蝶 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2008年12月4日発売)
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本 ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784167440084

感想・レビュー・書評

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  • 「うわ…なにこれすっごい…」
    読了後の素直な気持ちがこれ
    「感動した」とか「共感した」とかいうのとはまた違う感情が湧き起こったけど上手く言葉にできない(間違いなく面白かったんだけど)
    小説を読み終わって出てきた感情としては初めてかも

  • ずっと読みたいと思っていた皆川作品をようやく初読みしました。

    自分の読書力と日本語力の未熟さを痛感させられたというのが、最初の、そして正直な感想です。

    いやぁ〜まいった。

    深い、実に深い。

    皆川文学を読むにあたって、手始めにと手にした理由は本書が短編集である事。

    さらっと読み進められると思っていた自分が情けないやら、恥ずかしいやら(苦笑)

    それぞれの物語に密接にかかわり、深みを増すのが添えられた俳句や詩。

    叙事詩的な文体であるが、これぞ日本の純文学なのであろう。

    現段階では最後に記された「遺し文」のみが、少し理解出来た気もするが、本作を読み取れる読書力を身につけ、再読した時にはきっと違った景色を想い描き、空気を感じ、涙することが出来るのだろう。

    その日を楽しみにこれからも読書を続けていきたい。

    説明
    内容紹介
    インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて……戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が、詩句から触発された全八篇。夢幻へ、狂気へと誘われる戦慄の短篇集。
    目次
    空の色さえ/蝶/艀(はしけ)/想ひ出すなよ/妙に清らの/龍騎兵(ドラゴネール)は近づけり/幻燈/遺し文/解説・齋藤愼爾
    『蝶』は、現代文学の砂漠の沖に光輝まれなる孤帆として、美の水脈を一筋曳いてきた皆川博子文学の一頂点といえる短篇集である。──解説より
    内容(「BOOK」データベースより)
    インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。ある日、そこに映画のロケ隊がやってきて…戦後の長い虚無を生きる男を描く表題作ほか、現代最高の幻視者が、詩句から触発された全八篇。夢幻へ、狂気へと誘われる戦慄の短篇集。

  • 短編集。人間の「生という凶暴性」が、終戦後の時期に「自由」や「民主主義」を掲げていて、そのことを忌んでいたという風にも読み取れる。しかし実はそれよりも、人間のある部分、狂奔するのとはまた違う、「生きている」ナマの部分を繊細かつ骨太な文章で描き出しているように感じた。やわらかい、あやうい美しさが頭を内から照らし出すようであった。

  • 日本語が綺麗。
    どの短編も喪失感が残る。

  • 8篇から成る短篇集。それぞれに俳句、詩の引用が載せられている。
    皆川博子さん初読。大満足。まず「空の色さえ」から、灰まみれになった他人の想い出でも覗いているかのような感覚を覚え、物語に引き込まれた。片目のない叔父、小間使いと戯れる奥様……。「妙に清らの」と「幻燈」には特に惹かれた。幻想的な世界に夢中になって読んだが、自分に詩句の知識がないことが悔やまれる。どういう意図があってこの詩や俳句が引用されているのか、というのを知りたい。
    皆川さんのほかの作品も読みたいと思った。

    空の色さえ/蝶/艀/想ひ出すなよ/妙に清らの/龍騎兵は近づけり/幻燈/遺し文

  • 遠い水平線の彼方の幻想の世界に誘い込まれるような【皆川博子】による八編の短編小説集。表題作『蝶』に登場するインパ-ル作戦から帰還した敗残兵は、戦後日本で魂の抜け殻が彷徨うように虚無に生きる男を追った、いたたまれなく切ない作品である。

  • 戦前戦中戦後の混沌とした空気と、残酷な昏さと静かな狂気に絡めとられる短編集でした。
    大好きな空気です。
    作中で使用される詩や句も素敵です。
    「想ひ出すなよ」の少女たちの残酷さ、「妙に清らの」の凄絶に美しい綾子叔母と叔父のラスト、「龍騎兵は近づけり」の勝男のバグパイプ、「遺し文」もその後が切なくて切なくて…皆川ワールドを堪能しました。
    皆川さんは幻想小説も美しくてとても良いです。
    もう逃れられません。

  • 詩句から触発された幻夢、全八篇。
    どれも素晴らしい味わい。日本人で良かったと心から思う。
    悲しくて、恐ろしい美の世界。『空の色さえ』は大好きなモチーフ、隠された人の話し(病気や何らかの欠落で蔵や座敷牢で暮らす人)一編目から幻夢の網の目に絡めとられて恍惚としてしまう。
    表題の『蝶』も良かったけれど一番は『龍騎兵は近づけり』二階の彼等、怖い怖い。波の音に微かにバグパイプの音色が聞こえてくるようで…胸が締め付けらる。皆川博子、やっぱり大好き

  • 表題作のほか、7つの作品が収められた短編集です。舞台はいずれも第二次大戦前後の日本。退廃的で、死の匂いのするこのような作品を美しいと思うのは、生きることは罪深く、哀しいことだと、誰もが知っているからかもしれませんネ。詩のように紡がれた言葉が描く、密やかで耽美な幻想世界に、どっぷり浸ることのできる1冊でした。

  • 戦前〜戦後にかけての個人の喪失感を描いた作品群。ただひたすら文も話も美しいです。割とどの話も後味の悪い終わり方をするのですが、読後感はさらっとしてます。久しぶりに当たりを引いた気分で、他の作品も読んでみようかと思ってます。

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著者プロフィール

皆川 博子(みながわ・ひろこ):1930年旧朝鮮京城生まれ。72年『海と十字架』でデビュー。73年「アルカディアの夏」で小説現代新人賞受賞。86年『恋紅』で直木賞、90年『薔薇忌』で柴田錬三郎賞、98年『死の泉』で吉川英治文学賞、ほか多数の文学賞を受賞。著書に『聖餐城』『海賊女王』『風配図 WIND ROSE』『天涯図書館』など。

「2024年 『大江戸綺譚 時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

皆川博子の作品

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