- Amazon.co.jp ・本 (685ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167357108
感想・レビュー・書評
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高杉晋作がいた幕末長州の倒幕へ至る直前までの激動を、晋作を中心に描いていて、それは当然面白いのだが、晋作を支えた3人の女性の姿が活き活きして描かれている。本妻の雅子、妾のおうの、そして望東尼。その姿が三者三様で、それは果たしてそれぞれが持つ性格によるものなのか、それともその立場によるものなのか…。
晋作という強烈に生きたひとりの男の人生に、立場も性格も違う3人の女が寄り添うその描写が非常に面白い。
そして、最後に晋作が弱ったとき、その三者が吸い寄せられるように晋作のそばに集まる。そのときに3人がとる行動が(雅子に限っては後年の行動も含め)、彼女たちの立場を表していて切なくなる。やはりこれも晋作という強烈な男があってこそなのだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
他の高杉晋作の本を読んでいないので、何とも言えないが、この本に限って言えば、ストーリー性は非常に優れ、高杉晋作という人物が丁寧に書かれており、すごくオススメしたい一冊。
この本では、あたかも自分が高杉晋作になったつもりに、主観的に物語を読まされてしまう。つまり物語に引き込む力が強い本。
何でそんなに引き込まれてしまうのか?
これは、物語と平行して読まれる晋作の「七言絶句」のおかげだろう。
高杉晋作は豪快なエピソードを中心に語られることが多いが「七言絶句」のおかげで晋作のナイーブな一面であったり、焦燥感だったり、多幸感だったり豪快な人物とは裏腹に、至って普通の人間臭さを深く感じることが出来る。
その"豪快"と"普通の人間臭さ"のギャップが、この人物の魅力の1つなのかもしれない。 -
豪傑という彼のイメージからは程遠く、繊細な心が描写された一冊!
だが、その行動力・決断力たるや素晴らしいものがあり、激動の幕末において、長州藩を押し上げたのは彼の大仕事あってのものだと改めて認識しました。
萩で晋作さんの空気に触れてみたくもなった。感嘆の一言で締めくくりたい。 -
幕末の革命児と呼ばれる「高杉晋作」の波乱に満ちた生涯を、派手な部分を誇張しすぎずに、詩人になりたかった青年としての側面からも捉えているのが新鮮。
詩は、時代が時代なので口語訳がないと読めないけれど、情熱が伝わってくるのは著者の筆の力でしょう。
高杉晋作は破天荒な暴れん坊だったんでしょ、と思う方にほど読んでもらいたい。
実は、本を読むのが好きで、詩人になりたくて、親孝行しようと堅苦しい仕事に就いてみたりして(辞めてしまうけれど・・・)
そして、結核の身を削るように素人軍師として働き、それぞれタイプのまったく違う3人の女性に最期を看取られた人なのだと、知ってもらいたい。
絶版なのが本当に悔やまれる一冊。
以下、引用。
「時代の激しい渦に巻き込まれて、危険な行動に身をさらすことは決して本意ではなかったが、与えられた使命の前では武士らしく散る覚悟もできていた。少年時代からひそかに抱いた詩人として世に出るという夢は、もう捨ててしまっている。だが詩人の魂は持ちつづけ、晋作はそのようにいつも詩人だった。晋作の詩は、もはや死地に向かって進むみずからを激励するために、つむぎだされて行く進軍の譜であったかもしれない。」 -
2010.2.24貸借
2010.3.14読了 -
山口出身の古川薫氏の長編小説。
作者の高杉晋作への共感が感じ取れます。 -
高杉晋作が主役の長編。分厚いので読みごたえあります。これも絶版なので図書館か古本屋で探すしかない。
少年期から江戸遊学までの描写がしっかりしている。村塾での交流だけでなく、明倫館のエピソードも面白い。必ずしも周囲に認められていなくて孤独感や距離感が感じられる。入江の位置付けが本当に良い味出してます。 -
破天荒な奇才、高杉晋作。彼の一生が幼い頃から描かれているので、興味があってもあまり予備知識がなかった私には良かったです。高杉と、彼を取り巻く人々と風雲の時代が魅力的に、鮮やかに浮かび上がる力強い作品。面白かった!