明治の武人宰相 桂太郎の人生 山河ありき (文春文庫 ふ 3-15)

著者 :
  • 文藝春秋
3.15
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167357153

感想・レビュー・書評

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  • (あらすじ)
    軍人としては陸軍大将、政治家としては実に三度も首相の座についた桂太郎。激動の明治時代を生きたこの武人宰相は妥協と忍従の姿勢の陰で、癌研究会、日本赤十字社、そして拓殖大学の創立に尽力、「新生日本」のための布石を次々に打っていたーー。「ニコポン首相」と呼ばれた男の知られざる豪胆さを描く。

    (感想)
    文末「解説」によると、著者は、ドラマ性が薄いとされる桂太郎をとりあげた理由をこう述べたそうだ。「要するに、小説の題材としては桂太郎はちょっと地味なんですね。それと、桂というのは人気がないだけでなく非常に評判が悪い宰相なんです。その評判の悪さというものは、一つには彼の引き際に起因している」「桂を書くことに決めていろいろと調べてみると、言われるほどつまらない男ではないんじゃないかと思い始めたんです。調べるうちにだんだんと愛着が湧いてきたんです(笑)」…。その談話の通り、全体を通して地味な印象でしたが、歴史の事実として読みやすくなんとなく桂太郎像を心の中に作ることができました。
    ただ、こうしてみると、良し悪しはともかく、やはり司馬遼太郎の人物の描き方はすごいですね。地味なキャラクターも強烈に心に刻まれたりしましたから…。
    失礼を招致で自己分析すると、私としては、司馬遼太郎の「物語」を読んでからその事実関係の洗い直しとして古川さんの作品を読むと、すごく腑に落ちる、面白く読めるのです。現に、「斜陽に立つ」「天辺の椅子」「狂雲われを過ぐ」を読みましたが、とても面白く読めましたから。
    もちろん、本作品が面白くなかったわけではないのですが、どうも、桂太郎という人物について強烈に印象に残らなかったものですから、1年後にはだいぶ忘れてしまいそうで…。でも勉強になりました!

  • いままでの桂太郎のイメージが変わりました。

  • ニコポン大臣、桂太郎の小説。児玉源太郎主人公の『天辺の椅子』と大いにリンクしてます。両方読むことをお勧めいたします。<br>先見の明を備え、自費で欧州に留学、プロシア軍制を日本陸軍に逸早く導入するなど軍制改革を推し進めた武人であり、また総理大臣には三度も就任するという政治家である。足軽あがりの陸軍元帥で嫌われ者の山縣有朋の、強力な側近として多忙に過ごした桂太郎(この人、戊辰戦争とか数々の国難だけでなく日清、日露戦争まで経験してんだよね…大変だったろうなあ)軍人訓戒を振り回して谷干城らフランス軍制派の四将軍を陸軍から追い出すなど政治的に穏便ならぬこともやったが、「ニコポン」という、そのニックネームの示すとおり温厚柔和(表面上は)な人柄には親しみさえ覚える。<br>病床のニコポンを見舞った児玉源太郎が付きっ切りで看病したり、「魚が食べたい」と言うニコポンにみずからさばいた刺身(…手料理!)を振舞ったりと…児玉との友情話には萌えた…

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著者プロフィール

作家

「2017年 『西郷隆盛 英雄と逆賊 歴史小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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