青が散る 下 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2007年5月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784167348236

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わって、もうこの登場人物たちとは会えないのかと思うと寂しくなる、そう思わせる読後感を与える物語こそ、最高の作品だと思う。
    大学4年間はあっという間だと感じさせる。疾走感がそこら中に散らばっている。大きな出来事は起こらないが、多くの出来事を通して絆を深めるテニス部の部員たち。恋に部活に全力な主人公たちに嫉妬してしまった。
    そして、新装版に追加された、森絵都さんの解説もよかった。

  • 部活や恋愛、友情、モラトリアム。
    眩しくて、時にダークで、でも全て青い。
    最後は切なく青が散った。その青の余韻がしばらく漂っている。

  • 感想
    思い通りにいかない恋、全てを捧げた部活、周囲で起こる激動。カオスな学生生活にどこか懐かしいようなリアルさを感じる。

    将来の燎平と夏子はどうなったんだろうと色々想像させるような内容だった。


    あらすじ
    安斎は全日本で試合するも、病気がぶり返して危険する。鬱病であると分かる。友人のガリバーはレコードデビューするほど有名になっていた。

    応援団の端山は、不動産業が軌道に乗り始めていた。1学年下のポンクが生意気になってきたことを理由にポンクの退部をかけて、燎平と対戦することになった。燎平はこれまでポンクに勝ったことはなかったが、不退転の決意で試合に臨む。

    燎平はポンクをフルセットの上に敗る激闘を見せる。ポンクは退部した。田岡というデ杯の候補選手になった人の婚約者から、田岡と夏子が付き合っていると聞く。夏子の母親からの要請で駆け落ち同然の夏子に伝言を伝えにいく。

    4回生になって最後の大会で金子とダブルスを組んで、優勝候補に敗れるも、インカレ出場を果たす。インカレの1回戦で再び同じ相手に当たるも敗れる。その日、応援に来ていた安斎が自殺したことがその後知らされる。

    燎平は父親の会社に入るつもりだったが、家業が傾き、会社を畳むことになって、急遽、就職活動をして広告代理店に滑り込む。卒業が必須の条件になったが、単位を落として、追試を受ける。奇しくも夏子と二人きりでの追試だった。

  • 結構古い作品ながら、それを感じさせない瑞々しさが漂っている。若い時ならではの澱みが魅力的。
    中でも、ラストが切なくてとても良かった。

  • 主人公は大学でスポーツに打ち込み友人たちに囲まれ、一見リア充のようにも見えるが、本気で惚れた女には言いたいことの半分も言えない、今の何者でもない自分に対する不安にただ今はテニスに直向きに打ち込むしかないという部分にはいじらしさや青春の影を感じた。
    主人公はその潔癖さ故に結局は夏子を受け入れず、主人公だけが最後まで若者だった。しかしそれも直ぐに喪われてしまうのだと思うとなんだか切なくなった。

  • 一人一人の「若者」をここまで緻密に美しく表現できる宮本輝は凄いとしか言いようがない。

    大人になって大学生活を懐かしむ時期にもう一度読んだら、その時は違った感じ方をすると思う。将来再読したい。

  • 青が散ったなぁ。
    大学生の青春。

    人間、自分の命が1番大切。
    大きな心で押しの一手。
    生きていたいだけの人間の駱駝。

  • 頑張れば夢は叶う。諦めなければ必ず手に入れられる。そんな幻を信じ込んでいた20代の頃。まぶしいとか、華やかなどという美辞麗句ではなく、その頃の痛みや歓びを頁を捲りながら、思い起こした。

    30年以上前の若者たちを描いたこの作品には、適度な湿り気の中に、陰と陽が混在する。それは厳しい現実を描くだけではなく、かといって夢だけを呈するのでもない。希望も諦念もある。成功と挫折が混在する。

    生まれや育ちのなかで、心に澱みを抱えて生きる現実。一人一人背負っているものが異なり、様々な問題を抱えつつ、何か光や温かさのようなものを求めて生きている若者たち。

    その人物造形が実に魅力的だ。迷い、不安、哀しみ、強さ、しなやかさ、脆さや弱さが微妙な配分で同居している。人々がそれぞれ、重層で多面性を持ち、その相互作用によって、出来事が進んでいく。男女が心惹かれ、心を寄せ合い、また心が離れていく様に、私も引き込まれる。

    安斎君と、辰巳教授の存在とその死は、とても重要で衝撃的だが、生きることと死ぬことが同じ重みで存在するのも宮本作品の醍醐味のような気がする。

    宮本作品でなければ満たせない何かが生まれてしまったようだ。これからまた手に取るのがとても楽しみ。

  • これは青いです。
    こんな多感な大学時代をすごせただろうか?
    大学ってとても特殊な環境であるし、体力と時間と好奇心の総量がMAXの時期だろう。
    ここで何を体験するかで人生かわるんだろうなぁ。

    このモヤモヤした感覚、何者にかになれるのかの期待と不安と現実、そして行動。
    ホント行動できなかった自分。失ったものは大きいんだろうな。
    もう、ボクには訪れることのない青春です。
    そんなムードが溢れていてとても青いのです。

  •  下巻。
     仲間たちがそれぞれ思う道をもがきながらも進む中、あてどがなく焦る燎平はひたすらテニスに打ち込むが、恋い焦がれていた夏子が別の男性と駆け落ちをしてしまう。歌手を目指していたガリバーや、不動産ビジネスを手伝い始めた端山たちもそれぞれつまずき、仲間の一人は悲しい決断をしてしまう。
     完璧に進んでいると見えた仲間たちの挫折を見て、燎平はかえって自身の喪失感を実感し、あらためて自分自身と向き合うことを決心する。

    ”そして燎平は、自分は、あるいは何も喪わなかったのではないかと考えた。何も喪わなかったということが、そのとき燎平を哀しくさせていた。何も喪わなかったということは、じつは数多くのかけがえのないものを喪ったのと同じではないだろうか。”(P.310)

     それは燎平の青春時代が終わった印なのかもしれないし、新しい何かが始まった区切りなのかもしれない。

     読み終わってみると、見事なくらいに登場人物たちがきれいに書き分けられていた。読んでいる途中、もがいている若者たちの姿がテレビドラマの『ふぞろいの林檎たち』と重なり、本作のオマージュだったのかと思うほど近いものを感じたが、調べてみると『ふぞろいの林檎たち』は1983年放送開始で、1982年に単行本として刊行された本作とそれほどずれていなかった。

     途中までテニスの場面は退屈だったが、下巻のポンクとの試合シーンは手に汗握るもので、迷いが吹っ切れたように精神集中する燎平の心境が刻々と描かれ、スポーツ小説としても読めた。この試合の場面で初めて辰巳先生が登場するのだが、本作で唯一と言える大人の男性なので、せめてちらっとでも上巻から登場させてほしかった。

  • まいった。心が大きく揺れた。普通2-3日で読む本が10日近くかかった。読み終わりたくない感覚、それ以上に、何度も何度も数十年前の学生時代のさまざまな思いが蘇り、本と回想が交錯し、また本に目を落とすことの連続。新設大学の学生の葛藤、正義感、拙さ、テニス、恋愛、人の死を描いた青春小説。★★★★★
    日頃考えたこともないいろんなものが蘇った。仕送りが殆どなく合宿費がだせず親の金で遊ぶ先輩に怒り剣道部を退部したこと、親友の事故死、何もする気がおきず試験の放棄、大学に幻滅し中退を決め親兄弟からの連日の説得、バイトで税務専門学校通いが滞納で首、四年間ただ続けた障害児のボランティア・・。屁理屈で生き方を正当化しても、実はどこを向いているのか自分は騙せなかった思い。でもあの時代がなかったら・・・。小説に同化した感じ。

  • 面白かった。純情すぎて、それがプライドとなってそのせいで肝心なところに足を踏み出せない感じが良かった。主軸がずっと友達なのがめっちゃ良い

  • 上巻では、そこまで面白いとは思わなかったが、下巻で、夏子への恋やテニスの試合など、盛り上がる場面を読んで、やっとこの作品の面白さがわかった。
    面白い。普通の主人公なのに、周りでは、ちょっと普通じゃないことが起こったりして、青春ってこんなものなのかなと思わせてくれる。
    私はあまり昔の作品が得意ではなかったが、少しづつ読むようになって、その作品が何十年も人から愛される理由や、面白みがわかってきた。嬉しい。

  • 何かを得て何かを失い、その繰り返しでひとは大人になっていく。

  • 時代が違うし過ごし方も全く違うのだが、リアルに大学時代の熱さを思い出させてくれた。

  • 青春は尊く儚い.... 美しく、そして残酷でもある。
    物語が終わってしまった時のこの圧倒的な喪失感を
    どう処理すればいいのでしょう。
    私も遼平や皆と同じ、かけがえのない何かを追いかけて、
    そして喪ってしまったような気がする。

    来年の夏も、また遼平や夏子、金子... 皆に会いにくることでしょう。
    それまで、元気でね。(July 14, 2020

  • 中盤でテニスの試合を長々と展開する場面は中だるみがあったけれど、見所と言うべきなのだろうか、場面場面で情景がみるみる浮かび心震わされた。それは全体にも言えたし、主人公の試合でのメンタルや日常の精神的な青さ、青春が散ると自覚ラストシーン。見事な物語だったと思う。
    そして残るなんとも言えない悲しさ。喪失感。

  • 上下巻一気読みでした。
    色々と後悔することもあるし、間違った選択もするけど、それら全てひっくるめて”青春”なのだと思わせてくれる小説。

    燎平や金子のような不器用で真っ直ぐでどこか潔癖な感じも、
    夏子のように小さな世界の中で負け知らずで、自信に満ち溢れててどこか傲慢な感じも、
    祐子のように内に秘めた激しさを周囲には見せられずに、装って振る舞いながらバランスを保とうとする感じも、
    安斎の宿業と闘う苦しみもわかる気がする。
    そういう部分が自分にもあったなと感じるし、自分だけじゃなかっただろうなとも感じる。

    ”あの頃は青かった”とか”多感なお年頃”とか言う年代の登場人物の心情をこんなに面白く書ける著者の宮本輝は凄いと感嘆。ともすれば、つまらなくなってしまいそうな内容なのに。文学的なことはよくわからないが「瑞々しいってこういうこと?」と感じました。

    ー若者は自由でなくてはいけないが、もうひとつ、潔癖でなくてはいけない。自由と潔癖こそ、青春の特権ではないか。ー<引用>

  • なにかに一心に没頭できたら、それが青春だと思う。

  • 自身の青春時代をベースに描いた作品。期せ ずして入学した新設の大学。何をやるかあて もなくフラフラする日々。ふとしたキッカケ で知り合った学友に誘われテニスに明け暮れ る毎日へ。恋愛、学業、就職そして大切な仲 間の死。弾ける瑞々しさの中から覗く苦悩。 ”人は何のために生まれてきたか?僕らは何 を成せるだろうか?“。青春の特権である自 由と潔癖さを老仏人と老教授より適宜適切に 学び、精一杯の生活の中から“進むべき道“を 自ら導き出し真っ直ぐに突き進む。更に真剣 さの象徴である圧巻のテニス試合描写。緊迫 する心理戦と躍動感溢れる若い血潮。青春時 代にフラッシュバック!!。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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