彗星物語 (文春文庫 み 3-13)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167348137

感想・レビュー・書評

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  • 1992年初刊行の作品。
    3世代+1家族同居の大家族の下に、ハンガリーからの留学生がやってきて、この家族の変容、それぞれの変化等々がもたらされる。

    過去にTBSで2回テレビドラマ化されているのを全く知らなかった。

    末息子である恭太は宮本さんの大作「流転の海」シリーズの「伸仁」を、妻敦子も「房江」を、そして本作で一役を担う犬のフックも同シリーズの犬たちを連想してしまう。

    宮本さんの作品は、流転の海シリーズから読み始めたので、本作も同じようなテーストを期待してしまい、いつ、どのように大きく展開するのかを待ったまま、終盤まで読み切ってしまった。

    大家族のため、登場人物も多数だが、それぞれの個性、そして出来事や経験を経ての変化等が化学変化を起こし、不変は何一つない。

    不確かさ、刹那の中に人は生きる。
    ある日突然、大切な存在を失う喪失感について、本作もさらりと。
    宮本作品の醍醐味。

  • 盛り込みすぎの感。

  • 面白かった

  • 登場人物
    城田家

    ★祖父福造
    父晋太郎・母敦子
    長男幸一・長女真由美・次女紀代美・次男恭太

    ★晋太郎の妹めぐみ
    めぐみの長男春雄・次男夏雄・三男秋雄・長女美紀

    ★ハンガリーからの3年間の留学生ポラーニ・ボラージュ

    ★犬のフック

    総勢13人と一匹が一つ屋根の下暮らす物語。

    敦子と恭太の目線で物語が語られる。
    ただでさえ家族の多い城田家。
    おまけに父の興した事業は経営破綻し経済的にはゆとりがないのに、ハンガリーで留学を約束をしたポラーニ・ボラージュの生活費・学費を一切引き受けて面倒を見る。

    城田家皆んながそれぞれ物語の中で生きていて、大家族って温かいなぁと思わせる作品。
    ボラージュが自立を主張し始めるシーンではイラついたが、敦子さんの
    『〈自立〉という言葉を使わず、留学生のための寮で自分の貴重な体験としていろんな国々の学生と生活してみたいと要望していたらこんな感情の行き違いなど起こりはしなかった。言葉の問題だけで感情を害したりした自分たちは、ボラージュの存在に慣れてしまって彼への思いやりに欠けていたのかもしれない』
    の文言にハッとし納得した。

    何かあるとすぐに共産主義を持ち出すボラージュに辟易したが、ボラージュの父や歴史を考えると私の様にふわふわと日々生きている人間とは根本的な問題意識の高さが全く違うのだ。
    もし留学生がハンガリーからのボラージュではなく、イギリス人だったら?中国人だったら?インド人だったら?違う国籍の留学生だったらまたホストファミリーの経験も全く違うものになるのだろう。

    尋常ではない魂の向け方で勉強に勤しんだボラージュが城田家にもたらした影響は計り知れない。
    敦子さんが振り返る。
    『ボラージュとの、さまざまな心の行き違いは、まず言葉の問題であり、それと同じ比重で習慣や価値観や民族性の問題でもあった。』
    これが全てを物語る。
    色んな事が一度に巻き起こった城田家だったから、ボラージュのお別れ会での皆んなのスピーチに胸が詰まった。
    ボラージュの心にいつまでも残る、ゴールの手前でも『さぁ、これからだ』の精神は人生の掛け声でもあるなと思った。

    この世の全ての生き物は〈突如、彗星の如く〉現れては消えて行く。
    光芒を引いて、出逢いと別れを繰り返しながら生きている。
    そんな彗星たちの物語。


    以下共産主義、社会主義について
    https://hugkum.sho.jp/167293
    HugKumより抜粋

    [共産主義とは]
    資本や財産をみんなで共有する平等な社会体制のこと。土地や財産などはすべて国のものとなり、みんなで共有します。生産されたものもみんなのものとなり、均等に分配するという考えです。
    マルクス主義思想では、資本主義は資本を持っている人が富を独占して、人々の間に貧富の差が生まれると考えました。資本家ばかりがお金を増やし、それ以外の労働者は一向に豊かにならず、資本主義社会の限界を見通したのです。
    また、新しいものの開発は、過去の知識や多くの人の知恵が積み重なって生まれたもので、資本家だけが独占できるものではないと考えるのが共産主義とされています。

    [資本主義]
    働いたらその分だけ報酬が得られて、個人や企業が財産を所有することができる体制を言います。人気があるものはよく売れ、さらに市場の競争によって価格が安くなることもあります。業績のよい企業に就職して頑張って働けば、多くの給料をもらえるかもしれません。しかし業績が悪くなれば、失業したり生活が苦しくなったりするリスクもあります。
    資本主義は、18世紀にイギリスで起こった産業革命をきっかけに生まれた体制です。機械がたくさん開発され大量生産ができるようになり、工場の経営者は労働者をたくさん雇い、多くのお金を儲けることができました。これが資本主義の始まりになったといわれています。日本でも明治維新以降に、資本主義が発達していきました。


  • 上下巻
    母が好きな作家さん
    犬と留学生を含めた13人家族の話
    何があった訳でもないというか常に何かあるというか
    でも読み終わってから寂しくなる本

  • ハンガリーからきた留学生ポラージュ。
    14人の大家族と1匹の犬ともに過ごした3年のお話。

    『勉強しすぎて死んだ人はいない』
    学生に戻って机に向かいたくなる。
    終盤の『さあ、ここから』という気持ち、大事。

  • 平凡な家庭が、一人の留学生の登場で変化していく。
    どこにでもありそうな出来事。
    でも、家族にとっては特別。

    心に残る物語だった。

  • ただでさえ同居人(+犬)の多い城田家にハンガリー人のボラージュがやってきて…留学の3年間の出来事は、よくありそうな家族のエピソード。派手さは何にもない。でも心に染み渡るようなほろっとした感覚。


    個人的には福造のセリフにくすっと笑わせられるものが多かった。おもろいじいちゃん。

    どんなにゴールが近くても「よし、これからだ」と気を引き締める。これは大事にしていきたいと思った。それと、悪い気持ちを胸に石を掲げ叩きなくすという考え方。教訓めいたものもすんなり入ってきた。

    家族写真、撮りたくなったなあ。
    35年も前の話なんだけど、今読んでも面白かったよ。

  • 僕は犬を飼っています。

    名前はモクといいます。木曜日に拾ったからです。
    そんなモクも中1の冬にうちに来て、もう10年が経ちました。
    何度か病気したり、今も耳がかゆそうですが、元気でやっています。


    モクがもし死んだら、僕はこの本を間違いなく読み返すでしょう。
    そして、キセルの「君の犬」も何度も聞くでしょう。

    高校3年生で受験失敗して浪人になるのが決まった2月〜3月に
    通っていた公民館にあって、槇原敬之が薦めていた本。
    多分本を読んで初めて号泣した本だと思います。

    犬を飼っている人は是非。


    ps今、モクはちょっと盛りです。なんだかその辺を考えるとせつなくなります。


    たかはしなおゆき

  • 淡々と物語が進んでいき、盛り上がりに少し欠ける話だった。家族の絆を描こうとしているのだと推察するが、その辺りもいまいち上手く描かれていなかったように思う。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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