- Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167414139
作品紹介・あらすじ
勝海舟と知り合った宇源太は、勝の頼みで浦上へキリシタンの救済に向う。幕藩体制が崩壊すれば、信仰の自由を手に入れることができると信じた敬虔な人たち。しかし、その思いを新政府は無残に打ち砕いていく。数多くの研究書・史料を駆使し、「日本はなぜ神のいない国になったのか」を問いかける傑作時代小説。
感想・レビュー・書評
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キリシタンの子孫、類族出身から見た幕末動乱から明治時代へ。ちょっと違った角度からこの時代を見れてなかなか興味深かった。
廃仏毀釈の真実はこうだったのかと思うと愕然とする気持ちである。
いつの時代も坊主はこんなものなのだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
上巻ではマイノリティー共通の苦悩や反発心など史実に基づいているだけに迫るものを感じられた。しかし下巻では一変、お話しの内容とは裏腹に軽い調子になってしまう。明治維新を成し遂げた時代はどことなく明るいムードが漂う。上巻の調子とは乖離がある。
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何となく神仏習合を八百万の神々に抱かれた日本文化の懐の深さと理解してきたが実態はかなり異なるようだ。江戸時代の仏教は国家統治のための行政機構の一翼を担う存在へと身を落とし最早、宗教とは言えない存在であったように描かれている。それに対するアンチテーゼとしての神道と神仏分離の思想が維新前後、政治的に利用され狂気とも言える廃仏毀釈へと流れ着く。さらに仏教・神道の名に隠れ生き続ける人民支配の道具と変わり果てた儒教の教え。近世以来我が国が八百万の神々の国ではなく神無国であったことが見て取れる。小説より論として読む。
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現在の日本に、これだけ仏教が浸透している理由や、日本人が宗教感覚が希薄な理由がなんとも明確にかかれた一冊。最初とっつきにくいかと思った題材だったけど、読み進めるうちに、どんどんはまり、さっくり読了。
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長編ですが、整理された文章で読みやすく、ページ数を感じさせない作品です。
作者の早世が惜しまれます。 -
2009年117冊目
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幕末の江戸を舞台に、キリシタンの子孫の青年が、時代の波に翻弄されつつも、自分の信念を貫いていく。日本の宗教史というか、時の為政者による身勝手な宗教政策のために振り回される民衆の苦しみが、強い調子で書かれています。海老沢作品は、ちょっと客観的な感じの淡々とした作風だと思っていてので、ちょっと意外な感じでした。