宮澤賢治殺人事件 (文春文庫 よ-12-2)

  • 文藝春秋 (2002年1月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784167341039

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  • 吉田司は賢治の聖人伝説を殺しにかかっている。吉田はその語り口からも明瞭であるが賢治のことを小馬鹿にしているだけでなく、賢治の死を告げるニーチェでありケンシロウであろうとする。
    しかし、吉田の言説を知れば知るほど「賢治逆にスゲェ!」ってなる。賢治のように意識高い系で、自意識こじらせ系で、浮世離れしたイタイ人間でも、イーハトーブのような脳内バーチャルリアリティー(国柱会仕込み)を見事に構築し、さらに恥ずかしげもなく世に発信することができるのだと。そして何よりも、賢治の生き方がこれ程までに軍国主義やファシズムと親和性が高いにもかかわらず、作品の解釈によっては時代を超えた普遍性を獲得している。吉田は賢治が長命であれば戦争の激化とともに世に迎合していた可能性を指摘する。もしそうであれば賢治が亡くなったタイミングといい、戦後の教科書への採用といい、賢治と賢治の作品は色々とミラクルを引き起こしている。
    本書の面白いところは他にもたくさんある。賢治と決して交わることがなかったであろう岩手貧農の家庭環境のリアルな描写があること。スーパーだめ人間の代表格だと個人的に思っている辻潤をして、「この夏アルプスにでもでかけるなら『ツァラトゥストラ』を忘れても『春と修羅』を携えることを必ず忘れない」と大正13年の時点で言わせしめたこと。もしかしたら労働嫌悪的な何かとか高等遊民めいた何かとか、お互いのフィーリングの最も残念なところががマッチしてしまったのかもしれない。
    本書は悪意をもって賢治を天から地上に引きずりおろす。潔癖な読者は賢治に裏切られたと感じるかもしれない。また、賢治への信仰を貫く者は著者を呪うかもしれない。一方でゲスな読者にとっては、私のように賢治をより身近に感じられるようになるはずである。

  • ¥105

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