- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167440084
作品紹介・あらすじ
インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて…戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が、詩句から触発された全八篇。夢幻へ、狂気へと誘われる戦慄の短篇集。
感想・レビュー・書評
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短編集。人間の「生という凶暴性」が、終戦後の時期に「自由」や「民主主義」を掲げていて、そのことを忌んでいたという風にも読み取れる。しかし実はそれよりも、人間のある部分、狂奔するのとはまた違う、「生きている」ナマの部分を繊細かつ骨太な文章で描き出しているように感じた。やわらかい、あやうい美しさが頭を内から照らし出すようであった。
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詩句から触発された幻夢、全八篇。
どれも素晴らしい味わい。日本人で良かったと心から思う。
悲しくて、恐ろしい美の世界。『空の色さえ』は大好きなモチーフ、隠された人の話し(病気や何らかの欠落で蔵や座敷牢で暮らす人)一編目から幻夢の網の目に絡めとられて恍惚としてしまう。
表題の『蝶』も良かったけれど一番は『龍騎兵は近づけり』二階の彼等、怖い怖い。波の音に微かにバグパイプの音色が聞こえてくるようで…胸が締め付けらる。皆川博子、やっぱり大好き -
日本語が綺麗。
どの短編も喪失感が残る。 -
表題作のほか、7つの作品が収められた短編集です。舞台はいずれも第二次大戦前後の日本。退廃的で、死の匂いのするこのような作品を美しいと思うのは、生きることは罪深く、哀しいことだと、誰もが知っているからかもしれませんネ。詩のように紡がれた言葉が描く、密やかで耽美な幻想世界に、どっぷり浸ることのできる1冊でした。
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戦前〜戦後にかけての個人の喪失感を描いた作品群。ただひたすら文も話も美しいです。割とどの話も後味の悪い終わり方をするのですが、読後感はさらっとしてます。久しぶりに当たりを引いた気分で、他の作品も読んでみようかと思ってます。
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乱歩の「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」がしっくりくる短編集。
作品はすべて戦前から戦後を舞台に、戦前の生活は夜の夢のように追想される。
各作品に引用された詩歌が印象に残って、1編は20分くらいで読めるみじかさでも読んだ後に想像が広がった。
時代背景は共通しているが、連続性はないのでどこからでも読むことができるが、「艀」と「想い出すなよ」や、ラストの「遺し文」の並びも美しいと思う。
特に気に入った「幻燈」は映像作品でも見てみたい。 -
ふとした契機で知った皆川さんの本。
これが最初に読んだものだけれど、やばい。美しい。
舞台は第二次世界大戦前後の日本。
通信、伝達手段が限られている当時の世界は、とても閉鎖的で濃密に思える。 その中での人間との関わりはとても限定的で直接的で、生々しい。
そんな中で彩られる幻。恐ろしくて気持ち悪くて、読んでいて鼓動が速くなった。
…うん、私には皆川さんの感想を述べられるほどの語彙がないです。
でも、とてもとてもおすすめ。 -
戦前戦中戦後の混沌とした空気と、残酷な昏さと静かな狂気に絡めとられる短編集でした。
大好きな空気です。
作中で使用される詩や句も素敵です。
「想ひ出すなよ」の少女たちの残酷さ、「妙に清らの」の凄絶に美しい綾子叔母と叔父のラスト、「龍騎兵は近づけり」の勝男のバグパイプ、「遺し文」もその後が切なくて切なくて…皆川ワールドを堪能しました。
皆川さんは幻想小説も美しくてとても良いです。
もう逃れられません。 -
2015-3-3
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昭和ロマン漂う短編集。独特の世界観。山場はなく単調な短編が多く印象に残る作品はなかったけど、哀愁漂う昭和レトロを味わいたい時に読むとグッとくるかも。
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