「トイレと文化」考 はばかりながら (文春文庫)

  • 文藝春秋 (1993年1月1日発売)
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  • 本 ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167408022

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  • 著者:Henry Stewart 1941- 文化人類学。
    著者:松本 弥〔まつまと・わたる〕
    カバー:ヒサ クニヒコ
    イラスト:山形 彰吾


    【目次】
    はじめに(一九九三年五月 スチュアート ヘンリ) [003-011]
    目次 [012-014]


    文明と文化について 017
      「文明人」にはアザラシは捉えられない
      文化に高低はあるか


    排泄行為と羞恥心について 024
      トイレに行くのをはずかしがるのが文明人か
      「未開」とは何か
      平気でトイレに立つ日本女性
      一〇センチも堆積していたロンドンの道路
      便器に坐ったまま主人の話を聞く
      みられるくらいなら死んだほうがまし
      肛門をふさぐ儀式
      アメリカのトイレは文明的か
      はずかしさとは何か
      羞恥心の差と文化の差
      文化はつねに変ってゆく


    清潔感について 062
      排泄物は嫌われるウン命にあるのか
      都市に住む「未開人」
      一生風呂など入らなくても平気だ
      伝染病も交易された


    お尻を拭く話 081
      人はなぜお尻を拭くようになったか
      拭き方のいろいろ
      便まで軟弱な現代人
      煩雑なトイレ作法
      便箋に使えるトイレット・ペーパー
      男だってオシッコを拭く


    極寒の世界で 104
      「エスキモー」という呼称について
      そのために何枚脱がねばならないか
      ベッドに直接
      野外での用便の大敵
      酷寒の真冬に排泄する技術
      豚を食べない中東にも豚便所


    トイレの変遷 127
      人はウンコの仕方まで学習しなければならない
      トイレのはじまり
      古代のトイレを特定する手法の確立
      カワヤは川屋?


    石の文化とトイレ 171
      人は「文明」の発祥時から水洗トイレを持っていた
      ローマの下水道
      アテネの泣き所
      いつからトイレでの読書がはじまったか
      ロンドンでは空から糞尿が降ってくる
      男性のためのレディ・ファースト
      糞尿まみれのヴェルサイユ
      糞よけ用の靴
      茶屋は用足しに立ち寄る所


    糞尿の利用法 228
      日本の町がきれいだったわけ
      大きな金が動く下肥市場
      下肥バブルの崩壊
      なつかしいあの匂い
      化学肥料のこわさ
      一万人の人糞で四〇〇頭の牛が飼える
      薬品としての尿
      呪力を持つものとしての尿


    おしまいに [322-328]
    本書で参考にさせていただいた主な文献 [329-333]


    コラム目次
    1 食物はどこからウンコになるのか 055
    2 光るオシッコ 072
    3 睡眠物質のナゾ 074
    4 痛風患者は英雄になれる? 077
    5 やたらに作法が煩雑な禅寺のトイレ 148
    6 清流が黄金の川に 154
    7 鑑賞用のトイレ 159
    8 女性の立小便について 164
    9 鉄道の糞尿苦心譚 197
    10 飛行機のトイレ苦心譚 208
    11 科学技術の粋・宇宙トイレ 222
    12 京野菜がおいしいわけ 253
    13 肥桶ができて居酒屋がもうかる 261
    14 寄生虫について 265
    15 下肥から火薬を 287
    16 オシッコが薬になる 290
    17 漢方薬としての糞尿 201
    18 糞尿の海上投棄 299
    19 水洗トイレの穴の先 307
    20 日本人はどんどん不健康になってゆく 318

  • 著者名のスチュアート ヘンリと言うところになにやら主張を感じるが、この方は素性がよく判りません。日本人的な生活を送っておられるようですがネイティブ日本人ではなさそうです。

    それはさておき、本書は古今東西の文化をトイレという切り口で語っているものです。著者の言葉を借りると「この本は『進歩』への盲進、そして言葉に規定される認識や固定観念を克服しようとする私の告白録であり懺悔録でもある」ということです。

    とは言いつつも、決して小難し本ではなく、タイトル通りのトイレについてのトレビア本といった側面のある本で語り口も至って軽快軽く読み流すことでも十分に楽しめます。

  • いつもわたくしのことをいぢめてくださる文化人類学者様の名(迷)著☆
    (人のこと指差して「アンタ変っ!!」とか、「変なのがウツル~」とか言うのはやめましょうね…

    ※お食事中は読まないほうがよろしいかと…

    排泄行為というとどうしても私は『斜陽』の主人公の母が庭で立ったままおしっこをしているシーンが思い浮かぶ。
    実際おしっこはしゃがんだり座ったりしてするものだと思っているのは、比較的そのスタイルに賛同する多数の国のうちのひとつにいるわたしたちだけ。

    文明に浴しすぎてリサイクルを怠りがちになっている文明人には、文明に浴しすぎなかったせいで排泄もリサイクルしつづける文化を知ってほしい。
    「文明」という錯覚は「文化」に優劣をつけたがるけれど、「文化」にそんなつまらないカテゴライズはいらないと思う。

    著者は現在放送大学で文化人類学を教えている。

  • 食べることに関心を向けると同程度に出すことにも関心を向けるべきなのもしれない。

  • 排泄の方法やトイレの在り方・汚物の処理法などについて、諸地域・民族の例や日本史の資料を引用しながら面白おかしく比較することを通じて、文化のちがいについて深く考察することの出来る大変貴重な一冊である。
    著者は一貫して、文化水準の差異に対して高い低い・進んだ遅れた等の表現を用いることは適切でなく、「ただ文化の形が異なっているだけである」とする、文化相対論的スタンスをとっている。話題が話題なだけに、この著者の研究者としての真摯な態度が光る。
    エセ潔癖症患者の進歩人が跋扈しているこの国にとって、今後最も必要とされる教養が、この本には詰まっている。もちろんちょっとした小ネタも大量に詰まっているが、ただのトリビア本として本書を読んでもらいたくはない。


    450円。

  • 著述内容的には、はかなり脱線の多い本といえるかもしれない(本文よりコラム部分が多い章すらある)。しかし、あとがきを読んで、著者の執筆の意図を理解すれば多岐な脱線話も然るべき意義があったと納得できる。「トイレ」というキーワードから多様な文化を語るには、多方面の脱線(のように見える)話題が不可欠なのであろう。

  • 面白かった。社会学の面白さを実感した。もっとも印象的なのはちょうど機内で読んだ飛行機のトイレの話。仕組みもさることながら技術ってすごいな、とか、妙にフムフム言いながら笑いをこらえて読んだ。

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著者プロフィール

放送大学教養学部教授。目白学園女子短期大学教授、昭和女子大学教授を経て、現職。<br>専攻:文化人類学。イヌイトを中心とする北方先住民族の伝統文化・社会と現状、先住民権に関する文化人類学的調査を行う。<br>単著<br>『はばかりながら「トイレと文化」考』文藝春秋、1993年<br>『民族幻想論——あいまいな民族つくられた人種』解放出版社、2002年<br>編著<br>『採集狩猟民の現在——生業文化の変容と再生』言叢社、1996年<br>『「野生」の誕生——未開イメージの歴史』世界思想社、2003年<br>Self- and Other-images of Hunter-Gatherers(with A. Barnard, K. Omura)国立民族学博物館、2002年<br>訳書<br>ウィリアム・ラフリン『アリュート民族——極北の海洋民』六興出版、1986年

「2005年 『北米』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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