約束の冬 下 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2006年5月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784167348212

みんなの感想まとめ

約束をテーマにしたこの作品は、さまざまな大人たちの人生の中で交わされる約束の意味を深く掘り下げています。登場人物の氷見留美子と上原桂二郎を通じて、約束は単なる決めごとではなく、希望や目標としての側面を...

感想・レビュー・書評

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  • 色んな大人がいて、それぞれ意思があって約束がある。約束は守るという至極当たり前のことをできる大人になりたい。逆に言えば守れない約束はしない。律することもできれば破ることもできる。力を入れるより抜く方が難しい。

  • 矍鑠たる生き方、毅然とした生き方に憧れる

  • 32歳氷見留美子と偶然家の向かいに住む54歳上原桂二郎を通して約束とは何かを問う作品であった。
    人生を10年の節で考えていく中で人は色々な体験をしていくものであるが、約束とは、命懸けでやるものと留美子を通して語らせる。
    約束とは、決めごとではなく、そうありたいという希望である。芦原久美子との70歳でのネパール旅行は、死んではいけないというまさに「希望」である。また、「目標」といえよう。
    須藤潤介が遠い昔の子供がした約束に対して画竜点晴を欠くということで果たそうとする。
    それは、義務として受け取れる。(自分がしたくてする)おさえつけられたものでなく。約束には、権利と義務があるということであろうか。
    上原俊国の10年前にだした手紙という約束は、希望であり、それは、一念があったため果たされる決意である。

  • 15歳の少年が22歳の女性に恋をし、ラブレターを送る。
    その恋が実るのか、どうなのか。という話があくまでこの物語の主軸。

    その主軸の周りに様々な人間が登場し、そのなんでもない、時にはイレギュラーな交わりが展開されていく。

    「人は何を拠り所にして生きていくのかを問う、宮本文学の新しい傑作」という触れ込みではあるが、それにしては迫力不足。それは以下の理由からだろうか。

    ・登場人物が多すぎる。次から次から出てきて、「いいエピソード」を持ちすぎている。それゆえ、全体として何を言いたいのかのメッセージ性が薄れる。
    ・主軸であるはずの恋愛の、プレイヤーの感情がうまく描き切れていない。特に男側の俊国。彼が主語となることはないのだが、それにしてももっと彼の内心を描いてほしい。15歳から25歳までひとめぼれの7つ上の女性を好きでい続けるというのはすごく違和感がある。

    高校時代の恩師である国語教師が「宮本輝は最近好きじゃない」とよくおっしゃっていたのを覚えている。僕もまさに、この小説を読んでそう思った。

    すごくきれいな話じゃなくていいから、シンプルに、ストーリーを展開してほしいものだ。

  • 8月25日~29日
    壊されたパテックの懐中時計の持ち主を探す桂二郎の前に、妖艶な中国女性が現われる。そしてもう一人、桂二郎を訪ねてきた若い女性は、昔別れた恋人の娘だった。一方、留美子は謎の手紙の主について、次第に手がかりを得ていく―。人は何を拠り所にして生きていくのかを問う、宮本文学の新しい傑作。

  • 丁寧な文章で読みやすかった。上巻での経過を踏まえ下巻で回収する。上原圭二郎と氷見留美子の視点で書かれる生活は2人が出会い、さまざまな出来事から関わっていく様子を描く。ストーリーに大きな展開はないがあとがきで作者が述べた大人の幼稚化が進む現代では模範となる大人とはどんなか、という観点に置いて圭二郎は留美子や水瑛、俊国にとっては分別ある大人であった。だが、若い頃の過ちであったり最後多額の現金を申請せずに外国に渡るなど模範的とは言えない部分もある。そういう過ちがあるほうが人間らしい。
    雪迎えや10年後の約束に対して描写はあるものの最終的に本作で描かれることがなかったのが個人的には残念。

  • 上下巻通して、透明感のある文章で楽しく読むことができました。

    最後、このふたりは一緒に生きていくんだろうなーという感じで終わってて、個人的には終わり方も良かったと思う。

  • 内容説明
    十年前、留美子は見知らぬ少年から手紙を渡される。「十年後、地図の場所でお待ちしています。ぼくはその時、あなたに結婚を申し込むつもりです」。いったいなぜこんな身勝手なことを?東京、軽井沢、総社、北海道…。さまざまな出会いと別れ、運命の転変の中で、はたして約束は果たされるのか。

  • 上と比べて登場人物が多かった。
    最後は‥えって思いましたが面白かった
    です。

  • 上巻のような先を読みたい感じはなく

    登場人物が多く
    中途半端な感もあり…

    作者らしい表現が好きなので、完読

  • 気持ちのいい話でした。

    そこそこ田舎に住んでいたのに、空飛ぶ蜘蛛見た事ないです。

    見た事があれば、この作品をもっと味わえただろうに、ちょっと残念。

    宮本さんのあとがきにハッとさせられたです。

  • この作品に登場する人物は、作者が「このような人が自分の近くにいてくれればと思える人物だけをばらまいて…」とあとがきで書いているように、大人で、優しく、人生に対して真摯だ。そう、作者の意図するように、大人が幼稚化した現代において、若い人たちの規範となりうる大人の姿なのだ。そのため、平成の作品であるにも関わらず、まるで古き良き昭和の小説を読んでいるかのような錯覚に陥る。
    留美子をはじめ、上原さん、須藤潤介、新川秀道、芦原小巻、料亭の女将鮎子…登場人物が皆いい!中でも上原氏は本当に魅力的で、私が留美子だったら、ラブレターをくれた息子より父親である上原氏の方に惹かれると思う。
    難をいえば、留美子と俊国の十年後の対面をもうちょっとロマンティックに書いてほしかったな~ということかな。まあ、書かないからこその美しく妄想できたのかもしれないけど…

  • どの登場人物をメーンにしてるかわからない。
    どの人物も中途半端な気がするが,宮本さんの解説でなんとなく納得しました。

  • 登場人物が皆、素晴らしい人間性をもっていて、自分の近くに居たら、刺激をたくさん与えてくれるだろうなと思いました。
    場面場面での会話や景色など、心に残るシーンは多くありましたが、物語が収束していく部分において、性急さを感じてしまいました。
    魅力的な人物が多かっただけに、各人物の最後の部分をもっと掘り下げて欲しかったです。

  • 読み飛ばしたかと思った。
    翠英と桂二郎の朝の別れ とか、
    いつの間にか留実子と俊国が愛称で
    呼び合う仲になってた とことか。
    それぞれの章の裏側で、
    話は少しずつ進展していた。
    ひとつひとつ 細かく書かなくても、
    読者に委ねるのもありなんだね。

    桂二郎が、なんともまぁ、正直に、
    若い女を抱きたい、若ければ若いほどいいって のたまうこと。笑えた。
    若い女の企みに、騙されたと思うか、
    少しの間、夢を見たと思うか。
    幼い企みが気の毒に思えるほど、
    おとなの余裕を感じる。

    豪快な北海道も、閑静な総社市も、
    まるでその場にいるかのような気分。

    心落ち着く いい本だった。

  • この作品を読みながら、自分自身、今まで何回くらい約束をしただろうかと思い浮かべてみた。
    人と人との関係が繋がって、約束を交わすことが、この作品の中ではとても素敵に描かれていた。
    魅力的な登場人物たち、 飛行蜘蛛のエピソード、樹木や葉巻の薀蓄にゆったりと浸りながらも先が気になってあっという間に読み進めた。
    それで、結局、留美子と俊国はどうなったの?
    緑には打ち明けたの?
    この2点がはっきり判らなかったのが、ちょっと残念。
    留美子に関しては、きっと新しい恋が芽生えたのだろうなという話の流れだったけど。
    12月5日、留美子と俊国一緒に飛行蜘蛛を見に行く場面も読みたかったなあ。

  • 実は、氷見留美子が主人公ではなくて、雪迎えの蜘蛛と上原桂二郎が主人公だったのかも。十年後の約束が、なんだかうやむやになってしまって残念だった。

  • わりとミステリ色が濃くなりました。自分の気持ちを追いかける留美子は先を見ていて、周りとの繋がりが広がる中で過去を振り返る桂次郎、これが歳の差なのかなと思います。やっぱり立場的に近い留美子の章の方が読みやすいかったです。
    留美子と俊国の関係にしても、少年時代からずっと年上の女性を思い続けているような良い男がいるわけないんだけど、それがするりと当たり前のように今の2人として成り立つんだからこの作品はすごいと思います。上品ってわけじゃなくて、しっとりとした品のある作品という感じ。
    俊国のおじいちゃんが味のある人物だったので最後にもう一度お目にかかりたかったなと思いました。

  • 『ぼくは見ました。蜘蛛が空を飛んでいくのです。十年後の誕生日にぼくは26歳になります。12月5日です。その日の朝,地図に示したところでお待ちしています。お天気がよければ、ここでたくさんの小さな蜘蛛が飛び立つのが見られるはずです。ぼくはそのとき、あなたに結婚を申し込むつもりです。こんな変な手紙を読んでくださってありがとうございました。須藤俊国』

    16歳の少年が 書く手紙とおもえないような せつじつさと 青い想いがつたわる。
    なぜ、向かい側にひっこした留美子と結婚したいと思ったのか。
    その理由もなく,多分突然啓示のように、雷に討たれたように、そう思ったのだろう。

    この手紙をうけとった 留美子は 22歳。
    10年迎える前に その手紙を再度読み返した 32歳の留美子の側から
    須藤俊国とは、いったいだれなのかを 解き明かしていく。

    宮本輝の物語には 手紙が 重要なポイントとなる。
    手紙の中で 心情を吐露することで 物語を飛躍させる。

    空飛ぶ蜘蛛 が 象徴的で 『けなげ』という言葉に つながっていく。
    この物語の主人公は 『約束』でもあるが、
    もう一つの大きなテーマは『けなげ』でもある。
    宮本輝は言う
    『(空を飛ぶ)蜘蛛たちに幸運な飛翔をもたらす
    大自然の慈愛に似た何ものかを、現代のおとなたちは学んでこなかった。』

    須藤俊国という オトコを焦点にするのでなく
    須藤俊国の父親 54歳の上原桂二郎が焦点となって 物語は進行する。
    上原桂二郎は2歳の連れ子がいた女 さち子を妻として 
    その連れ子である俊国を実のこのように 愛情を注ぐ父親を演じる。
    また、29歳の新川緑が イギリスの大学で勉強して、建築事務所に働いているが
    じつは 新川緑の母親千鶴子は上原桂二郎の恋人だった時期があった。
    千鶴子の兄の非道さが障害となり,結婚することができなかったのだが、
    別れた時期にあうような子どもが 千鶴子には生まれていたことをあとから知るのである。
    上原桂二郎は緑を娘ではないかとおもうのだが,
    それを かたくななまでに 育てた 緑の父親の新川秀道がいる。
    ここにも、けなげな 父親が 存在する。
    新川秀道は 妻 千鶴子のことを 『器量の大きな女』だったと上原桂二郎に言うのである。
    さきごろの 遺伝子判定で 自分の息子ではないと大騒ぎする芸能人とは
    人間の質が違うのである。

    宮本輝の中にある 父親像としての 松坂熊吾が、
    この物語では 上原桂二郎 として うけつがれる。
    また 須藤潤介もその分身となる。
    軍人的な精神を受け継ぎ矍鑠としている。
    この二人は 宮本輝の父親像 大人らしく 力強いという
    『おとなの幼稚化』の対抗軸として存在している。

    戦争体験は 死線をくぐってきたがゆえに 人間としての尊厳をもち
    大人として処することができる。
    芦原小巻はがんとの闘病でたくましく生還した32歳の女である。
    小巻は チャラチャラした八千丸ではなく、
    足に地がついた青年を選ぶのである。
    ガンというのは 死を見つめることができる神様の贈り物かもしれない。
    若い者のガンは進行が速く 老人のガンはゆっくりと蝕む。

    大人の姿として 木を愛でる留美子の父親とそれを受け継ぐ亮。
    イチョウの一枚板が いいかげんに すっぽりと 物語におさまる。
    仕事に打ち込んできたが故に、趣味としては 葉巻しかない 上原桂二郎。
    しかし,葉巻への思い入れは、並大抵ではなく、
    まわりに 葉巻のよさを ひろげていく 葉巻伝道者でもある。

    宮本輝の物語は パッションがなく 淡白な感じがある。
    それは、登場する人たちが 善人が多いからだ。
    この物語で言えば 悪人は 翠英が 筆頭ともいえる。
    それは、誠意に理解を見せず、お金 にとらわれていた。
    時折でてくる人たちは 失敗しても めげずに 立ち直った人たちだ。

    石川啄木の言葉が沁みる
    こころよく 我にはたらく仕事あれ それを仕遂げて 死なむと思ふ

  • 様々な人達のこころの葛藤。言葉にならない言葉。圭二郎、俊国、留美子と色々な縁で繋がっている人達との関係がどこにでもある感じで描かれている。私としては最後は約束の地で俊国と留美子が会うシーンをどう描くのかを見てみたかった。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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