- Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167385040
作品紹介・あらすじ
銀座が街の王様で、僕はデザイナー一年生だった——憧れのデザイン業界での修業時代を文章と懐かしいデザインで綴った六〇年代グラフィティ。講談社エッセイ賞受賞。(井上ひさし)
感想・レビュー・書評
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惜しくも2019年に亡くなった著者の、社会人デビューのころのことをつづったエッセイ。
キャリアのスタートはグラフィックデザイナーとして、イラストだけではなくレイアウトを含めたデザイン全般を手掛けていた著者だが、グラフィックだけでなく、作詞作曲もやっていたことを本書を読んで初めて知った。
また、タバコのハイライトのパッケージデザインが著者であったことは有名だが、それが採用されるまでのいきさつが本書に書かれていて興味深かった。
一方、今は亡き社会党のマークも著者がデザインしたことは本書を読んで初めて知った次第。
そして、本書をさらに魅力的にしているのは登場する人物たちである。
田中一光、横尾忠則、高橋悠治、宇野亜喜良、篠山紀信、立木義浩、三宅一生等々、今となっては錚々たるメンバー。
田中を除き、いずれも当時はまだ若手で、全く無名だった人もいて、ヤングXXX的なエピソードわかって面白かった。
続巻あるいは、後の時代のことをつづったエッセイ集があるのか、ものすごく気になる。ちょっと探してみよっと。 -
途中にライトの社員旅行の話が出てくる。和田誠さんはひたすらみんなが遊んでいる様子をフィルムで撮影して、帰ってきてから昼休みに上映した。そこに和田誠さんは全く映っていなかったという話。
この本もそれに近いところがあると思う。和田さんの為人はなんとなく文体で伝わってはくるのだけれど、やっぱり和田を囲んだ人たちにスポットライトが当てられている。だから、途中で和田さんのことを生意気だと何回か誰かのコメントで出てきた時意外だった。
ということで、和田さん本人についてはヴェールに包まれたままの部分が多いのだけれど、そして和田さん本人も自分の感情を開けっ広げに話すのが好きではないと思うのだけれど、無口で穏やかなイメージだった和田さんは思った以上に親しみやすそうで、そして芯のある方だったんだなと思った。
イラストがたくさん挿入されているのが嬉しい -
読みやすく、それでいて日本語がとても良いものだと思わせるような文章だった。絵だけでなく言葉遣いも上手いのかと驚く。
和田誠さんは最近他界されて間もない。近頃、生きているうちに知ることのできなかった素晴らしい方々の名前を訃報で知るたびに「生きているうちに知らなければ意味がない」とつくづく思い知る。それだけ、「まだ生きている」ことが貴重なのだ。
綴られた著者の銀座の思い出にはたくさんの人の名前が載っている。今となっては当たり前なものが、まだ当たり前でなかった時代だったようで、時代が変わるということはいろんなものを得る代わりに失うことなんだろうか。少し未来が不安になった。
良い本だったと思う。 -
優秀なデザイナーの書く文章は優秀なデザインと同じように、読みやすくて、しかも深い、というのが持論です。和田誠のこのエッセーも、彼のデザインやイラストのようにシンプルでピュアで温かくて真っ直ぐでした。彼が多摩美を卒業して銀座にオフィスを構えるライトパブリシティという広告制作会社に入ってた頃の青春プレイバック。「銀座百点」に連載されたものとのこと。「銀座に勤めてはいたけど、銀座について詳しいわけじゃありません。自分の仕事や交友の思い出などを織りまぜて書くのでよければ…」と始まった連載でしたが、彼の青春だけでなく、広告、いや日本のクリエイティブの青春のタイムカプセルでした。「そして多摩美の図案科に入学したのであり。図案科というのも古い言葉だ。今はデザイン科と呼ぶのだろう。あのころはグラフィック・デザインなどという洒落た言葉はあまり使われず、商業美術とか応用美術などと呼ばれていた。」(P16 )「多摩美の先輩で、専売公社のデザイン部門(当時は意匠課という名前だったかもしれない)に勤める人がいた。」(P66)そんな時代。この時代からグラフィック・デザイナーが、アートディレクターが、コピーライターが、アニメーターが、イラストレーターが時代の前面に表れてくる、そんな日々の記録です。図案、意匠という漢字が捨てられデザインというカタカナが時代を引っ張っていく、そのはじまりがイキイキと描かれています。どの人、どの人もみんな伝説のクリエイターなんだもんんぁ…すごいネットワーク。だから「銀座界隈ドキドキの日々」はスーパースターたちの「銀座界隈キラキラの日々」なのです。そして広告がどんどん産業化して、ビジネスがドキドキ、キラキラを押し出し、みんなそれぞれの道を歩んでいくのも、また青春の物語なのでありました。
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先日亡くなった和田誠さんのエッセイ。
好きを仕事にしてるのが伝わってきて羨ましい。
キラキラした昭和のデザイナーの世界が描かれていて、錚々たる顔ぶれの交流している人々が登場して楽しい。 -
こういうふうにたのしく仕事ができたら、最高だな。
文章が上手かった。 -
和田誠が多摩美大を卒業後、デザイナーの道に進んだ当時のことを回想するエッセイ集。気楽な感じで読もうと思ったら、意外と読みどころが多い。
それは和田誠という若き才能がどのように自らの道を切り開いていくかという道のりが面白いだけではなく、デザイナーという職業が日本でビジネスとして成立する歴史がつぶさに語られているからである。デザイナーという職業が成立するには、その需要にあたる広告・マーケティングという世界が花開く必要がある。本書は黎明期の広告・マーケティングの世界のワクワクさを追体験できる点で読み応えがあった。
また、和田誠自身の交友関係も改めて読むと凄い。寺山修司、武満徹、谷川俊太郎らとの仕事や、良きデザイナー同士としての横尾忠則、デビューしたばかりの篠山紀信との協働など、こんな交友関係が、と改めて驚かされる。 -
スキャニングを機に20年以上ぶりに再読。60年代、70年代の広告界はやっぱり面白い。
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初出は「銀座百点」連載。
ちくま文庫新刊『井上ひさしベスト・エッセイ』に収録されている文庫解説からの芋づるで手に入れた。
美大を出て、銀座にあるデザイン事務所に職を得たところから始まり(1959年)、フリーになるまで(1968年)の10年弱を回想した自伝的エッセイ。有名無名さまざまな人との出会い(のちの巨匠や大御所もかけだしの頃)、職場で、あるいは手弁当で手掛けた仕事などが当時の銀座の景色とともに語られる。仕事からつながる人脈で自分のやりたい仕事をすこしずつ開拓しつつ、広告の仕事は自分に合わないと見極めたこの下積みの時期があってこその、あの和田誠だったのだな、と理解した。 -
会社にいたいろんな人たちのこと、失意や激励や友人たちとの活動、当時の作品など、こちらもドキドキで読みました。和田誠さんが、こんな風に若いころを過ごしていたということが、とてもリアルに感じられました。
著者プロフィール
和田誠の作品






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遅ればせながら、フォローして下さりありがとうございます!
和田誠さんは「麻雀...
遅ればせながら、フォローして下さりありがとうございます!
和田誠さんは「麻雀放浪記」の映画で知りました。とても好きな映画なんです。
それからあれこれ知るにいたりました。
知れば知るほど面白いですよね。
私もこの本を読んでみたいです。
ぜひ、本書お読みください。なぜ、和田さんが映画や映像にもこだわっているのかの一端を知ることができると思います。
あと、映画「麻雀放浪記」についてですが、昔劇作家で演出家の故つかこうへいがエッセイで、和田さんがこの映画を白黒で撮ったのは、和田さんは白から黒までが単純に二つではなく、何十段階の階調で見えるので、白黒で十分で、カラーにしたら頭がおかしくなっちゃうからではないか、と書いていたのが印象的でした。ちなみにそのエッセイ集も和田さんがイラスト描いていました。
この本はちょうど読みたい本のリストに入っておりました。
「本にまつわる...
この本はちょうど読みたい本のリストに入っておりました。
「本にまつわる本」を集めておりまして、今はそちらに夢中ですが、たまには他の本も読みたいのですよね(*´▽`*)
膨大な仕事をされた方なのに、嫌なエピソードがひとつもないってすごいことです。
「白黒は単純に二つじゃない」って、すごい言葉ですね。ちょっと思いつきません。
ありがとうございました。