水底の祭り (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (1986年12月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784167440015

感想・レビュー・書評

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  • 生々しい性と憎悪に満ち、戦争の影が残る短編集。

    戦時下、そして戦後間もない頃の増幅していく憎しみ、妬み、孤独、攻撃性。様々な職種の人間が登場するが負の感情は共通していて、気を張って生活するヒリヒリした時代を感じた。

    話の展開が急だったり飛躍しすぎのように感じるところもあったが、最終話の『鎖と罠』の迫力には引き込まれ釘付けになった。

  • この作者は初読。ミステリというものでもなく、肌触りからハードボイルドとする。女性向けのハードボイルドがあるとするとこういう作品であろう。

    M**湖の底には、無数の死体があり、ほとんど浮かんでこない。そのM**湖で屍蝋が上がったとのニュースにうろたえる男女。その男の家に向かってみると、M**湖へ向かおうとしているところであった。

    その他の作品は、剥製師であったりバレエの教官であったりツアーコンダクターと、それぞれ変わった職業にスポットを当てているのは泡坂妻夫を彷彿とさせるのだが、この作者の場合は、その裏にある過去をベースの話をする。

    その過去が必要かというと、正直それが生きているのは5~6作のうち1~2作というところ。その説明が今ひとつはっきりせずキレも悪いので、ストーリーに突然入り込んできた邪魔な存在のように感じてしまう。

    そういう独りよがりの設定が全体に多く、一般小説に慣れ親しんだ身としては、ちょっと理解する前に終わってしまうような作風が目につく。

    誰にも言えない過去を背負いながら、登場人物のうちの誰かとだけ理解出来るという設定は、悲劇系の少女漫画の原作というところで、そういうのが好きな人には刺さる文章なのだと思う。

  • 『水底の祭り』
    M**湖より屍鑞があがった。
    新宿のバーに勤めるわたしは、ママのミツエと常連客の森戸が奇妙な動揺を示すのを目の当たりにする。
    森戸に好意を寄せる私は、二人の動揺を沈めようと思わぬ行動を取るのだが、二人の間に隠された昏い経験を垣間見ることになる……。

    『牡鹿の首』
    動物の剥製師である麻緒は、時々出会い専門のホテルで男性を買う。
    そのホテルで出会った男娼の少年が訳ありの怪我をしているのをかばい、知り合いのハンターに助けを求める。
    彼女に好意を持つその男は代償行為を要求、彼女は呑まざるを得ない。
    そして少年との刹那的な暮らしが始まる。

    『紅い弔旗』
    六年間、小さなロック・ミュージカルを主催してきた三人、滝田、寒河江、そして奈々。
    滝田の才能と奈々の切り回しによって維持してきた劇団が、寒河江の古びつつある感覚と滝田の静かな造反によって崩壊しつつあった。
    劇団入りした弓雄という少年が更にそこに波紋を投げかける……。

    『鏡の国への招待』
    もうすぐ五十に手が届く私は、助教としてバレー研究所を主催する梓野明子に尽くしてきた。
    その明子は三ヶ月前に世を去り、私は自分の人生を持て余す。
    女としての魅力を失いつつある私は、人生にそして将来に焦りを覚え、もうすぐ取り壊しの決まっている研究所跡を夜中に訪れる。

    『鎖と罠』
    ロンドン。
    地元民が集う歓楽街に姿を見せる日本人女性。
    観光客相手に冴えないガイドを務める男。
    エリート然とした現地駐在の商社マン。
    夫婦、兄弟という見えない鎖で繋がった彼らが、ある晩アパートで見える時、
    それまで維持してきた微妙な関係の内実が赤裸々に明かされる……。

    とあるブログより。

    博子さんの初期短編集とのことだが、その老成ぶりったらない。
    共通するのは、戦争の傷跡と、女性の性欲。
    女性の性については、彼女らのある種の寂しさが性欲を高めている。
    寂しさを醸造する彼女らの境遇、性格、仕事も……。

    テクニック的には、「鎖と罠」が際立つくらいだが、
    それをものともしない、博子さんのもつパッションが溢れ溢れた短編集。

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著者プロフィール

皆川 博子(みながわ・ひろこ):1930年旧朝鮮京城生まれ。72年『海と十字架』でデビュー。73年「アルカディアの夏」で小説現代新人賞受賞。86年『恋紅』で直木賞、90年『薔薇忌』で柴田錬三郎賞、98年『死の泉』で吉川英治文学賞、ほか多数の文学賞を受賞。著書に『聖餐城』『海賊女王』『風配図 WIND ROSE』『天涯図書館』など。

「2024年 『大江戸綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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