何用あって月世界へ: 山本夏彦名言集 (文春文庫 や 11-17)

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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167352172

感想・レビュー・書評

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  • 名言集なので、感想といっても…。
    付箋をたくさんつけたので、私の感想を付しながら引用を。

    ”本というものは、晩飯の献立と同じで、読んで消化してしまえばいいものである。記憶するには及ばないものである。何もかも記憶しようとするのは欲張りである。忘れまいとするのはケチである。”
    私は忘れまいと記録しているケチ野郎である。
    だって読んで消化できない部分も、記録しておけばそのうち消化できる時がくるかもしれないじゃない?←それをケチケチ根性という

    ”私は、正直者は馬鹿をみるという言葉がきらいである。ほとんど憎んでいる。まるで自分は正直者だと言わぬばかりである。この言葉には、自分は被害者で潔白だという響きがある。悪は自己の外部にあって、内部にないという自信がある。”
    ”非は常に他人にあって、みじんも自分になければ、経験が経験にならない。”
    この2つは、大きな声で言わないけれど、私も小さい声で結構言ってたわ。
    人のせいにして反省しない人に限って、同じ過ちを繰り返すよなあって。
    もちろんすべての正直者が馬鹿を見るとは思っていないし、馬鹿を見た人のすべてが正直者だとも思っていません。

    ”「告白」というものは多くまゆつばである。自慢話の一種ではないかと私はみている。”
    なるほど。確かに。

    ”明治時代の翻訳は、鷗外(森)、二葉亭(四迷)、思軒(森田)、涙香(黒岩)のそれのように、何よりよい日本語でなければならなかったので、読んでよく分かりましたが、大正昭和になってからは原文に忠実なことを第一にしたので、勢いよい日本語ではなくなりました。こうして難解な翻訳による日本語の支配の時代が始まります。”
    とはいえ、現在は漱石は読まれても鷗外すらほとんど読まれなくなったそうです。
    舞姫とか高瀬舟も教科書から消えた、と。
    黒岩涙香のは翻訳ではなくて翻案だからなあ…でも確かに勢いがあって面白い。

    ”十なん年前はじめて世間が創価学会を袋だたきにしたとき、ひとり袋だたきにしないことは許されない。かくて日本中の紙面は袋だたき一色になって、それでも彼らは強いられた自覚がないから言論は自由だと思っている。”
    この、みんながみんな同じ論調というのが、ただいま現在も継続中で、それがとても気持ち悪いの。
    そして袋だたき。
    この容赦なさを垂れ流しておいて、「いじめはいけません」の説得力があると思っているのだろうか。
    厳格と寛容の両立ってそれほどまでに難しいものなのだろうか。

    ”あれ、老衰の兆候なんですよ。年とってから一番避けなくちゃならないのは、人生の師匠になりたがることと説教すること。年とったからって自動的に人の師匠になれるなんて、とんでもない誤解ですよ。”
    いるよね、そういう人。
    で、説教している相手もそれなりの大人であることを忘れて、気持ちよく説教してるんだろうけれど、傍から見たら見苦しいことこの上ない。
    相手の立場と自分の気持をはかりにかけて、自分の気持の方が重いなんて、もう老衰の兆候なんですね。

    ただ一点夏彦さんに言いたいのは、料理をしなくなって戦後の女性はだめになった、家庭がダメになったと何度も書いていますが、江戸時代の女性がそれほど炊事をしていたかというと、どうでしょう?
    お勝手仕事をする女中を雇っている大店などでは、もちろん奥様は炊事をしないでしょうし、長屋住まいの町人だって、毎日ではないけれど煮売り屋から総菜を買ったりしたし、外食産業(テイクアウト含む)も割と流行ってたのよ。

    一日に三回食事を作っていたかというと、それはないね。
    二口(ふたくち)コンロどころか竈がひとつで、ご飯を炊いて、汁を作って、七輪で魚を焼いて?
    三回も食事の支度をしていたら、貧乏人ほど稼ぐ時間が無くなって困る。

    農民は一日に一回おじやを作って、それを2回に分けて食べる。
    おやつも、あれば蒸かした芋とか?

    全部が全部そういう食生活というわけでもないのだろうけれど、一日三回食べる、一汁三菜いや五菜だなどと言われるようになったのはごく最近のはなしだし、それは現在でも結構な労働なのですよ。
    やったことない人ほど要求が高い、と、常々思っているのですが、この件もそうだと思いますね。

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4167352176
    ── 植田 康夫《何用あって月世界へ ~ 山本 夏彦名言集 199209‥ ネスコ 200307‥ 文春文庫》
     
    …… P.51「毒言 独語」の項に、《毒言独語》P.75に収録されている。
    《毒言独語 1971‥‥ 実業之日本社》は所蔵なし。
    http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000103652
     
    …… 私は「言論の自由」と聞くとカッとなるくせがある。それは危険
    なときは黙っていて、安全と見てとると我がちに言う自由のことかと思
    うからである。── 山本 夏彦《箴言集》
    http://eight.tweettunnel.com/reverse2.php?textfield=YamamotoNuthiko
     
     平時の勇将、非常時の知将。
     
    (20150215)
     

  • 4/29読了 痛快

  • *図書館

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著者プロフィール

山本夏彦
大正4年東京生まれ。コラムニスト、作家。「室内」編集・発行人。昭和22年『中央公論』に発表した「年を経た鰐の話」が坂口安吾らの目にとまり、注目を浴びる。その後、出版社勤務を経て昭和33年、月刊インテリア専門誌『木工界』(36年に『室内』と改題)を創刊し、以来編集に携わった。『週刊新潮』『文藝春秋』などにコラムを連載、一貫して、世相をするどく諷刺する辛口コラムを得意とした。昭和59年第32回菊池寛章を受章。
著書に『日常茶飯事』『編集兼発行人』『死ぬの大好き』『完本文語文』『「室内」40年』『私の岩波物語』などがある。平成14年に10月に死去した。

「2022年 『無想庵物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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