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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784167348144
みんなの感想まとめ
人間の心の機微を丁寧に描いた短編集で、複雑な感情や人間関係が織り交ぜられています。不貞や殺人、アルコール依存、機能不全の家族など、重いテーマが盛り込まれながらも、登場人物たちの視点に対する絶妙な距離感...
感想・レビュー・書評
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不貞、殺人、アルコール依存の母親、機能不全家族、親の失業、貧困、在日問題等々のてんこ盛り。
宮本輝さんが心血を注いでそぎ落とした先の短編7作。
陰鬱なのに乾いている。やるせないのに後を引く。
何度も読み返し、余韻を味わう。
書いてあることと、光を当てずに敢えて描かない事柄の巧みな調合。
登場人物たちの視点に近づき過ぎず、離れすぎずに絶妙な距離を取ることにより、価値判断を挟みいれない勇気。
愛しているからこそ憎い。
好きの反対は、嫌いではなく、「憎い」。
恋慕、執着、裏切り、背徳、未練、疎外、孤独、後悔、怒り等々が入り組み、他人から見れば、或いは本人ですら自分の心と行動の乖離に気づかずに、月日を重ねる。
頑張れば報われるとか、努力は必ず叶うとか、そういうお題目的なものの対極にある作品ばかり。
生身の人間の生臭さでもあり、香しさでもあり、愛おしさでもあるものが、心の機微を丁寧に描くことで醸し出される。
作者の視点や価値観、善悪や倫理観を排除し、それを押し付けるために説得しようとするあざとさは微塵も感じない。
表題作『胸の香り』は圧巻。
共感を文芸に過剰に求める風潮があるが、そんなものとも無縁。
『流転シリーズ』に繋がる家族的な作品もあり、もう一度大作である『流転シリーズ』を読みたくなって頁を閉じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりの宮本輝。やっぱりとても巧い上手い大人の7話短編集。
あとがきに「30枚でちゃんとした短編が書けない作家は2流と言われたことが、犯しがたい約束事と残った」を見事に実現されてる。
1話30ページに満たない作中に、人物の人と成り、心情がしっかりと。
7話とも物哀しい喪失感が漂う。
90年代に書かれた作品は、携帯電話も普及してなく、男性優位の世の中は今以上。愛人を作ったり、一夜限りのアバンチュールを試みたりするのも、男の甲斐性的なところには違和感があるが、それを上回る文章力。
ストンとした結末も好み。 -
またタイトルがいいっ
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郷愁にかられる気持ちになる短編7つ。なぜだろうか。子どもの頃の母親そして父親を思い出すシーンが多いからか。特に「胸の香り」は昭和30年代の神戸市灘区六甲道駅近くのパン屋の香りという言葉だけでも、その香ばしい匂いが思い出されそうになる。「しぐれ屋の歴史」は薄幸の人生だった母が務めていた宿屋の小冊子を手にして驚きの発見、この2編が私にとっては特に印象に残った。
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良かった
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男女の関係は奥深い。
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2018 8/2
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若干、起承転結が崩れている箇所もあったけれど独特の物寂しさが全体に染み渡っていてとても良かった。やるせなさに襲われるがそれがまたいい。
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9月の読書会課題本。買うときあまりに薄くてビックリした。「さざなみ」「しぐれ屋の歴史」「深海魚を釣る」がいいと思った。後書きにある30枚でちゃんとした短篇が書けない作家は所詮二流だという言葉を改めて考えさせられる作品だと思った。おちのある作品が好きな人、そうじゃない人どちらも楽しめる短篇集だと思う。
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みなさんレビューの通り、あとがきが素晴らしかった。
本編はとくにグッとくる作品には出会えず。「深海魚を釣る」くらいか。
「星星のかなしみ」のほうが何倍も好き。 -
初めてこの小説を読んだのは高校生のときでした。それからずっと、宮本輝さんの短篇についての考え方が書かれている「あとがき」が印象に残っていました。
短篇が7作収録されているのですが、どれも短いなかに凝縮されていて、頭の中にどんどん物語の世界が広がっていきます。読む人の状態に合わせて変化する、大好きな短篇集です。 -
宮本輝の短編集。年齢が近い主人公も多く、共感と言うよりも、胸の奥底を見透かされている感じ。それもそのはず。著者にとって短編小説は「血の一滴を無理矢理絞り出すかのような労苦を強いる」のだそうだ。しかも、それを表さないようにしているというのだから、尚更だ。
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短いけれど、それぞれ余韻の長く続く話だった。最近の作品より真面目で余裕はない感じ
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短編集なのですが、どれも読みやすかったです。「真夏の犬」よりスッキリしてる感じがします。内容は結構かぶってしまってますが、全く別の話として割り切れるのが凄いなぁと。
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いいね
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月に浮かぶ
80歳近くの母親が、お腹がいっぱいとなって
それが 自分が妊娠したと思い込む。
それを看病する 妻。
そして、愛人が妊娠したと聞いて、何らかの覚悟を決めざるを得ない。
海に映る 満月が 母親のお腹に見える。
いろんなものを 失うことで、人は生きている。
船を焼く
海岸沿いの静かな宿。
夫婦が経営しているが、若くもあり、年上に見えたり。
そこに、泊まった 二人は 出口が見えないことで、
別れようと思っていた。そしたら、その宿も 閉めるという。
経営する二人は 22歳で、別れることにしたという。
珠恵の霧のような汗がすてきなんですね。どんな感じなのか?
さざなみ
リスボンで偶然似合った女は いぜん 酔っぱらった時に
つきあったことがある女だった。その偶然に、驚くが
その女は 年老いた 夫婦の家に暮らしていた。
そして、ある決断をしたのである。
胸の香り
イースト菌の香りがする。香りはつねに思い出をつむぐ。
郵便局の女、パン屋、そして 夫の匂い。
それが つながっていくことで、不思議な歴史がひもとかれる。
しぐれ屋の歴史
流転の海に つながる アル中の母。
転げ落ちていく 父親。なぜ 私が編集者に。
深海魚を釣る
カバちゃんには 二人の父親がいた。
魚釣りに行って、オコゼを釣り上げた。
道に舞う
春子という日本人。
私は 叔母の家に預けられた。
その街の雰囲気は好きではなかった。
在日と北とのあつれき。 -
短編集。
「月に浮かぶ」と「舟を焼く」がいい。
特に「舟を焼く」のどうしようもなさがたまらなく切ない。
「深海魚を釣る」は伊坂さんの「オー!ファーザー」を彷彿させた。
「道に舞う」娘の姿にはっとした。
嘆かわしい状況も心の持ちようによって180度変わる。
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