあたりの記述はない。
しかし山のような文献と脚で稼いだ取材成果によって、一筋縄ではいかない超骨太のルポルタージュになっている。
昭和史の側面を知る1冊として、我ら「大衆」の生み出される時代を知る1冊として、オススメ。 -
289.1||Sh7||Ky=1
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すごいボリューム
昭和の著名人が一杯登場する
・読売新聞 プロモートの方法が良い意味で下世話!!
・プロ野球 立ち上げの動機が不純!!
ちょっとエエ話〜
巣鴨プリズン収監時代に、お風呂の入浴マナーがあまりに悪かった為、笹川良一から「入浴の道徳」を弁じられるが、全く改めず!!
オモロイ!!!!